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ベン・スティラー、ハリウッドが愛してやまなかったその魅力の全てについて。

コメディアンに魅力的な方が多いのは必然で、言葉や行動選びにしても、相手の反応にしても、相手への想像力に長けていること、頭が良い方が多い証左だと思います。今日は私の愛してやまないコメディ俳優の一人である「ベン・スティラー」について。最近では、知らない人ももしや多いのではないだろうか…と危機意識(!?)も手伝って、彼の魅力についてガンガン書きますのでよろしくお願いします。

①代表作『ナイト・ミュージアム』シリーズ

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本人の思惑がどうなのかは知りませんが、ベンの代表作といえば、間違いなくこのシリーズ。博物館の剥製や展示物たちが夜になると動き出す!??奇想天外かつキャッチある設定で、2000年代~2010年代にかけて3作品が製作され、大ヒットした作品です。「夜警」として、簡単な仕事だから…とどこか含みを持たされつつ実際に夜の博物館(舞台となるのはニューヨークの名所である自然史博物館)での勤務を始めると、ノンストップでこれでもかのハラハラドキドキ。ベンの持ち味である「冷静と情熱のあいだ」とでも言いましょうか、自らをネタ化するメタ的な笑いと、それが冷笑的にならないアツいキャラ(役柄)が魅力なんですね。親友&盟友であるオーウェン・ウィルソンももちろん(意外な姿で?)登場し、劇場でも家でも、ポプコーン片手に何も考えずただただ笑いに身を委ねられる至福の時間。民放でも放映数が多くばっちりファミリー向けながら、ベンを中心にして生み出される、メタ要素やクスリとくる「毒」がたまらないです。こんなにヒットしてるのに、だからこそか彼を「ナイト・ミュージアムの人だ!!」という感じで“ベン・スティラー"という名前がそれほど認知されないのが昔から歯がゆいのです。

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もうひとつ「ナイト・ミュージアム」シリーズが特別な所は、セオドア・ルーズベルト大統領役として最高のキャラと演技でベンを助ける今は亡きロビン・ウィリアムズの存在です。コメディ俳優の第一人者として一時代を築いた彼と、ベンという新たな才能との出会いは、3作全てで息の合った共演を見せてくれるほど、ロビンの側にとっても特別な経験と喜びであったと想像しています。

②青春スターとしての顔?『リアリティ・バイツ』

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ウィノナ・ライダー、イーサン・ホークという、当時まさに「青春スター」として一世を風靡していた二人と共にベンがスクリーンに登場した、「リアリティ・バイツ」。イーサンと同じ大学出身で親しかったという、ミュージシャンのリサ・ローブによる主題歌「ステイ」のヒットがまだ記憶に残る方も多いのでは。”現実は厳しい"といった意味のタイトルで、青春の、あの時の、ある一時期にしか感じない感傷や可笑しさを描いた、不朽の作品のひとつです。ポスタービジュアルを見てもわかるように、作品のテーマ以上に時代の空気を捉えたお洒落さが重視されてもいる作品ですが、そこに全く違和感なくハマる、ほんとイケメンなんですよベンって。知的で面白くフェミニストなので、当時ハリウッドでもモテモテだったらしいです。現在は離婚されていますが、糟糠の妻であったクリスティン・テイラーとは共演作も多く、おしどりカップルとして有名で当時浮いた噂は全くなかったそう。やっぱりどこか芯の通ったストイックさが、そんな所からも感じられるんですね。

③怪優達との奇々怪々の渡り合い『ミート・ザ・ペアレンツ』シリーズ

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こちらも王道(ベンとしては?)コメディとして、3作目まで製作された人気シリーズです。大好きな彼女に意を決してプロポーズ。二人の気持ちに偽りはないけれど、元軍人&超・厳格な彼女の父に、結婚の申し込みをしにいく…ナイトミュージアムと同じく「設定勝ち」の感のあるコメディですが、そこはベン。まったく斜め上からの笑いと、「そうそう!そうこなくては!」の王道も交えて、どこにもハズレのないクオリティの高さです。

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1作目から連続出演するロバート・デ・ニーロ、2作目からベン側の父として出演するダスティン・ホフマン。こんな二人が、こんな(失礼)作品に、ここまで貢献したのもやはりベンの才能と人柄のなせる技!としか思えません。デ・ニーロがコメディタッチの作品に出ることは最近では珍しくないですが、「ミート・ザ・ペアレンツ」1作目当時はまさに事件でした。『元軍人』で淡々と真顔で娘への愛情について「嘘発見器」を使用しようとするぶっ飛びパパ役が本当にハマっていました。テーマゆえにちょっとファミリー向けとはいえない部分もありますが、「お約束」の安心感と、温かなハッピーエンド・大団円の清々しさを感じたいときに、ぜひ家族や親しい人とみて頂きたい作品です。

③ベン自身の監督作という思い入れ/奇跡の、そして禁断の?『ズーラーンダー』

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華やかなファッション業界を舞台に、ベンがトップモデルを務めている設定ではじまるストーリー。ここであまりにも「え?」と戸惑ってしまう人は、その先を観ることを絶対におすすめ出来ない作品です。私自身はこのノリがあまりに好きすぎて、何度観たかわかりません…しかし好きな作品の割に、人に勧めることには常に躊躇してきた作品です。人によっては嫌なタイプの下ネタもバンバンなのもあるんですが、なんというか…「本気でバカやろうぜ!!」っていうのを本気で貫徹すると、本当にバカみたいな作品ができるんだなっ!!という、ある意味希望を与えてくれる作品ではないでしょうか。ウブで純なモデル仲間たちと未来を夢見て共同生活しており、車のガス入れのときに「ははっ、弾けちゃおうぜ!」みたいな青春ノリで(米のスタンドはセルフがデフォルトなので)ホースでガソリンを互いにかけあい、「ふー、つかれたっ!」」と一人がタバコに火をつけて…。等という悪ノリはほんの冒頭でしかなく、ロシアンルーレットのようにどこへ被弾するかわからない笑いと毒の波に翻弄されます。

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カメオ出演のキャストがまたすごく、D・ボウイ、トム・フォード、V・ベッカム、レニー・クラヴィッツ、パリスヒルトンにヴェルサーチ、ラガーフェルド…(当時のD・トランプまで出ています)オーウェン・ウィルソンやミラ・ジョヴォヴィッチという、当時上がり調子のセンスある配役はもとより、これらのキャスティングも、やっぱり皆がベンに惚れ込んでいるからなんですね。色々が凄すぎて、逆に話題がそこまで追いつかないというか、「ベンが何か面白いことやりたいって?じゃ、やらなきゃ」って周囲を動かすパワーが、力みすぎることなく、彼には備わっているんだと感じます。

『ズーランダー』を見終わる頃には、上に書かせていただいた感傷に共感していただいていたとしても、「馬鹿いってんじゃねぇ!」みたいな裏切られ感とともに、それでも主演のベンのキャラクターに対する、ある種の尊敬が皆様の心に生まれれば…と、妄想しております。

ここ数年、出演作や話題に上ることが少なく、映画界からはなにがしかの事情で距離を置いているのかな?と思われるベンですが、その空白の寂しさを補ってあまりある魅力が、これまでの全ての出演作に刻まれているはず。

出自を紐解くと、両親ともにコメディ俳優、姉も同業界という生い立ち、コメディアンとして頭角を現し始めてからはMTVで単独ショーも持っていたというベン。「メリーに首ったけ」「ミート・ザ・ペアレンツ」のヒットで日本に紹介されたのが遅すぎるくらい、ハリウッドではその魅力と実力がしっかりと認知され、愛されていたベンということなのでしょう。

年末年始、ふと何を観ようか迷ったら、ぜひ!ファミリー向け「ナイト・ミュージアム」でもよし、自分の壁を越えるための(苦笑)「ズーランダー」でもよし、ひとつでもベンの知られざる魅力に触れていただけたらとても嬉しいです!

(了)



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