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妊娠中の簡易電動車椅子申請、助成金は支給されるの?

 手動車椅子をお使いの車椅子ママたちの中にも、妊娠中どうしても手動車いすを使うことが難しいケースもあるようです。医師から安静や車椅子を漕ぐことを控えるように言われ、赤ちゃんのために安静にしたいけれど、車椅子を漕がないと生活ができない。そんな時に簡易電動車椅子が使えたら!!そんな体験をお寄せいただきました。


簡易電動車椅子の助成金が通らなかったケース:くるまいすおかんさん


 私は下の子を妊娠中、切迫早産と切迫子宮破裂の診断があり、
車椅子を漕ぐことでの腹圧も、可能性としてないとは言いきれないと医師から言われ簡易電動車椅子を申請できないかと役所に問い合わせましたが、
相談の段階で無理だと言われ申請もできず、自費で簡易電動車椅子を購入することにしました。

 元々切迫早産体質で、今回は切迫子宮破裂との診断もあったので、出来る限りの安静生活をし、1日でも長くお腹の中で育てて出産することを目標に、できることは全部やりましょうという感じでした。

 切迫子宮破裂になったのは妊娠24週に入った頃でした。上の子の時に帝王切開で切った部分が筋肉が戻っておらず、子宮がとても薄くて、そこが破裂しそうだとの事でした。本当に、無事に産まれてきたのは奇跡だと言われました。

 そのような状況で赤ちゃんの命を守るために必要だから、電動車椅子の申請ができないかと相談しているのに役所の方の態度は冷たく、悲しくなりました。役所からは前例がないと言われ、申請すらさせてはもらえませんでした。本当に困ってしまい途方に暮れ、決して安いものではありませんが自費で購入することを決めました。

 私は二分脊椎症(脊髄髄膜瘤)という先天性の病気により、下肢麻痺、膀胱直腸障害、体幹機能障害があります。おへその少し下から感覚がありません。立位や歩行不可です。上肢に麻痺はないので、普段は手動の車椅子を使用して生活しています。

 20歳の時に母を病気で亡くし、それから一人暮らしを始めました。

 始めは"車椅子ではできない"と思っていたことも、今では"どうやったらできるか"を自然と考え、日々生きています。
 8年前に長女を出産し、去年の9月末に次女を出産しました。いきむことができず、局所麻酔も障害の影響で使えず、全身麻酔で帝王切開での出産でした。

 1人目の時から切迫早産だったのですが主人と2人の生活で、主人は仕事が忙しく毎日日付が変わるまで家にいません。ほぼ1人の生活だったので安静生活を送れていましたし、出産後もしばらくは自宅から出ることがほとんどなかったので、簡易電動車椅子を使うという発想はありませんでした。

 しかし、今回は長女の時よりも早い段階から切迫早産になり、お医者さんから可能な限り車椅子を漕がないように言われました。上の子がいるので寝たきりになるわけにはいかず、安静生活もままなりません。手動の車椅子での生活へ限界を感じました。

 そして、出産後の事を考えると産後間もない体で長女の習い事の送迎や、買い物、公園への付き添い等をこなすには、簡易電動車椅子があれば便利だろうと感じたので、購入することにしました。

 助成金申請が降りるかわからず、直接話をしに障害福祉課に相談に行きました。しかし上肢に障害がないから該当しないと言われ、体幹機能障害がある事を伝えると、前例がないからと突っぱねられ、

「妊娠中の期間限定でしょ。それは出せませんね。」
と窓口の方から言われました。

 ですが妊娠継続しながら育児をするには本当に必要だったため、その後も何度か相談に行き、電話でも再度問い合わせましたが、申請すらさせてもらえませんでした。産婦人科の担当医に相談したところ診断書が必要であれば書きますよと言ってもらったのですが、

役所の窓口では
「診断書があったとしても申請できない。」
と言われたので結局、書いてもらうことはありませんでした。

 補助金を出すという性質上、審査が厳しいことはわかりますが、赤ちゃんの命が懸かっていて困っているときに、突き放されたような気がしてとても悲しい思いをしました。

 結局、私の場合は自費で簡易電動車椅子を購入しました。電動車椅子にした事で、私の体感ではお腹が張ることは明らかに減りました。

 電動車椅子のメリットは片手があくので、抱っこ紐なしで片手で赤ちゃんを抱っこしていても動くことが出来るし、抱っこ紐を使っていれば赤ちゃんと荷物を持つことができるようになりました。

 デメリットは、車椅子が重く、自分で車に積むのが大変な点です。

 手動車椅子はコンパクトなので車に乗せる時に楽だし、車の中でも省スペースで済みますが、赤ちゃんを抱っこして車椅子を漕ぐとなるとやはり両手がふさがることや、赤ちゃんと荷物を持つのがとても大変なので、1人で赤ちゃんを連れてお出掛けすることのハードルがとても高いです。

簡易電動車椅子の助成金が通ったケース:ラモドラさん



 私は二分脊椎症で車椅子生活をしています。夫と娘と家族3人で暮らしています。頼れる親族は近くにいないため、ヘルパーさんに時々入っていただいています。

 私の場合は簡易電動車椅子の申請が認められました。結婚して引っ越す事が決まっており、新生活を始めるにあたり坂の多い地域だったこともあり簡易型電動車椅子の必要性を感じ、役所で相談しましたが「いずれ必要になるからあらかじめ…という理由では補助の申請からして出来ない」と言われて、その時は諦めました。

 引越しをし、結婚して間も無く妊娠が発覚。
 簡易型電動車椅子が必要になるけれど、ダメと言われたのだから補助を出してもらうのは難しいかもねと話しながら、手動車椅子で妊婦健診や外出をする日々でした。
 妊娠6ヶ月になる頃に簡易型電動車椅子を作る為に、引っ越し先で新たに車椅子業者さんを見つけ、簡易電動車椅子のことをその車椅子業者さんに相談することにしてみました。メーカーも業者さんも私の身体的状況を見て「補助を出してもらうのは難しいだろうね」と意見は一致し、それでも万が一があるから一応申請してみるかと申請に踏み切りました。

 意見書をもらう為に、自治体指定の身障者リハビリテーションセンターへ判定を受けに行きました。初めて会う医師による聞き取りの時に、特に触診や既往歴の細かいチェックはなかったです。

 「現在妊娠中であと半年で出産予定。夫は普段ほとんど家におらず、頼れる家族も近隣におらず、生まれたら私がメインで育児をする。手動車椅子では抱っこも難しいので、簡易型電動車椅子を希望している」というような話をし、医師から意見書を書いてもらうことができました。散々無理だろうと言われていたため驚きましたが、とても助かりました。

 実際、私の場合は簡易型電動車椅子が育児に大活躍です。どうしても困っていて必要な方にはしっかりと補助が下りるように、判断基準に妊娠等についても明確に基準を決めて欲しいと思います。

 そして自分で直接役所窓口に相談に行かなくても利用したい制度に詳しい人(相談員さんや車椅子業者さん)に依頼すればお任せして制度の申請がスムーズに通るよという話は、もっと当事者の中で広がって欲しいと思いますし、制度を利用したい人と制度に詳しい人と簡単に繋がれる仕組みがあるといいなと願って已みません。

妊娠中に簡易電動車椅子が必要となった場合の支給申請について


どんな制度で申請するの?

 2人とも二分脊椎症という先天性の障害による下肢障害であることから、障害者総合支援法上の補装具費支給制度という制度が車椅子を含めた装具の支給に関わる制度考えていいでしょう。
補装具費支給制度とは、補装具を必要とする障害児者等の自立した日常生活や社会生活を行うために補装具購入資金の支援をするもので、各市町村が実施しています。

利用するには?

 市町村窓口に補装具費支給申請書補装具制作業者の発行した見積書と専門の判定医による補装具費支給制度意見書を提出し申請し、身体障害者更生相談所等の判定を受けて市区町村長が支給の可否を決定します。

電動車椅子の申請は?

 簡易電動車椅子を含む電動車椅子の申請が通るためには、電動車椅子が本当に必要かどうかということや、電動車椅子を安全に運転できる適性があるかということを指定の判定医の判断の元、意見書を作成してもらう必要があります。ですから、例えば便利だからという理由で申請しても、判定医や身体障害者更生相談所が電動車椅子は必要ないと判断すれば電動車椅子に対する補助は下りないこととなります。

普段手動車椅子を使っている人は電動車車椅子を申請できる?

 手動車椅子を使っていた人が、生活環境の変化により自走が困難になることがあります。例えば引っ越した先の住宅周辺に坂や悪路が多く、自走することが非常に困難であるという場合などです。そうした場合、状況に応じて認められる場合は補助対象になることがあります。そうした個々による事情を指定の医師が判断し、必要と認められれば補装具費支給制度意見書を作成することになります。ラモドラさんのケースでは、この指定の医師の判断により支給が認められました。

判定医による意見書はどこで書いてもらえるの?

 補装具費支給意見書を作成できる医師は身障法第15 条指定医や指定を受けた医師や学会で認定されている医師でなければ書くことができません。(身体障害児の場合は意見書を作成できる場所が異なる場合があります。)
 全国の身体障害者更生相談所で相談することができるほか、日ごろ車椅子を購入している業者に相談すればラモドラさんのように判定医と繋げてもらえるかもしれません。

下記より全国の身体障害者更生相談所一覧が見れます↓


https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shinsho/shinshou_techou/shiteiikoushuukai.files/sitai8.pdf


まとめ

 くるまいすおかんさんのケースでは残念ながら役所の窓口から申請に繋がることができず、すぐに必要であまり時間をかけられなかったということもあり自費での購入となりましたが、役所の窓口で切り捨てるのではなく「どういう手順を踏めば申請できる可能性があるか」に繋げていただければ、申請できた可能性があったのかもしれません。
 くるまいすおかんさんはご自身が簡易電動車椅子の助成に該当するかわからないため直接、申請窓口である役所に出向き申請について何度も相談に行かれています。くるまいすおかんさんの行動は一般的な手順で間違いないでしょう。
 車椅子を含む補装具の支給の可否は、身体障害者更生相談所の判定により市区町村長の決定がなされた場合になります。役所の窓口では支給の可否を決める決定権はありませんので、判定にかけてみなければどうなるかはわかりません。

 もちろんすべての車椅子ユーザーの妊娠出産育児のケースで、簡易電動車椅子が必要であるかと言えばそうではありませんし、運動量が減ることにより別のトラブルが引きおこる可能性ももちろんあります。
 障害を持ちながらの妊娠は身体的な変化も大きいため、人によってはADLや身体状況に大きな変化をきたし日常生活が困難になるケースもありますし、どんな妊婦さんでも妊娠合併症や異変などにより、母子の命に関わったり安静が必要になるケースもあります。
 今回のくるまいすおかんさんのケースのように、簡易電動車椅子が必要な状態だと産婦人科の医師が認めているような場合は、その状況を鑑みて判定医の先生には支給の判断していただきたいですし、是非ともまずその判断の場に繋がれる仕組みで在ってほしいものです。

 補装具費支給制度は障害者の自立支援を目指すものであり、地域や自治体規模により支給に差があることが指摘されていますが、差がある場合はその要因を調査して均質な補装具の支給に向けた取り組みがなされるよう求められています。

 妊娠中に簡易電動車椅子の申請が必要になった方は、ぜひ参考にしてみてください。


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この記事を書いた人:

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