アメリカ留学するときに知らないと恥ずかしい!ジェンダー・プロナウンって何?
こんにちは!外国語学部4年次のYuiです。
3年次秋学期にアメリカの北アリゾナ大学に交換留学をしました。
留学先では女性学・ジェンダー学部に所属し、性差別や同性愛者差別といった社会問題を分析するための理論を学びました。
ジェンダー平等やLGBTQ+の権利について取り組む私がアメリカ留学中に感動をしたのは、周囲の人たちの間で日常的に行われる「多様な性のアイデンティティに対する尊重」です。そこで、この記事では一つの例として「ジェンダー・プロナウン」を紹介します。
ジェンダー・プロナウンって何?
みなさんはジェンダー・プロナウン(gender pronouns)という言葉を聞いたことはありますか?
身近な例として、数年前にインスタグラムのプロフィール欄に追加された機能があります。ユーザー名の後に「she/her」「they/them」「he/him」が薄い字で表示されているのを目にしたことはないでしょうか?
この機能は、あなたが呼ばれたい代名詞つまりジェンダー・プロナウンを表明できるものです。
そもそも日本語でジェンダーは「性別」、プロナウンは「代名詞」を意味します。
この性別に関する代名詞は、「あなたが思う自分の性別」である「性自認」に関係があります。
性自認とは、産まれたときに医者に病院で割り当てられた性別とは異なります。あなたが自分の身体や心、見た目について、どんな性別であるか決定する/どの性別であると決めたくないと決定できるものが性自認です。
そのため、ジェンダー・プロナウンはsheやheといったような、性自認が女性や男性の人が使えるものだけはありません。theyやzeなど、男女のどちらかに性別があてはまらない・決めたくないといったような、性別二元制※1に拠らない人が使えるジェンダー・プロナウンもあります。
筆者はshe/theyのように、併記する形を用いています。女性的な性質を持っているけど、男女という二つしかないカテゴリーに区分をされるのは不快で、あくまでもジェンダーは流動的なものであるという考えを持っているためです。
※1性別は男か女の二種類だけであるべきであるという考えのこと。
なぜジェンダー・プロナウンは知っておかなければならないの?
日本では誰かについて言及するとき、「〇〇さん」や「あの人」といった性別に関わらず使える表現があります。しかし、英語では繰り返しを避けるために代名詞を使ったり、物事の前に所有格を用いたりすることが多いです。日本の英語教育では、これらの三人称単数名詞を学ぶとき、「女性にはshe/her/hersを、男性にはhe/his/himを使いなさい」と指導を受けた方が多いのではないでしょうか。
しかし、欧米の英語圏では、古くから他者が相手の性自認を見た目で決めてしまうことは問題であるとして代名詞の使用方法が議論されてきました。
本人が自認する性別とは異なる代名詞で呼ばれ続けることは、とてつもない心理的ダメージの元となります。(間違った性別をラベリングすることを、ミスジェンダリングといいます。)
近年の日本では職場における通称名の使用の普及などが進んできていますが、ジェンダー・プロナウンもそのような大切なアイデンティティの一つであると言えます。
北アリゾナ大学ではいつでも、どこでも、だれでも使うもの。
このような相手を尊重するために大切なマナーの一つであるジェンダー・プロナウンは、性的マイノリティだけが使うものと思われるかもしれません。しかし、私が留学をした北アリゾナ大学ではすべての人が自分のジェンダー・プロナウンを周囲の人に共有し、皆がそれを念頭に置いたうえでコミュニケーションが進められていました。
例えば、以下の様なシチュエーションでジェンダー・プロナウンがいかに大切にされているかを痛感しました。
・入学手続きの個人情報入力時に・・・
留学開始前に個人情報を入力するためのポータルサイトにて、名前や住所に加えて私の性自認やジェンダー・プロナウンについて北アリゾナ大学から聞かれました。
関西大学では入学時に一切聞かれなかった内容だったので、渡航前からびっくりすると同時に嬉しく思いました!
・第一回目の授業にて・・・
担当教授からカラフルな用紙が配られました。
何に使うのかわからず戸惑っていると、教授から「あなたが呼ばれたい名前とジェンダー・プロナウンを紙に書いて、授業中は机の上に置くこと。同時に、相手のアイデンティティも尊重して授業に望んでほしい。」という説明がありました。
クラスメイトのジェンダー・プロナウンは実に多様でした。
現在、私のジェンダー・プロナウンはshe/theyですが、留学開始当初の一年前はshe/herでした。後述のように、性自認は変わるものであるということを証明するものとして自宅に保管しています。
・学生サークルの集まりにて・・・
自己紹介の際、リーダーの学生から自分の「名前、専攻、ジェンダー・プロナウン」をメンバーに共有するように言われました。
授業内で先生に指示されたときに終結せず、ジェンダー・プロナウンがこんなにも日常に浸透している!と感動しました。
・相手の性別を特定しない「ジェンダーニュートラル」な言葉たちも・・・
友人との会話では、ジェンダー・プロナウンだけでなく、どんな性自認の人にも使える単語が頻繁に使われていました。以下はその一例です。
Boyfriend/girlfriend(彼氏/彼女)→Partner(パートナー)
Freshman(大学1年生)→first-year student
これらは中高大の英語の授業中には習うことができない比較的新しい表現かもしれませんが、特にアメリカの若い大学生の間で浸透している印象を受けました。
日本人留学生も知っておかなければならないマナーであるといえるでしょう。
自分の性別は人生で変わってもいいもの
最後に、ジェンダー・プロナウンは性的マイノリティだけのものではありません。なぜなら、これなしで英語のコミュニケーションをとることができる人はいないからです。
筆者は生まれてからずっとシスジェンダー※2だと思っていましたが、英語を話すようになるにつれて、見た目で性自認を決めつけられてsheと呼ばれることに不快感を抱くようになりました。
現代社会には、アイデンティティは揺れ動かないもの/揺れ動いてはいけないものであるという考えが染みついているかもしれません。しかし、筆者は趣味や将来の夢が刻々と変化するように、自分の性自認も流動的であると思います。
この記事を読んでくださったあなたも、周囲の人のジェンダー・プロナウンを尊重することに加えて、自分のジェンダー・プロナウンについても考えることからはじめてみませんか?
※2 出生時に割り当てられた性別と、自分が自認する性別(性自認)に差異がない人のこと
Yui