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気根を垂らした木はガジュマル? アコウ?

 沖縄の新聞「琉球新報」に毎週木曜日に折り込まれる副読紙「週刊レキオ」にて、3ヶ月に1回の連載を書くことになりました。「葉っぱで分かる木々明解」というタイトルで、沖縄で見られる代表的な樹木の見分け方を紹介しています。今回は、2020年4月30日号に掲載された初回の記事「気根を垂らした木はガジュマル? アコウ?」をアップします。

ガジュマルとアコウweb

気根を垂らした木はガジュマル? アコウ?

 沖縄の風景を象徴する木といえば、のれんのように気根を垂らしたガジュマルだ。名護のひんぷんガジュマルを筆頭に、街中や公園でもよく目立つし、識名園や大石林山など石灰岩地の森にも大木がよく見られる。個人的には県木にしてほしいぐらいだ(実際はリュウキュウマツ)。

 でも、気根を垂らした木は全部ガジュマルと思ったら大間違い。よく似たアコウという木もよく気根を出し、石垣や崖にへばりつくことが多いので「ウスクガジュマル」(石垣に生えるガジュマル)とも呼ばれる。コンクリートのすき間に生えてくることもよくある。

 では、どうやって両者を見分ければいいのだろう? 確実な方法は葉を見ることだ。ガジュマルの葉は長さ約10㎝以下で、レモンのような形。アコウの葉は長さ15㎝前後とガジュマルの2倍程度の大きく、小判のような形だ。

 また、ガジュマルはひものような細い気根を高い場所から垂らすことが多いのに対し、アコウは低い場所からタコ足のような根を長く伸ばし、岩の上をはわすことが多い。アコウは俗に「絞め殺しの木」とも呼ばれ、別の木の上に生えてその木を枯らしてしまうこともあるが、通常は岩の上に生えるので弁解しておきたい。

 ちなみに、気根を垂らす木はもう1種類ある。ハマイヌビワだ。浜辺の岩場に多いので「浜」とつくが、岩があれば川沿いや山地にも生える。ハマイヌビワの葉は、ゆがんだ独特の形なので覚えておこう。

 この3種を知っていれば、沖縄に生える「気根を垂らす木」は見分けられるはずだ。あなたの近所の木はどれかな?

<写真キャプション>
●具志頭遊歩道のアコウ。崖の上から根を伸ばしたアコウらしい樹形。
●ガジュマルの葉。つけ根で3本に分かれるすじ(葉脈)が見える。園芸品種に、葉が丸く小さなマルバガジュマルなどもある。
●アコウの葉。全体の葉脈がガジュマルより目立つ。年に何度か葉を一斉に落とし、一斉に若葉を出すのもアコウだけの特徴。
●ハマイヌビワの葉。つけ根がやや広い左右非対称の形が多く、柄(葉柄)が短い。大きさはアコウとほぼ同程度だが、日なたでは葉が小さくなる。
●3種ともクワ科イチジク属の常緑樹で、枝葉を折ると白い乳液が出て、イチジクの実を小さくしたような1㎝余りの赤い果実をつけることが共通の特徴。

<プロフィール>
林 将之(はやし まさゆき)
樹木図鑑作家。1976年山口県生まれ。2012年に読谷村に移住し、沖縄の樹木全種を紹介した『琉球の樹木』(文一総合出版)を出版。現在は恩納村在住。葉を集めてスキャンしながら各地の森を巡る。

※沖縄の木ついてより詳しく知りたい方は、拙著『琉球の樹木』(文一総合出版、共著)をご覧ください。


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