見出し画像

救急車を呼んで一人で入院する時にしたこと

 あまりにもお腹が痛くて歩けそうになかったので、自分で救急車を呼んで病院に運ばれて、検査をして結局そのまま入院になった。洗顔セットや一晩分の着替えは持っていたものの一晩分だけだった。夜中も明け方も看護師さんが点滴を交換しにきてくれたのはわかっていたけれど、朝になって看護師さんに起こされて目が覚めた。救急車に乗った時のままの格好で、あまりの痛さに汗だくになっていて体も着ているもの全てが汗の塩でカペカペになっていた。

 看護師さんに濡れタオルを一枚もらい看護師さんの洋服を脱いで体を拭いて持ってきたシャツを着た。点滴を一瞬だけでも外してくれたらいいのに、なぜ看護師さんの目の前で裸にならなくてはならないのかよく分からなかった。その後、入院は一週間かそれくらいになることと、当分は絶飲食であること、入院手続きをしなければならないことや、タオルの契約などの話を聞いて、もし家からタオルやパジャマを持ってこないのであれば、後で自分で売店にあるタオルや貸しパジャマの契約をしなければならないこと、入院手続きのためにお金がいることなどを知った。数年前に経験した祖母の入院で洗濯だけでもとても大変な思いをしたので、タオルとパジャマなどの借りられるものは病院から借りる以外の選択肢はなかった。入院手続きでは、その場で10万円を前払いしてくださいと言われたが、病院内でにはATMもなかったので交渉して後にしてもらった。救急車で運ばれて入院してお金を払わないでいく人がいるんだろうなとなんとなく思った。

 誰にも頼むことができない場合はどうするんだろうとぼんやりと考えていた。近所に兄も姉もいるけれど、顔を見るのも嫌だし頼むのも嫌だった。医療従事者がみんなそうなのかどうかは知らないけれど、うちの全ての医療従事者は誰かが入院したり本人が入院したりすると、自分が看護師である歯科医師であるということを病院のドクターや看護師さん達に公言する。これが当たり前なのかは分からないけれど、それゆえに入院先ですら〇〇先生と呼ばれたりする。舐められるからわざとするんだと言っていたが、医療従事者というのは医療を受ける人を下に見るものなのが普通なのかなとなんとなく思っていた。

 これからずっと入院しているためになんとかしていったん家に帰って、必要なものを買うなり持ってくるなりをしなければならないし、シャワーも浴びたいと思いながらラウンジでぼんやり座っていた。そうしたら、丁度一時帰宅した人らしい人が看護師さんと話をしているのを見かけた。
 一度帰宅という手があるらしい。
 その患者さんと看護師さんのやりとりを見て、もしかしたら私もお願いできるかもしれないから一回聞いてみることにした。
「一旦荷物を取りに行きたいんですけど、私も一時帰宅ってできますか?」
 と点滴を交換しにきた看護師さんに聞いてみた。看護師さんは、「先生に聞いてみますね」と言った。
 しばらくして、さっきの点滴をしてくてた看護師さんが戻ってきて「先生に聞いてみたら、一時帰宅オッケーだそうですよ。手続きがあるのでちょっと待っててくださいね。」一時帰宅のための書類の手続きがあるとは思ってもいなかった。3時間以内に帰ってきますという書類にサインをして家に帰ることにした。

 病院はうちから自転車で20分くらいのところで、電車で二駅離れたところにあった。取り敢えず駅まで行く途中の商店街で必要なものを買って一旦家に帰ってシャワーを浴びて荷物を持って戻らなければならない。持ってきた洋服に着替えて病院を出た。
 駅までは大した距離ではないはずだったが、駅まで歩くのが大変で驚いた。昨日の経験をしたことのないような痛みは自分でも驚くほど自分の体力を奪っているみたいだった。ヨレヨレになりながら取り敢えず必要なものだけ買おうと思い、24時間していてもつらくないブラをいくつか買って、それまでに祖母、大叔母、父の入院でどんなものが必要なのかはわかっていたのと、入院中はどんなことが大変で面倒くさかったのかを思い出して、持っていくものを決めた。退院まで何日かかるかわからない入院中に靴下や下着だけ毎日洗って乾かそうと思っていた。

 家に帰ってからは、ジム用のお風呂セットをそのままと、洗濯石鹸、靴下や下着などを干す無印の小さな物干し、タオルと歯磨きセット、洗顔石鹸と小さなコップ、その時に服用していた心療内科で処方された薬と漢方薬と睡眠薬と腰痛の痛み止め、それから歩きやすいスリッパと寒いと困るので羽織るものと、着替え、モバイルバッテリーと充電のためのケーブルとなどのものを小さなスーツケースに放り込んだ。体力がなくてヨレヨレしていたけれどそれでも、次にいつお風呂に入れるかわからなかったのでシャワーを浴びて髪の毛も乾かした。

 家に戻るときに歩いて駅に行くだけでも大変だったので、病院に戻るときは駅のタクシー乗り場でそのまま病院に戻った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?