西陽のベランダに猫1匹

父方の祖母が亡くなった

料理がうまくて自信家で孫思いの人だった
たまたま越谷に遊びに来ていたタイミングで父から電話が入り、新松戸の病院で心肺停止状態にあるからすぐに行ってくれとの連絡だった

最後に会った時、ばあちゃんは入院していて魂が薄くなっているような、しぼみかけた風船のような印象があった
面会時間が終わり帰る時、涙目になりながら手を振ってじゃあねと言ってくれて別れた、あれが最後の会話だった

ちゃんと歳をとって、老いて死ぬのは幸福なことだなと思う
事故に遭うでも事件に巻き込まれるでもなく、病気で長期間苦しむでもなく、すぐに亡くなったらしい


自分でも驚くほど冷静だった
爺ちゃんも、すごく落ち着いているように見えた

人生の大部分を共に暮らしてきた伴侶が亡くなったというのに、じいちゃんは取り乱すでもなくテキパキと葬儀屋や保険に電話をかけて忙しい忙しいと言っていた。かっこいいと思った

本人曰く、急すぎて実感が湧かないとのことだったが、手は震えていた


眠っているような婆ちゃんに線香を備えて別れる時、爺ちゃんが小さい声で「またね」と囁いていたのが衝撃的だった
あんなに優しい声で話すのか


慶(父)はわんわん泣くだろうな…と呟いていた
実際父から電話があった時、声がかなり沈んでいた

動揺して泣く父親の姿を見ることの方が、自分には想像もつかないし耐えられないかもしれない、自信がない



もし、亡くなったのが逆だったらとも考えた
爺ちゃんが先に亡くなっていたら婆ちゃんはきっと取り乱して憔悴して弱ってしまっていただろうな

強い爺ちゃんがしっかりと地に足つけて立っていることを心から頼もしく思う

じいちゃんは夕飯にオムライスが食べたいとしきりに言ってガストに入り、オムライスが無かったのでハンバーグを食べていた
チョイスが小学生すぎる




ばあちゃんは入院中のある時から途端に落ち込んで、病院は嫌だ、帰りたいとすごく落ち込むようになったらしく、爺ちゃんはそれを聞いた日、一睡もできなかったらしい。


なんて深い愛情だろう、夫婦は素晴らしいなとおもったが、
婆ちゃんは過去、入院中に「帰る」と言って点滴を引き抜いて歩いて帰ろうとしたことがあったらしい。白ヒゲがそんなことやってなかったっけ

そんな最強のおばあちゃんなので、何をしでかすかわからなくて怖いから眠れなかったらしい、愛というか憂慮していただけなのかよ


後日葬儀も様々終わり、
49日にお骨を墓地へ渡すため、いよいよ婆ちゃんともお別れだねと言っていた時、どこからともなく見たこともない猫が現れて爺ちゃんの家に居着くようになったらしい

思えば婆ちゃんは小柄でややツリ目で猫っぽい様相があった。爺ちゃんが寂しくないよう、婆ちゃんが猫になって現れてくれたのか!

昔話のようなことがあるものだなぁと嬉しく思っていたが、しばらくして爺ちゃんに猫の様子はどう?と聞くと「あんまり可愛くないから追い払った」と言っていた
絶対そんなことしちゃダメだろ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?