優しいひと

家のトイレ掃除をする度、思い出すひとがいる。

高校生の頃、私は過敏性腸症候群(IBS)を発症し、周りからにおいについてヒソヒソ言われるようになった。
だから私は、学校に行くバスに乗らず別の適当なバスに乗って学校をさぼったり(その時は先生が車で街中を探し回るという大騒ぎになってしまった)、行けたとしても遅れて行って職員室の前に置いてある遅刻・早退カードを書かされたりもした。

授業でもうつむいて、(においませんように)と願っていっぱいいっぱいになりながら先生の話をノートに書いていた。
そんな中、周りのクラスメイトはただヒソヒソ言うだけで、私をいじめる事はなかった。
そのおかげで何とか息切れしながらも学校に行き続け、卒業することができたから、良かったと思う。

そんなクラスメイトの中で、私にちょくちょく話しかけてくれる優しい女の子がいた。
その子は修学旅行で私が新幹線の席を立ち、人のいない場所で立っていたら(人が密集してる場所に居続けることが緊張して苦しかったのだ)、追いかけてきてくれて、なんてことのないように話しかけてくれた。

一緒にいて、心が安らぐひとだった。
もしまた会える機会があるなら、ありがとうと伝えたい。

その子は、学校のトイレ掃除当番のときも、穏やかににこにこしながら便器をガシガシ磨いていた。
皆が嫌がる仕事をこんな風に取り組めるなんてすごい、と思ったものだった。
その時の記憶を今も覚えていて、だから私は今家のトイレ掃除をするとき、彼女のことを思い出してはあんな風になろうと思い、一生懸命ガシガシ磨いている。

#エッセイ

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