ドラゴン復活、緊急の集まり

 「それは本当なのか」
 疑ってるような口振りだが無理もない、だが、アビゲイル・クラインは回復しました、あと少しすれば、この会議に参加するでしょうという部下の言葉に狼人、ウルグナは顔をしかめた。
 信頼している部下の言葉を疑っているわけではない、だが、あの原因不明の宇宙船の事があってから一ヶ月を過ぎようとしている。
 その間、色々なことが起きていた。獅子人が声をかけてきたのだ、あの宇宙船が何か知っているかと、探りを入れているのかと思ってしまった、知っていての問いかけなのかと。
 こちらが知っていないと踏んだのだろう、協力して
、あれが何なのか、確かめないかと言ってきた。
 ところが、妨害が入った、猿人からだ。 
 ドラゴンに関与する事は狼や獅子には関係ない筈だと、もし、何かするなら自分たちが相手になると。
 争い、諍いは極力避ける種族だ、その猿人達が間に入ってきたのだ。
 猿人は知っている、だったらあいつらに直接、聞くまでだと思ったとき、意外なところから待ったがかかった。
 星間議会の貴族からだ、何故と思い、反論した。
 ドラゴンたちは何か企てを、いや、何をしようとしているのか、知る権利があると。
 自分たちの主張は通る筈だと思っていたが、あっさりと棄却されてしまった。
 議会貴族には獣人とはいえ簡単には逆らえない。
 そして一ヶ月。

 「アビゲイルが顔を見せるとは」
 「病気で倒れたというのは嘘か」
 「いや、療養中というのは本当だったらしい、それが」
 「治ったと、そういうのか、信じられん」
 「獅子と狼がね」

 
 会議場の広間はしんとなったのは狼人、ウルグナが室内に入ってきたからだ。
 獣人、亜人達の視線を感じながらウルグナは数人の獣人と話し込んでいる獅子人の姿を見つけた。
 聞きたいことはいくらでもある、しかし、こちらから近寄り話しかける事はしない、多分、いや、あちらも同じだろう。
 ここで自分たちが一緒のところを見れば議会貴族達からの印象は悪くなるのは見えている、下手な行動はできないのだ。
 
 それにしてもウルグナは室内の見回し、何故と疑問を抱いてしまった。
 来ている顔ぶれが納得いかなかいのだ。
 生粋の獣人もいるのだが、亜獣族がいる、それも識別ランクがされていない者もだ。
 何故だ、普段は多種族との交流、集まりなどに殆ど出てくることはないのだ。
 ドラゴン、アビゲイル・クラインのことが関係しているのかと思ってしまう。
 
 「おおっ、来たぞ」
 「おい、あれは」
 「まさか、今日、ここで」

 室内がざわざわと騒がしくなるが、それは長くは続かなかった。
 室内にいた全員の視線が入ってきた者達に注目され、視線を注がれるのは無理もなかった。
 全身が赤い鱗で覆われたドラゴン、アビゲイル・クラインは室内に入ると周りを見回し軽く一礼する。
 だが、注目されているのは、それだけではない、視線を集めているのは隣に立つ白い衣装を着た、見慣れない生き物だ。
 
 なんだ、あれは亜獸ではないのか、毛が、鋭い爪も、牙もないように見える。
 「まさか、人、か」
 誰かがぽつりと呟いた、その呟く気はウルグナの耳に、はっきりと聞こえた。
 人、聞いたことがない、それは種族なのか。

 「おお、アビゲイルッッ」
 議会貴族の中でも最高位の獸人は鷲の鳥人だ。
 「身体は大事ないか、いや、その姿を見れば」
 「はい、ご心配をおかけしました、それも彼女のお陰です」
 「そうだな、遠い道のりを、本当によく来てくれた、感謝する」
 ドラゴンの隣に視線を移した鳥人だが、あっと声を漏らしたのは相手が口を開いたからだ。
 「あなた、カーライル」
 「いや、それは先代だ、私が後を引き継いだ、よければ会ってほしいが」
 突然、白い衣がふわりと揺れた。
 自分に抱きついてきたのだ、鳥人は呆然とした、たが、この瞬間、自分の目が何故、濡れているのがわかった、こんな大勢の獸人たちがいる前でと思った。
 だが、彼は、その雫を止めることができなかった。

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