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貫け、その道を

いやぁ、文字を書こう書こうと思っても書き始めないと筆は走らんね、と毎回書きながら思う次第です。反省。
久々の投稿、ということで開幕から最近の試合までの振り返りをしていきます。

大枠としては、
・そもそもの今季のコンセプトと仕組み
・上手くいったトコロ
・それに対する相手チームの策
みたいな形で追っていきます。

サッカーは文脈として数試合、数か月、数年…と長く追うことで、理解が深まったりしますので、2019年~去年までの総括を添付しておきます。よかったら是非こちらもご覧ください。


コンセプトと仕組み

この3か月ほどでの基本的なスタメンは以下の通り。

トピックとしては、西川幸之介の先発と野嶽惇也のボランチ起用だろう。
西川は正確なキックとどっしりとした安定感が魅力のGK。昨年まで軸だった高木駿に比べてWBへの浮き球よりも中央に低くて速いパスを付ける意識が高い印象。
野嶽は、もともとはサイドのプレイヤーとして鹿児島から獲得したが、ケガなのかはわからないがわりと行方不明であった。昨年の岡山(A)戦でも途中出場からボランチをしており、器用なタイプだったのだろう。彼の良さは1stタッチの上手さ。腰が高く、次のプレーへの予備動作がとても小さい。それでいて気が利く選手。これは序盤戦のいちばんのサプライズだった。

コンセプトはボールを握って押し込む。ポゼッションではありますが、とても攻撃的。上記の3-4-2-1をベースに、この「攻撃的」のルールを整理します。

ルール1 まずはWBが高い位置を取る
ルール2 ボール回しは4枚で
ルール3 余白で「ズレ」を生む

こんな感じです。

ルール1 WBを高く

両サイドの藤本一輝、茂平はまずは高い位置を取ります。
これは相手のSBもしくはWBを押し下げるため。その誘いに相手が乗ってこなければ最終ラインから蹴っ飛ばしてしまえば盤面を一気にひっくり返せます。
片野坂前監督はWBをサイドに張らせてはいましたが、ビルドアップの出口(=ボール回しの受け手)としての役割も大きかったが、下平監督のイメージはサイドアタッカーやウインガーとしてより攻撃的な選手を置いてボールを持ったらまずは仕掛けるのを要求しているように思います。余談ですが、宇津元のコンバートはこういったコンセプトによるもの、と考えると納得できます。

ルール2 ボール回しは4枚で

WBを高くする…と同時に、中盤中央の4人がボックスからダイアモンドのように循環。3バックとダイアモンドの底のカドを務める野嶽の計4人でボールを前進させていきます。もちろんこれは「基本的には」の但し書きがつきます。相手も前進をさせないために策を講じてくるからです。なのでまずはこの4人、次にGKの西川や弓場が関わってボールを前進させます。

ルール3 「余白」でズレを生む

ここまでの2つのルールに沿って立ち位置を可変すると、自陣のサイドにスペースがぽっかりとできてしまいます。

このスペースを「余白」として残し、相手の立ち位置や状況に応じて人が入れ替わり立ち替わり出入りします。
この時の役割と動きとして、ボランチは幅、インテリオールは奥行きを意識して3つのパターンで「余白」を埋めていきます。

 ①3バックの両脇が埋める

ボランチの野嶽が最終ラインと横並びになって弓場が野嶽のポジションを埋める。インテリオールの野村、中川はSBになるデルランとペレイラの「奥行き」としてパスの受け手に回る。

 ②逆偽SBパターン-1

野嶽を中心にぐーるぐる。ダイアモンドの中央の弓場、中川の片方がサイドに流れて3バックが逆方向にスライド。偽SBはSBの選手がボランチと横並びになるが、その逆のことをするイメージ。逆と偽が一緒につくと何がなんやら、ってネーミングですが…

 ③逆偽SBパターン-2

サイドに生えてくるのがインテリオールのパターン。昨年は押し込んでハーフコートで試合をするような場面で見られましたが、あくまでもオプションの域を出ず。この場合はボランチの弓場が奥行きを、インテリオールの野村が幅を取るため、役割が逆転してしまいます。これはシーズンが進んでいくとみられる場面があるでしょうが、今季はまだ見られず。

と、いうことで3つのルールをまとめてみました。

上手くいったトコロ

このルール3の「余白」でズレを生むのが厄介で、相手チームはゾーンで守るかマンツーマンでいくのかの判断が揃わないまま大分が気持ちよくボールを前進させていった、というのが序盤戦の好調の要因でした。
チームのポジション表記は3-4-2-1ですが、ボール回しの根幹となる立ち位置は3-4-3。相手に応じて4-1-2-3を併用して、と。ポジション表記は電話番号。特に中盤の底を任された野嶽の立ち位置が絶妙で、上記のパターンの中間になるようなファジーなところでボールをもらいに行くため、野嶽が動き、ボールが野嶽に渡った時に相手のアクションを見ながら後出しで立ち位置を調整する、という循環ができていました。では野嶽からのパスコースを消すために少し後ろで構えると、それはそれで野嶽がターンして前進をするので中央を割られる。
スムーズにボールの前進ができたことが序盤戦の大きな収穫でした。

大分対策

対戦相手の「大分対策」が固まったな、と感じたのは6節大宮(A)戦(0-3●)でした。
※便宜上、大分のメンバーは今季の出場時間が多い順で並べています。

場面としては
大分が自陣でボール保持をしていると想定

基本的に3-4-3をベースに、4-1-2-3をうまいこと併用する大分。これに対しての大宮のコンパクトさは、幅・奥行きの両方からのアプローチでした。

まずは奥行きを見るために最終ラインから。
大宮の最終ラインはこれまで対戦したほかのチームに比べ、高い位置に設定していました。これは大分のルール1である「WBを高くして相手を押し込む」を逆手に取るため。相手を押し込む、と言っても最終ラインより前でボールを受けてしまうとオフサイドになるため、勇気をもってラインを上げる。すると、大分の藤本-弓場、茂-中川の距離が近くなります。サイドでの1対1を仕掛けたいが、敵も味方も近い。目詰まりのようにWBが囲まれてしまいます。

次に中盤から前線。大宮のボランチ、石川が野嶽をマンマーク。小島は野村-中川の間に立つ。SHは大分の「余白」に先に立つ。2トップは3バックと野嶽の間に立ち、「先に動かない」ことを徹底していた。

2トップと両SHは大分の最終ラインにプレッシャーをかけるタイミングをボールを後ろに戻したときに限定。大分からすると、これまでは勝手に相手が動いて崩れてくれるイメージだったが、それがない。それどころかバックパスで嵌められる悪循環であった。

大分が可変のために先に動くため、大宮からすると待っているところに大分の選手が重なってくる形に。後ろにボールが下がったらゾーンからマンマークへかえて一気に襲い掛かる。大分は苦し紛れにボールを前線に蹴るが、ハイラインのため伊佐が動きながら収めてもオフサイドに引っかかってしまう。

完全にしてやられた大宮戦。最終ラインを高くして「奥行き」を狭め、大分の「余白」の部分にSHが先に立ち「幅」を制限する。このコンパクトさにやられてしまった。
しかし、どのチームも大宮ほどの練度でコンパクトさを保つのは容易でない。廉価版大分対策はチームによってゾーンで守るチームは「先に動かない」こと、プレッシングを志向するチームは「先に余白を潰す」ことで大分の前進を阻むようになった。

両者の共通点はSHだ。ここのポジションの選手は、大分のボール回しの際はまずは余白に立つ。ここの選手が焦れてボールホルダーに寄せると、芋づる式に剝がされて、大分が前進できてしまう。
逆にここでしっかりと我慢をしてSBと連携することで大分のウリであるWBを前後から挟んでの守備ができる。ここ数試合で藤本のボールロストや茂の突破が序盤戦に比べ見られないのはSHを起点に守備をされているからだと考える。

貫け、その道を

フラストレーションが溜まる3連敗。しかし、まったくの打つ手なしか、と言われたらもちろん違う。ヒントは仙台戦だろう。
前半に退場者を出しながらもボールを保持でき、少ないながらも「何か起こせる」雰囲気があった。これはどうしてか。

それは、勇気をもってボールを持って押し込もうとしたからに他ならない。

ここ数試合の停滞の原因は単に対策をされたから、ではなく、どこかでボールを持てば相手が勝手に崩れるからという認識のズレや慣れ、甘えがあったからだと感じる。ボールを持っても、ただ持つだけなら相手からしたら怖くない。立ち位置で工夫をしても、ボールを前に運ぶ勇気がなければ動かない相手を動かすことなどできない。仙台戦では最終ラインから積極的にボールを持ち、前進をしていた。相手のSHが動かない、ということはサイドの深い位置でボールを受けたらそのまま前進ができる、という事だ。
今年のコンセプトは「ボールを握って、押し込む」だ。
明日の藤枝戦や次の金沢戦は鋭いカウンターを食らう場面も多くみられるだろう。それでも、攻撃的に。ここでへこたれるほど大分トリニータはヤワじゃない。

貫け、その道を。

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