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【大分】vs神戸(H) 噛み合わせと理解度

スタジアムに観客が帰ってきました。たとえ5000人まで、という制限があってもプレーへのリアクションが拍手のみでも、やっぱり現場の「生の」情緒の動きって映像からも伝わってくるんですよね。少しずつでも彩りが戻ってきてるんや、とひしひしと感じました。

この日の大分、神戸の両チーム共に噛み合わせと選手の理解度でぎこちなさを感じる試合でした。だってまだ4試合。まだまだリーグ戦が始まってすぐだもの。仕方ない。ここからの変化が楽しいんです。

そして、ぎこちなさが目立ったせいかなんとも言えない、没入感に浸れないヌボォとした試合でもありました。なんちゅうかな、朝飯がカロリーメイトみたいな。そんな試合。(どんなだ

なにはともあれ、振り返っていきまっしょい!

まずはメンバーから。
大分。

前節から6人も変更。中でも一番注目されたのは刀根亮輔。昨年のハイライトは天皇杯のバックパス。あれからひっさびさの出場。今までも度々左CBをやっていたが右利きが故に、ややぎこちなさがある、ちょっと窮屈なプレーしてるな~という印象があった。そしてここ2試合で絶好調だった三竿を外しての先発。最近は「新戦術」の話もあったし4バック?智輝をWBにして刀根が右CB、左CBに香川か!?なんて思ったりもしましたが、刀根は左CBでした。なんやねん。
ベンチには久々に前田もスタンバイ。

ヴィッセル神戸

後ろが3枚なのか4枚なのかが分かりにくい神戸。この日の入りは4枚でした。
注目はJ1デビューの菊池流帆。大学の時に見てますが、空中戦に滅法強くてヘディングする度に「ファイヤー!!!」って言ってるヤベェやつ。知念にぶつけて来るんかな~とか思いました。
そして苦手な古橋亨梧。フェルマーレンよりサンペールよりイニエスタよりトラウマ。2度追いしてくる速くて守備のしつこい選手は前田大然もだけど苦手。そしてベンチにはドウグラス。これまた苦手。さらに藤本。古巣対戦に滅法弱く、ホスピタリティの高さ故にふるさと納税()される印象が強い(主に河原和寿のせい)。苦手。

神戸のスタメンは珍しく全員日本人。Twitterで7年半ぶりらしい。ほぇ~。

トラウマのトラウマシフト

出会ってすぐに失点。トラウマの古橋。
キックオフから16秒。松本が奪われて古橋ドリブルから安井シュート、跳ね返りをスーパーボレー!あんなん止めれるか!最初のプレーですんな!
最初の最初で失点したからどんな狙いがあってどう崩す?って駆け引きが全く見えない。シチュエーションが変わる。レビュー終わりでぇ~す(匙を投げる

とはいえ得点後もトラウマ(古橋)シフトは大きな強みで、大分もそれを見越した動きをしてたので面白かった。ので、レビュー続けます。

神戸の攻撃の強烈なのは古橋がサイドから嵐のようにガーッと仕掛けて決めちゃうとか田中順也(イケメン)がギューンとファーに巻いてのシュートが印象に残ってる。とにもかくにも神戸はFWがサイドに流れるのを良しとするための構造がありました。それで一番生きるのが古橋。めっちゃやだ。

神戸のスタートの形を基に、古橋シフトをみていきます。ここが基本的な立ち位置。

ここからまずは自陣でボールを回す時に山口が落ちてサイドを上げます。
こんな感じ。

で、本来ならば古橋が藤本と横並び、安井と郷家が縦にならんで中盤がダイヤモンドの3-4-3になりますが、ここでひと工夫。古橋を中盤に下げて安井の空けたポジションに郷家が横にズレて入る。田中順也が藤本とならんで2トップ。ボールを持ったらこんな動きの変化を持たせていました。

ここで噛み合わせを確認。

古橋は長谷川がマーク。大分は3バックで2トップを見ているため「相手のFW+1人」の基本に合った守りかた。
ここから……古橋が問題を起こします。悪いヤツです。

古橋は内側から酒井の前へラン。長谷川は中央を空けるワケにもいかず、古橋の空けたスペースに顔を出す安井にピン止めされる。
大分からしたら3バックの泣き所のWB-CB間に内側からバッ!と出てこられたら右サイドにスライドをするしかなく、香川に戻ってもらうしかない。
神戸からしたら古橋にボールが入ったら仕掛けてクロスかカットインがあるし、たとえ古橋にボールが入らなくても長谷川の目線のズレ(古橋→安井)を利用して酒井が中にカットインできるしクロスもある。強烈な「個」を同サイドに被らせて相手を強制的にスライドさせて押し下げちゃおうぜ!ってやり方でした。タチが悪い。

古橋シフト対策 ~選手選考編~

分かりやすい古橋のサイド流れて……の攻撃パターンは昨年もやっている形。もちろん大分も古橋嫌いやわ~!ってゴネるだけでなく対策を準備してました。それもかなり気を遣って。

まずは選手選考。なんでいきなり刀根が起用されたか、から。
上の古橋シフトの角取って~強制的にスライドさせて~ってのは大分も折り込み済み。香川が押し下げられるのは噛み合わせ的にも受け入れる。そして大分はある程度ボールは持たれる前提だったのかな、と。
と、なれば攻撃に移った時にこれまでの三竿がWBに近づいて相手ボランチ脇から飛び出す、クロス、というタスクをこなすには動く距離が大きく、被カウンターの際にスライドが追い付かなくなる事が想定される。ならばビルドアップの形を変えてしまおう、と。
そしてそこに入ったのが刀根。三竿と比べると前線に顔を出す回数は多くないが、球際に強くてバランス感覚に長ける。いつも以上に守備に穴を空けないっていう繊細なタスクをするなら刀根、という事だと感じました。

古橋シフト対策 ~噛み合わせ編~

特徴の違う選手を無理矢理枠に当て嵌めずに、その個性もしっかり溢さないのが片野坂監督のすごい所。
神戸の古橋シフトにも刀根を生かしていました。

まずは噛み合わせを。
注目すべき所は2つ、香川と前3枚。

まずは古橋がインサイドからサイドに流れてくるので対人に強い岩田がチェック、酒井には松本がマークで、刀根、鈴木が右サイドにスライドして香川が下がる。ここまではおさらい。
この時に香川は誰にもマークに行っておらず、ただスペースを埋めるだけ?ってなりますが、それが重要でした。
サイド深くで古橋がボールを受けたら神戸は郷家か田中順也がファーサイドに流れたり藤谷が上がって逆サイドでボールを引き出しに行きます。角取ってから逆の角取るのはうちの十八番、WBのクロスに逆サイドのWBが突っ込む形の変則型、といっても良いでしょう。それをされたら嫌だから、たとえ人が居なくても、その次の展開で人が来るポジションだから香川で蓋をする、というわけです。
また、郷家や田中順也の動きに刀根が吊られたり、香川が戻りきれない場合でも島川がカバーリングできる位置にいる、というのも地味に利いてました。

そして前3人。上の図では結構露骨に配置しましたが、相手がボール持ってハーフラインを越えたあたりから、前3人が相手4バックの中間にポジションを取っていました。そのココロはSBを狩り場にするためだったのかなぁ、と。
上の図では酒井がボールを持っていて、古橋が流れる!ってのを想定して配置しています。ボールホルダーの酒井に松本、サイドに流れた古橋を岩田が見て、安井の攻め上がりを長谷川が見る。これでかっちり大分は守備で嵌めました。
で、酒井が「あ~!パス出せないわ!」ってなった時にバックパスをして作り直したい。と、なった時に中間ポジションが生きてきます。大﨑へのパスコースがない!って算段です。
神戸もたったそれだけで切羽詰まるチームではないので、山口がヘルプに行って打開とか、山口に知念がついてきたら菊池に渡せば良いし、シンプルに飯倉まで下げれば良い。けど一番セーフティなのは飯倉しかなく、大分からしたら飯倉まで戻させたら仕切り直しができる。急いで守備のスライドをしなくて良い!となるわけです。ここまですりゃ、古橋だって自由にできない。(既に関係ない形から理不尽に失点してるけど)

大分の狙い

大分は古橋への守備対応を軸にしました。しかし、守ってばかりではいられません。ならどうやって攻めるか。それは強力な酒井、古橋をそもそも押し下げてやろう!ってテーマも持ちつつ決めきる攻め、を求めていたように見えました。

名脇役、としお

この日地味~に利いていたのが名脇役、島川俊郎。守備に穴を空けてしまえば一気にやられる。けど島川が居たから守備に穴を空けずに攻撃に力を入れる事ができました。そしてそれはゴールシーンにも表れます。
大分は同点シーンまでほとんどボールを持って前進!神戸がちゃんとセットして守備!って形がほとんどなかった(全部古橋のせい)ので図には噛み合わせの図には起こし辛いですが、岩田が前線に躊躇なく爆走していったのは目についたと思います。それを促したのが島川。
本来ならばダブルボランチの片方が「左CB」に下がっての4-1-5から……

岩田が前線に上がって鈴木と島川が右サイドにスライドした3-2-5みたいな形を取ります。これは左サイドからの展開でやっていました。

が、この日はそれに加えて島川が「右CB」に落ちるパターンも。ここから……

こう!

そんな変わんないじゃん……って思うかもですが、大分がここからひっくり返されてカウンター!という場面では、当然岩田の裏を古橋が狙っているわけで、そこのカバーリングを島川がするのと鈴木がするのでは大違い。先に示した図のように鈴木を最初に古橋にぶつけてしまったらサイドに引っ張り出されてしまい、中央の強度が落ちる。しかし、島川が先に古橋を捕まえに行ったらボランチの選手らしく、「遅らせる」プレーができる。島川が時間を作ってくれる!という担保があるから岩田ものびのびとプレーできる。
確か去年のホーム札幌戦のポジションの循環に近い形だったのかなぁ、とか思いました。継続性が生きた。

なんか失点して、ボールの奪い所を決めて攻撃もしっかりやって。相手GKの飯倉が結構ミドルレンジの浮き球パスが合わなかった事もあり、同点にしてからちょっとずつ上向いた大分、って感じで前半を終える。

立ち位置変えーの守りーの

後半に入って先に動いたのは神戸。メンバーはそのままに3バックに変更してきた。

前線の並びは入れ替わり立ち替わりだったのでなんとも言えなかったが、なんとなーく郷家がフリーになりがちだったのを見ると3-3-1-3の「1」に郷家やったんかな~って印象でした。スタートの4-3-3をベースに中盤の3人を縦1列に!みたいな立ち位置。ボールに近い選手が近くにポジション取って、前線では古橋、田中順也が開いたりスライドしたりして揺さぶりをかける、みたいな動きをしてたような。ふんわりしすぎや……勉強不足。
図には起こしきれなかった。実力不足。反省。

後ろを3枚にした理由としたら中間ポジションに立たれてカウンターを喰らうなら、最初から山口をスイーパー的な役割にしてマーカーを明確にしちゃおう!って意図と、神戸がボールを保持した時に思っていたより大分の前3枚がプレッシャーに来ないなら後ろから運ぼうぜ!って狙いがあった。

神戸のネックだった点

後半になって後ろの枚数変えて、後ろから運んで押し込むつもりだった神戸。しかし、ボールは持ててもビルドアップの出口が減って(最終ラインの前で受けられる選手が4人→3人になった)パスの受け手がいい形でボールを受けられない。相手のズレを生む効果的なパスがあまりなかった。

ネックになったのは、この日J1デビューだった菊池流帆。後半からは右CBに入った彼だが、ボールを持ち上がるのかパスして相手を動かすのかがあまりわかっていたようには感じられず、大分のプレッシャーに引っ掛かる場面が散見された。まぁそれでもあのガタイの良さと、ガツガツ行く失敗を恐れない姿勢でめっちゃ穴!って訳ではなかったが。
3バックの菊池以外はボランチが本職の山口とアンカーとかやってた大﨑だったのでボールをどう動かしたら相手のどこが動くか、が菊池だけそんなにわかってない印象でした。不憫。

神戸も菊池がビルドアップに長ける選手じゃないことを知っているから安井、山口、大﨑をぐるぐる回してパスの出し所を作ったり、山口がスクリーンをかけて菊池が持ち上がるコースを作ったり……いいチームでした。うちもDFラインでボールを回して引き付けるサッカーをはじめた時はそれはもう悲鳴モンでしょーもない失点も少なくなかった。けど、今ではそこそこ以上にやれてる。菊池流帆に足下の技術が加わったら本当に面倒だからやめてほしい。

神戸が窮屈に感じられたのは、単に菊池の足下が~ってだけでなく、大分も守り方をマイナーチェンジしたから。といっても田中達也と三平がタッチライン際まで開かずに3バックの前に立ってCBから前線に楔を入れさせなかったから、ってだけですが……
大分は神戸の最終ラインが3枚、4枚のどちらで来ても大丈夫な準備をしてたことが窺えました。

もう一度、流れを……

その後大分は渡入れて香川のショッキングな負傷交代もあって65分で4人を変更。

中でも島川を下げて前田投入は大きな変更でした。

相手が後ろの枚数を変えてから、対策は打っていたが、島川のカバーリングが生きる場面よりも重心が重くなって前線が孤立する場面が増えた。サッカーの難しい所であり、面白い所であるが前半一番効いてたプレーが、プレイヤーが1つの変化で消される。逆もまたあるが。
ならばボールのインターセプトが上手く、相手を引き付けてからパスを散らす事の出来る前田を投入。オープンな展開になって多少のリスクを追ってでも相手3バックを攻略したかったのだと思う。

この変更により大分は、多少落ち着くもガラリと展開を変えるまでに至らず。
そうこうしてるうちに神戸も異例の4枚替えで流れを変えさせない。

中盤のインテンシティ(球際の強度)を上げてショートカウンターを仕掛けたいようだった。

試合終盤で小田、佐々木が決定気を外してくれたお陰で命拾い。流れを引き戻せずに引き分けになった。

大分のネックだった点

後半、一番悔やまれる点は知念の動きだった。前半から精力的に動いて守備ではアンカーの山口の前に立ってコースを消したりと頑張っていましたが、度々起こる「えっ、そこォ!?」みたいな動きはかなり勿体なかった。
特に右サイドからの崩しでは、元々はサイドプレイヤーな田中達也が開いてボールを受ける場面や、松本の十八番のニアに足下への速いクロスに合わせてほしい、ニアに飛び込んでDFを引っ張る動きが少なかった。
中でも85分のカウンターのシーンでは、前田が上手く田中達也にスルーパスを送って左サイドをぶっちぎる。ファーサイドで渡が走ってて、田中の後ろから大外を松本が駆け上がって、知念はニアにDFを引っ張ってくれればそこを起点に選択肢が拡がるし劣りに使われる事もできる場面。なのになぜかファーサイドに流れて相手DFの網に自分から引っ掛かりに行って渡とも被るという最悪に近い選択をしてしまった。認知や判断の負荷を軽くするために戦術やパターンがある(先輩の受け売り)のにまだまだ感覚でやってるんだろなぁ~、勿体ないなぁ……と思う次第。
昨年のオナイウ阿道、一昨年の藤本憲明みたいにまだまだフィットするまで時間はかかりそうかな……と。しかし、先発してて85分の場面であれだけ動けて収まるサイズのある選手は滅多にいないので、ニアへの飛び込みを早く習得してバカスカ点決めてほしい。隙のない選手に絶対なれるはず。

筆者の課題

なんか上手くまとまらず、散文チックになった神戸戦のレビュー。正直すまんかった。ここまで読んでくれてありがとうございます。
書きたかった事を改めて要約すると

・神戸のポジションの変化に大分も頑張ってついていった
・まだまだ序盤。悪目立ちはこれからの成長の裏返し
・だいたい古橋が悪い
・古橋海外に行け

です。書きたいことは書いたつもり。自己満足度は高めです。けど、ちゃんとは纏まってない……もっと精進します。また読んでくれると幸いですm(__)m

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