「鍵泥棒のメソッド」を見たよ
ネットのおすすめ映画みたいな記事でもよく取り上げられるので、前々から気になっていましたが、ちょうどGWで時間もあるので見てみました。非常に素晴らしい映画でした!
あらすじ
雑誌編集長である水嶋香苗(広末涼子)は、結婚を目的として活動を始める。また、凄腕の殺し屋コンドウ(香川照之)は、仕事をこなした後帰り血が気になって銭湯に立ち寄る。一方、売れない貧乏役者桜井武史(堺雅人)は自殺を試みるが失敗し、同じく銭湯に向かう。香川照之が足を滑らせて気絶している間、堺雅人はこっそり鍵をすり替えて財布や荷物をかすめ取るが、香川照之は頭を打ったショックで記憶喪失になっており…。
というようなストーリーです。いわゆる入れ替わりものとはちょっと違って、堺雅人は自分はコンドウではないことを知っており、香川照之は自分は桜井だと思いこんでいるという、ちょっと変則的な構造になっています。
キャラクターの内面を表現する演出
めちゃくちゃ凄いなと思ったのは、とにかく演出がすごく意図を持ってなされていること。単に何があったかを描いているわけではなく、このキャラクターはこういう内面を持っているからこういう行動をする、という意図を持って描かれているんですね。
例えばこのシーン。
「鍵泥棒のメソッド」(C)鍵泥棒のメソッド製作委員会 以下キャプチャは全て同様
これは香川照之が銭湯でお釣りを受け取るシーン。千円札で恐らく9枚受け取っています。ちょっとキャプチャだと見えづらいですが財布には他にも紙幣が何枚か入っており、ということは千円札を持っていればそちらを出すはずなので「金持ち」「千円札を持たず、基本的に財布の中には万札が入っている=財布の中まで几帳面に管理する性格」ということがワンカットで描かれてるんですね。
同様に、こちらも香川照之が小銭をまとめているシーン。硬貨を種類ごとに分けて、並べておいています。
逆に堺雅人が同じ金額を扱っているシーンだと、小銭はざらっとぶちまけられるように置かれています。
同様に、香川照之の書く文字はこう。少し硬めの字体で、きっちり項目分けして後から読んでも分かりやすいように書かれています。
逆に堺雅人の書き文字がこちら。割と丸文字で、文章の中身も子供っぽく、イラストまで添えられています。
字体に関しては意識してこうしているようで、スタッフロールを確認したところ文字指導というような方もおられました。
反復の効果
映像作品では、しばしば反復の技法が見られることがあります。これは効果として強調や継続性、逆に違いを表す目的で使われるものです。この映画では反復も非常に効果的に使われていました。
以下に見ていきましょう。
映像的な反復
上から順に、「堺雅人がコンドウの部屋に入るシーン」「香川照之が堺雅人の部屋に入るシーン」(この2つは対照になっていて、堺雅人はコンドウが何者なのか知らないし、香川照之は記憶喪失なので、お互いとも自分が何者なのか分かっていない)。「ヤクザがコンドウの部屋に入るシーン」「最後に堺雅人が自分の部屋に戻ってくるシーン」
キャプチャだとちょっと分かりづらいですが、全て画面右奥に入り口があって手前が部屋の奥側という構図になっています。4つとも同じことを意味していて、つまり部屋の中に何があるか分からないんですね。特に堺雅人と香川照之は自分の部屋に帰るはずなのに部屋の中に何があるかわからない、というシーンになっています。
フレーズの反復
「臆病」「真面目」「演技」、また効果音だと車の警告アラームなど、繰り返されるフレーズがあり、長くなってしまいそうなので挙げられないですが、注意して見てみると良いかも知れません。
映画の後堺雅人はどうなったのか
今までやる気もなくてだらしなくて役者としても大したことなくてダメダメだった堺雅人(ってひどい書き方だな…役名で書くと分かりづらいので仕方なく…)ですが、映画の後どうなったかは描かれていません。
ただ、最後に帰ってきた部屋が片付けられたままになっていること、つまり香川照之の几帳面さが一部残った形になってるんですね。
もちろん人間性が一晩で変わるとは思えませんが、検索すると堺雅人の人生に対するちょっとした救い、みたいな感じで書いておられる方が多いのにちょっと違和感を覚えまして。もちろん明確に描かれているわけではありませんが、彼の今後の人生、多少はちゃんとするんじゃないでしょうか。
まとめ
普通に見ても面白いし細かいところまで見るとさらにメッセージを感じられて、めちゃくちゃ面白い映画でした。
アマプラなら無料で見えるので、みんな見ましょう!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?