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DMOがすべきこと 〜グランドビジョンの重要性〜


たとえば、瀬戸内の楽しみ方のひとつであるサイクリング。しまなみ海道と呼ばれる道のりがあり、広島県の尾道から、愛媛県の今治まで、様々な島をつないでいる。自転車専用道ではないものの、道路には明確に色分けされた自転車用コースと、「今治まで後○キロ」という標識があり、サイクリストに配慮した素晴らしい道だと感動した。

が、その道路の整備具合に対して、帰りのフェリー路線には驚いてしまった。地元人でも乗り分けが難しいのではないか? というような細かさだったのだ。

しかも、これらの航路はほとんど全てが、別の船舶会社によって運用されている。どれも、地場の需要だけを頼りにしていたような零細の会社が多い。
想像の通り、日本語しか通じず、外国語の標識は少なく、また船内では現金しか使えずに、両替も出来なかった。

瀬戸内エリアはDMOが積極的に海外にアプローチし、インバウンド需要を狙いに行っているが、これでは外国人の方からの好評を得るのは難しいだろう。

アートで有名になった直島も同じようなもので、近年外国人観光客が急増しているものの、主要なアクセスとなるフェリーは同じような状況だ。
クレジッドカード、ICカードは使えず、現金のみ。また乗船スタッフは英語にも不慣れだ。 今や世界的に有名になった直島。そして国際芸術祭も開かれる場所。なのにそこへの唯一と言ってもいいようなインフラが、未だにインバウンド対応していないのは不思議でしかない。

本来、DMOが調整すべきはこのようなことではないだろうか。

つまり、個々の観光事業者の利益を超えたところで、「地域としてあるべき連携」のビジョンを創った上で、その理想像のメリットを説き、時には費用分担もした上で、実現に向けて落とし込んでいくこと。

訪れた際の満足度をできるだけ高めてからPRを展開しないと、穴の空いたバケツに水を入れるようなもので、結局は逆効果になりやすい。

瀬戸内の島々を巡る旅は素晴らしいし、歴史的な物語性もあり、山と島が近い距離にある独特の自然地形なども特徴的で、ポテンシャルはあると思う。だからこそ、DMOがそれらのピースをまとめあげ、他の地域に勝るようなグランドデザインを描けるかどうかが勝負の分かれ目になるだろうと思う。

記事にあるような海外の観光局のトレーニングよりも、現地の観光事業者の啓蒙とトレーニングを優先する方が、得られる果実は多いだろうと思う。

※このようなことは瀬戸内に限らず、どの地域のDMOでも同じようなケースが多い。外部向けマーケティングよりも、質的向上を優先する方が良いケースだ。


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