奥が深い「多言語翻訳」

USEN社が開発したツールを使うと、迷子などの案内を多言語でアナウンスできるそうで、大阪城では臨機応変な翻訳が難しいことからこのツールの導入を決めたとのこと。

例としてあげられているような迷子などであれば自動翻訳でも対応できるのだが、実際の観光案内では、言葉をそのまま翻訳しても文脈的に通じない例も意外と多いことに、気をつける必要がある。(このツールの本質とはちょっと外れてしまうのだけれど)

たとえば、大阪城は、城である。英語に訳すとCastle である。

日本人が考える castle は、戦のときに使われる「防御要塞」といった意味合いである。城は合戦に備えて作られたし、時には立てこもって長期戦を行うために険しい山などにも作られた。

一方、ヨーロッパにおける castle は、貴族の「家」である。貴族が自らの権力を誇示するために作った豪華な邸宅である。 やたら寒かったり、掃除が大変だったりと、実用的な要素はほとんどない。 外側からの見た目が美しく、かつ圧倒的であればそれで合格なのだ。

上記のように言葉の持つ意味が違うから、単に castleと翻訳しても、ヨーロッパから来た観光客には「ああ、ここは将軍の家なのか……」と思うだけで、実際に戦の現場となったことまでは想像ができなかったりする。

用件だけを翻訳すればOKな、一般的なアナウンスの自動翻訳と異なる観光翻訳の難しさがここにある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?