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「自滅する企業」に起こる7つの症状をまとめてみた(読書ログ)


はじめに・・・

このnoteは「自滅する企業」by ジャグディシュ・N・シースという本を何年もかけてようやく読み終えることができた記念のまとめです。

特に大企業に勤めていて、「この会社、大丈夫か・・・?」と時々でも社員ながら思ってしまうような機会がある人におススメの一冊です。

端的にいうと、優れた企業であっても7つの習慣病が発生するということがその処方せんと一緒に書かれています。

良い企業とは、どんな会社なのか?

本書で触れられている7つの習慣病の症状を順番に紹介していくがその前に、良い企業とはどのような企業なのか?自分なりに定義しておこうと思います。

良い企業とは・・・
 ・顧客に対して価値を提供し、その対価(利益)を獲得できる
 ・市場の変化/技術の変化を捉えて、自らの価値を拡大させることができる

という2点だと考えています。

言葉にすると当たり前なように聞こえる一方で、実際には、多くの従業員を抱えている状態や、市場での競争が激しい状態ではだんだんとできなくなっていくものだと思います。
(従業員や中間管理職が、「顧客全体」のことを考えずに自分の給料のことや派閥争いを始めてしまったり、また、競争が激しいと利益のほとんど出ない案件でも受けざるを得ない状況になってしまったりするはず。。。)

で、この良い企業でなくなった企業は、徐々に衰退していくことになるが、この時に発生する習慣病の症状が7つ書かれています。

良くない企業では何が起こっているのか?

ひたすら羅列していくことになりますが、現実否認、傲慢、慢心、コアコンピタンス依存、競合近視、拡大への強迫観念、テリトリー欲求が発生します。
聞いただけでちょっと嫌な気分になる7つですね。

  • 現実否認
    現実に起こっている変化を受け容れられないことによって起こります。
    本書で触れられている変化は以下3つです。
    技術の変化⇒例えば、電話が携帯電話になる。自動車が電気自動車になるなど
    顧客嗜好の変化⇒例えば、一昔前は豪華な結婚式をするのが当たり前だったが今はそうではない。など
    新しいグローバル環境⇒例えば、インドが非常に安価な製品を作るなど

    現実否認の症状は、こういった変化を企業の経営陣がどのように受け取るのかで決まってきます。
    こういう時に例えば、「市場をすみ分けているので、新しい●●は弊社には無関係」「●●の価格帯はうちの市場ではない」など、変化を軽視/否定する態度は危険と書かれています。

    ■処方せん
    現実をしっかりと見つめ、他社がどうなっていったのか。顧客は何と言っているのか?ちゃんと変化を受け容れ、取り込む努力をすることが大事だと書かれています。

  • 傲慢
    これは成功している企業が、自らの成功モデルを信じ切ってしまうことで新しい変化を拒絶したり、外部の顧客や関係会社に対して硬直した態度をとってしまうことで発生します。
    こういった状況では、新しい競合他社(ローエンドモデル)の参入を許してしまったり、市場の変化に対して柔軟な対応ができなくなるなど、硬直した態度の傲慢さでせっかくの市場での地位を失っていくことになります。
    特に組織の文化のレベルで傲慢さが発揮され、管理職や社員が、人の話を聞かなくなったり、取引相手を威嚇しはじめるなどの行動が発生してしまい、手が付けられなくなると書かれています。

    ■処方せん
    傲慢にならないためには、管理職に対して、確実性の高い業務を与える。人材プールを多様化するなど、組織が硬直化しすぎる(傲慢さを生まない)ように運営していくことが重要と書かれています。
    ちゃんと変化を生み出し続けることが重要で、自らの過去の成功に執着しすぎない環境や文化を維持することが重要と記載されています。

  • 慢心
    慢心のイメージとしては、役所の官僚的な仕事が代表例になります。
    主に政府の規制や市場・流通網の独占など、競争にさらされていない環境で拡大してきた企業が、独自の文化や内部の手続きを育て上げてしまい、自浄できなくなる症状です。内部でも官僚的な手続きや合意を重んじる文化、意思決定の先送りなどが発生し始めてしまい、市場よりも組織の中の都合が優先されてしまう状態です。

    ■処方せん
    慢心に対しては、顧客への付加価値に着目し、価値を生まないプロセスをやめること。ノンコア業務を切り捨てることによる顧客への付加価値への集中が挙げられています。
    組織の中の都合を押し付けないように価値を生まない組織を切り離していけというメッセージです。

  • コア・コンピタンス依存
    一度成功したモデルの強み(研究開発・デザイン・販売・サービスなど)へしがみ付いてしまい、市場の変化に全く適応できなくなってしまうこと。傲慢が周りが見えなくなってしまう症状だったのに対して、コア・コンピタンス依存は、(その企業の強みはそこにしかないので)変えたくても変えられないというニュアンスがあります。
    こういう企業では、風通しがどんどん悪くなり、会社を変える努力が実らない。わくわく感が消えるなどの弊害が発生していき、会社を変えるエネルギーが消え、既存の資産を食いつぶしながら生きながらえていくことになります。

    ■処方せん
    コアコンピタンスがあることは全く悪くない(むしろ、素晴らしい)ので、新しい用途や新しい市場など、コアコンピタンスをフル活用する努力を怠らないということが書かれています。。また、変化に適応しやすくすためにバリューチェーンの川上および川下へ進出することが有効で、自分の領域を定めすぎないことが重要と書かれています。

  • 競合近視
    競合近視は、特定の競合他社との競争に注力しすぎるあまりに、顧客に価値を提供するという最も重要なことをおろそかにしてしまう症状です。
    たくさんの事例が書かれていますが、特に「競合はポーターが挙げた5つの脅威のうちの一つに過ぎない」と締めくくられ、例えば、出張者に顧客を絞り込んで競争していたレンタカー業界が、レジャー向けや家庭向けの市場に完全に乗り遅れてしまった事例が挙げられていました。

    処方せん
    何よりも広い視野で市場を見ることが重要。ということが挙げられています。例えば、他の顧客が欲しがっているのは何か?潜在的な脅威はないか?などをきちんと考えることが重要と挙げられていました。

ポーターの5つの脅威。競合他社は脅威の一つに過ぎない。
  • 拡大への強迫観念(高コスト構造)
    拡大することを優先するあまり、コストがかさみ利益が出ない状態での拡大を推し進めてしまう症状です。思っているほどには規模の経済によるコストの低減が発生しなかったり、政府からの義務(税金・法規制)や社会的責任などの予定外の支出が規模の拡大と共に生じてしまうことにより、規模に見合う利益が生み出せなくなってしまうことです。
    ガイドラインのない場当たり的な支出の増大や赤字案件の受注、調達などのコストセンターが拡大しすぎることも発生してくると記載されています。

    ■処方せん
    対応する処方せんとしては、コストがどこで発生するのかを明確にし、利益にならないプロセスや案件を抑制すると共に、コストセンターの部署を切り離したり外販に回すなどして、プロフィットセンターにしていくこと。とにかく価値に目を向けさせることが重要だと書かれています。

  • テリトリー欲求
    企業が強大化してくるにつれて、事業部間の連携が悪くなり、部門の事情により全社の最適な活動が阻まれる。というような現象が発生してきてしまいます。
    例えば、中間管理職が悪い数字の報告を遅らせようと画策したり、経営幹部複数を巻き込むようなプロジェクトは推進が困難になったりします。
    最終的には、ひたすら組織の内部抗争をすることで、会社が麻痺してしまいます。

    ■処方せん
    トップのリーダーシップが求められ、効果的なインターナルなコミュニケーション戦略やビジョンを示すことが重要と挙げられています。また、経営幹部や中間管理職を定期的にローテーションさせることで、事業部間の対立を軽減させたり、組織横断のプロジェクト組成や時々組織を組み替えることが有効と挙げられています。

まとめ

7つの習慣病を書いてみました。この本。結構読みづらくて数年寝かせてしまったのですが、大企業あるあるが難しく書かれていて面白かったです。
外資企業はドライなので、こういう組織のどろどろした争いは無縁。みたいなウワサをたまに効きます、多分全くの嘘で、大きい組織だと絶対発生してしまうんだろうなと思いました。


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