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安倍派に迫るX DAY


一周忌

 選挙演説中の安倍元総理が奈良県の大和西大寺駅で銃殺されてから7月8日で一年が経った。元総理が手製銃で殺害されるというショッキングな事件は、日本はもとい世界中に衝撃が走った。山上徹也被告の裁判は依然として始まっておらず、公判前整理手続きも不審物が届いた関係で行われていない。国民に大きな動揺を与えた事案であるだけに、慎重に進められている。山上被告の裁判員裁判は来年以降になるとみられ、山上被告自らの口でその真相が語られるまで今暫く時間を要するようだ。


集団指導体制かそれとも…

 安倍元総理の死去から一周忌を迎えたことで安倍派の指導体制をどうするかについての議論が加速している。安倍元総理の一周忌を前に派閥の総会が行われ、それを前に幹事会が行われた。その中で萩生田光一政調会長、松野博一官房長官、高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長及び西村康稔経産大臣から成る五人衆は集団指導体制を引き続き行うことを主張した。

 これに対して塩谷立会長代理や下村博文会長代理は「清和会の歴史から見て集団指導体制が存在したことはなく、新たに会長を選出するべきだ」と主張した。また、会長選出を主張する背景に森喜朗元総理への反発がある。そもそも、「五人衆」は森元総理の覚えめでたい人々であり、派閥内から選出された訳ではない。そして、森元総理は五輪汚職で名前があがった人物でもある。その様な人物が未だに派閥へ影響力を有していることへの不満が燻っているのである。

 総会の場においても双方が異なる意見を出しており依然として溝は深い。総会後、塩谷会長代理は「派閥は会長のもとで纏まるものだ」とし、下村会長代理も「五人衆は正式な機関ではない」として不快感を示している(これについて町村派時代に共同代表制を採用したことはある)。一方、五人衆も総会後、森元総理と会食を行い、集団指導体制が望ましい旨を確認している。


最大派閥の行く末

 さて、安倍派は自民党内最大の派閥で所属議員数は100人に上る。安倍元総理が存命の時は、その数を以て大きな影響力を有していた。しかし、この対立が長引けば分裂する可能性を孕んでいる。一部報道によると、五人衆のいずれも会長に立候補しなかったと言う。これは誰かが会長に就任すればそれを快く思わない議員がいる可能性があり、すなわちそれが派閥の分裂に繋がるのを危惧したためと思われる。

 また、今夏から秋にかけて内閣改造・党役員人事が行われる公算である。その中で岸田総理としては、安倍派の窓口は誰でどのような処遇を求めているのか意思疎通するのが困難になる恐れがある。自民党内最大派閥の迷走の終結にはまだ時間がかかりそうだ。

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