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若い人に欲がなさそうに見えるのはなぜか

 結論から言えば、衣食住が足りていれば、欲なんか出ないのよw

私はもうアラ還モードなので、昭和の時代の記憶もまだまだ脳裏に残っている。

私が子供だった頃は、カランカランとカネを鳴らしたお豆腐屋さんのトラックが来ると、お鍋を持って買いに行ったりもしたし、服や靴を買うときは、ジャストサイズを買うことなんて一切なくて、大きめのものを買って腰や裾を母がつめて縫い合わせてくれて、成長するごとにその縫い目を解いて対応していた。

お金があったらいっぱい服が買えるのになぁ、と多くの人が思っていた。

新しい洗濯機や炊飯器、カラーテレビ、冷凍冷蔵庫、クーラー。そんなものが出る度に心の底からみんなが欲しいと思ったはずだ。

うちは両親ともに大阪の電器メーカーに勤めていたので(母は妊娠を機に退職)、母がその電気器具のモニターをするという名目で、当時の最先端の電化製品が我が家には常にあった。その点では割と恵まれていた方だと思う。今ではどこの家にでもある電子レンジも、当時は周囲に使っている人などいない時代から我が家にはあった(しかもかなりの大型)。そして母はそれをガンガン使いこなしてレポートを書いていた。

私はというと、スポ根マンガとアニメにどハマりして、ハマる度にそのスポーツグッズが欲しいと思った。野球のグローブとバッド、テニスラケット、バレーボール、バスケットボール等々。でもそれらはすぐに買えるものではなく、「来年の誕生日には絶対にバレーボールが欲しい!」と周囲に言いまくって、ようやくその日を迎えてゲットするという日々だった。

とにかくお金がたくさんあったら、全部買えるのに!

もっと大きな家に住めるのに!

あの美味しいレストランに毎週でも行けるのに!

めちゃくちゃ稼いでお金持ちになりたい!!!

服も、食事も、住む場所も、ずっとずっと欲しいものだらけで、それらは単純にお金さえあれば買える。だから必死になって稼ごうと思ったのだ。

アジアの若者の方が上昇志向でガッツがあってハングリー精神に溢れるていると思うだろうけれど、衣食住において満足できない何かがあれば、フツーに欲は出てくるがな。

でも、今の日本の状況というのは微妙なところにあるのだ。

立派な御殿を建てられなくとも、ワンルームのアパートに住むことはバイト生活でも叶うし、めちゃくちゃ美味しくて安全な食事もどこででも買える。GUやしまむらに行けば高品質の服が安く売られているし、ダイソーに行けば雑貨が全て揃う。ニトリに行けばイマドキ人気の家具が安価で売られている。ちょっと奮発してコンビニスイーツを買えば、世界でもトップレベルのスイーツが手に入っちゃったりするわけよ。

ところが、その次のステージに行こうと思うと、かなりの無理ゲー感が漂う。

都心でちょっとしたマンションを買おうと思うと、平均で8,000万円だなんて!

ちょっと努力すれば毎年の報酬が2割ずつ上がるというのなら、がんばってみようかなと思うだろう。が、収入はほとんど増えず日本の銀行預金のよう。時々がんばって残業でもしようと思うが、上司は早く家に帰れと言う。

収入を上げる道が閉ざされているように見えて、戸建てもマンションも買えるようには思えない。

持家を手にする前に人生終わっちゃうじゃん!

と若者が思っても不思議ではない。

そこでガッツを持って海外に行ったろう!一旗揚げたろう!と思うような人は、もう先天的にガッツDNAを持っているような人だと思うよ。とにかく常に何かにチャレンジしていないと気が済まないとか、動いていないと死んじゃう回遊魚マインドを持っているような人(昔の私は、友人達に回遊魚って呼ばれてたw)。

めちゃくちゃ頑張っても無理っぽいなら、早々に戦線離脱して他の価値観の中で生きたいと思う人が増えるのも当然だし、収入が多くなくても生活はできる。安くて良い製品がそこここに溢れているから。

そしてもう一つ言えることは、ネット環境とそのコンテンツの充実っぷりにも原因がある。

うちの子供たちは、オーストラリアにいた頃は、自宅から車で数分の「それはそれは素晴らしい贅沢なビーチ」で遊んだりしていたので、香港に引っ越しした後に、電車やバスを乗り継いで出掛けても疲労感が増すだけだし、行った先も特に感動を得るような景色に出会えず。それならばプロの誰かの撮影した現地の動画を見た方が、イージーに確実に楽しめるようになってきたし、情報量も多いように思えた。

そして、それらの動画を視聴するのにコストがかからない。交通費もいらない。天候にも左右されず、自分のエネルギーも使う必要なく、エアコンの効いた部屋でポテトチップスをパリポリと食べながら見ているだけで十分に楽しいのだ。

外出しないなら衣服もそんなに必要ではないし、交通費も外食費もかからない。映画館に行かずとも月額990円でNetflixが見放題、CDを買わずとも980円でSpotifyが聴き放題である。あとはゲーム課金するくらいで大満足ライフができあがる。

若者が「これ以上の豊さはいらない」なんて言っちゃう気持ちもわからなくはない。

がんばったらものすごいリターンがあるというなら、多少なりとも夢を見られるし、自分のさらなる豊かでステキな生活が数年先にあり得るかもと思えたら、そのために頑張ろうとも思えるけれど、どれほどがんばって部長になったとしても、家のローン返済にキューキューしていて、偉そうに振る舞えばパワハラと言われて人事から呼び出しを食らったりするのだ。

カナメ「日本なんて部長になろうと役員になろうと電車通勤するんだぜ?車通勤できるのなんて副社長くらいから。役員なんて数千万くらい(報酬が)出てるはずなんだけど、(税金や社会保障費を引かれて)手取りなんて半分くらいちゃうん。出世しても夢がないよね。でも例えば韓国だったりすると、部長で車が与えられて(車体ガソリン代駐車場代が会社負担)、取締役になれば運転手もつくわけよ。さらにサムソンなどの財閥系に就職すれば、子供の教育費が全部会社もちだったりするねん。」

儲かっている会社なら、そういうこともできるけれど、日本の会社ではそうは行かないわけよ。日本の正社員の世界なんて、社内の社会主義と言ったら言い過ぎだけどさ、平等すぎるよね。

だから衣食住足りている日本の若者がハングリーになるはずはない。

でも前提が変わればどうかな。

今のこの生活が維持できなくなる未来は、遠い未来ではなく、割と早めの目前に迫ってきているのだ。大逆転のチャーンス到来となれば、若者もちょっと浮き足立って色々とやり始めると思うね。大人に煽られる必要もなく、時が来たら若者もアクションを起こすとは思うけど、それはかつて若者だった今のシルバー層が想像するような動きでないことは確か。

デモが起こるわけでもなく、静かに淡々とお金の流れる方向が変わり、まるで現実にパラレルワールドが存在しているかのようになるのかも。知らんけどw

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