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第十回:助け合いを通して相互繁栄的なウェルビーイングを達成する

新年あけましておめでとうございます、ウェル・ラボラトリーズの金子迪大です。

少し間が空いてしまいました。

第九回では、社会には相互繁栄的なウェルビーイングを達成する余地がまだまだあることをお伝えしました。では、日々どのようなことに気をつければ相互繁栄的なウェルビーイングを達成することが出来るのでしょうか。今回は、助け合いについて説明したいと思います。


生物は自己中心的である

多くの生物は自己中心的です。これは生物の根源が遺伝子であることと関係しています。ダーウィンの進化論とか自然淘汰という言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、現代に生きている生物は遺伝子の乗り物であると言われています。どういうことでしょうか。
ある生物に、遺伝子Aと遺伝子Bがあるとします。遺伝子Aはその生物の生存や生殖行動を助け、遺伝子Bはその生物の生存や生殖行動を妨げるとします。その結果、遺伝子Aを持つ生物は子どもを作りやすいため遺伝子Aは次世代に受け継がれやすくなります。一方、遺伝子Bを持つ生物は子どもを作りにくいため遺伝子Bは次世代に受け継がれにくくなります。そのようなことが数世代続くと、遺伝子Aを持つ生物が増え遺伝子Bを持つ生物が減ります。
 
それでは、遺伝子Aはどのような機能を持っているから子孫に受け継がれていくのでしょうか。先ほど書いた様に、鍵は自分の子どもを残せるか否かです。つまり、生き残って子孫を作ることです。厳しい環境の中、自分の遺伝子を残せる個体だけが次世代を作れます。そのため、他者を押しのけてでも自分が生き残り、子孫を残す行動を取ることを支える遺伝子を現代を生きる生物は保持しています。生物は基本的には利己的なのです。

群れでの生活と助け合い

それでも、中には群れで生きている動物もいます。人類もそうです。数百万年にわたり人類は群れで生活してきました。そのため、協力行動をする遺伝子を持っています。これは「協力が素晴らしいから人類は協力する」ということではありません。協力する個体が生き残り子孫を作れたから、協力を促進する遺伝子が現代まで受け継がれたということです。
 
とはいえ、他者と協力する時に「自分は協力したほうが生き残りやすいし子どもを作りやすい」ということは考えません。遺伝子は様々な仕組みで人間を操作していますが、必ずしも意識を伴う必要は無いのです。
 
たとえば、人は自分さえよければ良いという人に対して嫌悪感を持ち、嫌悪の表情を表します。そして同時に人は相手の嫌悪の表情を読み取ることが出来、このままだと仲間から追い出されてしまう危険性を察知できます。そうすると不安や恐怖を感じ、自己中心的な行動を改めることが出来ます。
 
結局は自分のためではあるものの、人類は進化のプロセスで助け合いを学んだ動物なのです。

助け合いの効能

助け合いというのは、誰かが困っていたら自分が助け、自分が困っていたら誰かに助けてもらうことです。誰かを助けることは短期的には損をすることもあります。お金に困っている人にお金を貸すということもあれば、そこまで直接的でなくても仕事で困っている人の悩みを聞いてあげるために自分の時間を割くこともあります。しかし、今度は自分が困っていたら助けてもらうことが出来ます。

お返しが無くても助ける

人は誰に対しても困っていたら助けるのでしょうか。もし人類が恩返しを期待して誰かを助けるとしたら、恩返しをしてくれなさそうな人のことは助けるのでしょうか。たとえば旅先で出会った人とは二度と会わないかもしれません。自分のことだけを優先するのであればそのような人を助ける必要は無い、と言えるかもしれません。
 
しかし、人間はそのような一度きりの関係性であっても助けます。この原因のひとつが、人間社会の特徴です。井戸端会議、という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、人間は他者の噂をするのが大好きな動物です。「あいつがこの間パワハラで処分された」というような話は、公表されなくても何故か多くの人が知っているものです。逆に、「あの人、この間私が落ち込んでた時に話を聞いてくれたんだよね」という良い行動も噂を通して知られます。
 
これは噂というシステムを使って他者の評価を共有しているのです。たとえば、「Aさんは義理堅い人だ」という噂と、「Bさんは底意地が悪いよね」という噂があった時、あなたはどちらの人と仲良くしたいでしょうか。AさんとBさんの両方が困っている時、どちらを助けたいでしょうか。Aさんと仲良くし、助けたいと思うのではないでしょうか。
 
そのため、人類は相手のお返しを特に期待することなく人助けをします。現代のように合理主義的な社会ではこのような人は「お人好し」に映るかもしれませんし、良い評判を立ててくれる人のことだけ助ければ良いと思っている人もいるかもしれません。しかし、そのような一貫性の無い行動はいつかばれます。昔の人は誰が見ていなくてもお天道様が見ていると言ったものですが、いつでも誠実である方が性格を使い分けるよりも結局は見返りも多いということなのかもしれません。
 
いずれにせよ、このようなお人好しの人情家であることはお返しを期待してやっているのではなく、ただ遺伝的に生まれ持っている特性を伸ばしているだけなのです。

助け合いは人類だけでは無い

ちなみに、助け合いは人類だけにみられるものではなく、複数の動物で観察されています。たとえば、チスイコウモリは群れで生活する夜行性の生き物ですが、餌である動物の血を獲得できなかった個体は他の個体から血を吐き戻して分けてもらうことが知られています。さらに興味深いのは、以前自分に血を分けてくれた個体に対して、別の機会に相手の血が足りていないと御礼と言わんばかりに血を分けてあげるのです。しっかりとお返しを出来ているのです。

助けることは実際にウェルビーイングを高める

ここまでは人間は助け合うことが出来る動物であるという説明をしてきました。相互繁栄的なウェルビーイングを達成できる道筋はあるということです。
 
では、実際に助け合いはウェルビーイングを高めるのでしょうか。もっと直接的に、ただ単に誰かに親切に行動するだけでも、自分のウェルビーイングは高まるのでしょうか。実は、心理学ではこのトピックは有名で何度も繰り返し実験が行われています。その結果、他者に親切にすると親切にした人のウェルビーイングが高まるのです。
 
誰かのために何かをすること、それは相手のウェルビーイングを高めるだけではなく、またお返しの形でいずれ自分のウェルビーイング高めてくれるだけでもなく、直接的に自分のウェルビーイングを高めてくれる妙薬なのです。

おまけ

ちなみに、何で他人に親切にするとウェルビーイングが高まると思いますか?実はひとつの興味深い話があります。それは、現代社会におけるウェルビーイングとされる喜びなどのポジティブ感情は、人類が持っている課題がうまく解決した、あるいは解決しつつあるというシグナルだからです。今回、助け合いは人類が遺伝的に持っている性質だというお話を最初にしました。言い換えれば、生存と子孫繁栄のために必要な課題であり目標なのです。誰かに親切にすることはこの目標に向かって上手く進めていることなので、ポジティブ感情という報酬が脳内で発生します。その結果、人は意識しなくても(報酬目当てで)再び親切にするという行動が採れるようになるのです。
 
このようなウェルビーイングの根源に関わるメカニズムについては、次の次くらいから説明したいと思います。

まとめ

生物は自己利益を最大化するように進化してきました。このように言うと助け合いなど必要ないように見えます。しかし、助け合いは集団生活の中で進化してきた人類にとって自己利益最大化に必要なツールだったのです。そして、噂や評判というシステムの影響で相手からのお返しを期待しないでも助けるという行動が採られるようになりました。このような人類にとって必要な助け合いや親切は、相手からのお返しが期待できなくても自分のウェルビーイングを高めてくれます。相互繁栄的なウェルビーイングは達成可能なのです。

あなたがウェルビーイングな人生を送れることを心から願っています。
 
 
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