二章 児童福祉から障害福祉へ 1 再始動:学生時代の問題意識を抱えて

6 研修:子供の権利
https://note.mu/welfare/n/n5f66c1e574c5


二章 児童福祉から障害福祉へ

1 再始動:学生時代の問題意識を抱えて

障害者と聞いてあなたならどのような印象を持つだろうか

私の場合は率直に言うと
「何をするか分からない人」
「何を考えてるか分からない怖い人」
「考えることが苦手な人」
という印象で、否定的に見ていた。

それでも、
私はそれまで働いていた児童の現場から離れ、
「障害」の分野へと転向することに決めたのだった。

なぜなら、目標であった学童の世界に飛び込み、
望む職場で働ける日々は間違いなく幸せだったが、
「もやもや」が大きくなっていったからだった。

「もやもや」の正体は、罪悪感にも似た感情だった。

大学の頃、児童養護施設で目にしたのは、
親と切り離されて生きる子どもたちで、
関わって感じたのは、
拭いきれない憤りのようなものだった。

私は自分にできることは何だろうかと考えていた。

でも、
自分一人が努力したところで何も変わらないという気持ちも、
心のどこかにあった。

私は一体何のために社会福祉士を取得したのか。
このままでいいのか。

そのような霧の向こうを掴むような感触が、
学童で働く中で立ち込めていたのだ。

そのようなもやもやが
自分の中でもう見過ごせなくなくなるくらい大きくなってきたときに、
知人から紹介されたのは、
グループホーム
(正式な福祉サービスの名前は『共同生活援助』というのだけれど、
これではイメージが伝わりにくいので以下グループホームと記載する)
で生活する、
知的に障害があったり精神の病気があったりする人たちの
支援を行う仕事だった。

ご飯を食べ、仕事や作業所など、日中は出かけ、帰宅すれば夕食を摂り、
入浴や洗濯などをして就寝をし、休日はゆっくりくつろいだりする。

グループホームは4LDの一軒家で、
利用者が一人ずつ居室として使っていた。

そこでの生活の流れは多くの人がするのとだいたい同じだ。

起床し、ご飯を食べ、仕事や作業があれば日中は外出し、
帰宅すれば夕食を摂り、入浴や洗濯をして就寝をする。

障害の程度や苦手得意も千差万別で、
「障害のある人はこれができない」と説明するのは難しい。

苦手さの種類を大雑把に言うと、文字の読み書き、計算、予定を立てる、
覚える、感情のコントロール、などがあるだろうか。

そういったことを支援者が生活を見ながら
困ったことがあれば話を聞いたり、入浴や洗濯を促したりする。

学童で子どもと関わり、
グループホームで成人の知的障害者と関わる。

この対比から感じたことは、
児童養護施設の実習を思い起こさせるものがあった。

学童の場合、
親がいて、帰る家と寝る場所があり、
一緒に誰かと過ごす場所がある。
こういう人たちにとっての日常とはいわば当たり前の生活だと思う。

グループホームでは、
親はいても不仲で関わりが薄かったり、
親の事情から一緒に住むことができなかったり、
物心がつく頃には施設にいて職員が親代わりだったりすることもある。
こうした場合、家族が身近にいるというのは、
きっと当たり前ではないのだろう。

そういう人たちの人生の物語を対面して聞いたとき、
学童とグループホームの利用者の境遇の差には既視感があった。

児童養護施設で実習をしていたとき、
「自分には何もできない」と思ったのだ。

ときを経て、
あのときの挫折感が、私をここまで連れてきてくれたのかもしれない。
今ならできるかもしれない。
という思いを持てた。

挑戦しようと思えたのだ。 

今までずっとかかっていた靄(もや)のようなものが晴れた瞬間だった。

これはグループホームと学童の両方を経験して分かったことなのだけれど、

「学童」での仕事は、
しっかり学べばどの福祉へも通用し得るということだった。

かつて言われた「誰でもできる」という意見は、
大半の相手が健常児であるからこそ、
門徒が広いことを意味しているのであって、
誰もが指導員としての素質を持っていることを意味したものではないのだ。

専門性も必要だし、健常児ならではの難しさだってある仕事だ。
職員数人で何十人もの児童を何時間も通して支援をするということが
簡単なわけがないのだ。

確かに学童で必要な専門性というのは、
介護や障害理解のような分野に特化したものではないかもしれない。

しかし、それは裏を返せば基礎に根差しているとは言えないか。

福祉の根源に通じ、稀有な福祉実践の現場ということではないのか。

ここで培える利用者への精神性は、どの福祉業界へ行っても、
通用すると思っている。

福祉という業界の中に確かに学童も位置しているという確信には、
分野を変えなければ、きっとたどり着けなかっただろう。

二つ返事で引き受けたグループホームでの仕事は、
最初の頃は意気込んでいて、夢中で働いていた。

勉強して、
考えて支援して、研修を受けて、
また考えての繰り返しで大変だったけれど、
グループホームが現場には一人で入る仕事だったこともあり、
やるしかないと思っていた。

2 知的に障害があることを踏まえて
https://note.com/welfare/n/n6c3c3597c9d5?magazine_key=m8d74f67f43fb

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