オンラインにおけるオンデマンド型授業のメリット

勤務校の属する自治体では、「新しい生活様式にもとづく学校再開」ということになり、6月からはいわゆる「通常営業」に戻ることになりました。これについては、いろいろと思うこともありますが、とりあえず、ここまでの間、続けてきたオンライン授業について自分なりに整理しておこうと思います。

勤務校のICT環境(現状)

本校で行ったオンライン授業は、G suite for Educationを活用したものです。国語科としては、その中でclassroomとformを中心とした組み立てをすることになりました(具体的な活用法については、別記事で)。このようにする理由としては、学校の設備面での弱さがあげられます。学校のLANが弱く、一斉に相互授業をすることができないこと、予算面でwebカメラがすぐに導入できないこと、生徒が来ない教室を除き、スペースがないために授業をする場所がないということ、そして教室そのものにICT環境が乏しく、教室での実施が難しいこと、などがあります。公立高校であれば、全国的に同様の事態が起こっているのではないかと推察します。

さて、このような環境ですと、自動的にオンデマンド型の授業ということになります。教員が発信したものを生徒が自分の好きな時間に見て学習する、というスタイルです。デメリットは、実施しなくても思いつくことでしょうから、実際に行ってみて感じたメリットをここでは述べます。

専門性の発揮

本校の私が所属する3学年の国語科は、3名編成です。とりあえず、受験が生徒は心配であろうということで、受験に対応すべく、現代文、古文、漢文それぞれについて動画を作ってアップしようということになりました。その動画作成について、3名で分担し、現代文担当、古文担当、漢文担当として割り振りました。あとでわかったことですが、実は、この3名はそれぞれ大学(院)時代の専攻が、現代日本文学、日本古典文学、中国文学であり、それぞれを専門とする教員が動画を作成することとなっていました。ちなみに、私は中国文学専攻で漢文の動画を作成していました。実際に走らせてみると、これが想像以上におもしろいことになりました。普段の授業では、お互いにすべてを見合うことは不可能ですが、動画では生徒に見せる前にすべてのものを3人でチェックします。そうすると、動画内容=授業内容について、必然的にそれぞれが意見を言うことになるわけですが、ベースとなるのが専門とする教員が作るということもあり、教材研究のレベルが上がるわけです。教材研究のレベルが上がっている状態なので、他専攻の教員からすると、学ぶところも多くありました。単純に、熱がこもるのでおもしろいという面もあります。一方で専門にしているがゆえに気づかなかったことに気づくきっかけにもなりました。たとえば、当然の前提としていることが実は教員レベルでも共有されていないことなどがあります。漢文学の場合、漢詩の授業で韻の話をするときに、私自身は、現代音でそろわない場合に韻目のことまで触れるのですが、韻目についてご存じない先生もいらっしゃったりしました(中文でなければ、やむを得ないのでしょう)。こうした教科の共有知の底上げにつながるという点がメリットの一つ目として挙げられます。

教材研究レベル向上

また、教材研究そのものについて言えば、普段の授業よりも精緻な教材研究を行うようになりました。分掌や部活動など、他の業務がないということもありますが、オンラインですと、生徒の反応が見えづらいため、普段より丁寧に、正確に授業を組み立てる必要があります。このため、普段の授業では勢いで通しそうなことでも細かく詰めていくことになります。その過程で、たくさんのことを調べ、考え、議論することにつながりました。教材研究そのもののレベルが向上する、ということがメリットの二つ目です。

生徒の反応

もうひとつ、先週から自主登校期間になったため、生徒がちらほら学校にくるようになりました。そのときにアンケートしてみると、「動画のほうがわかりやすい」という意見も生徒から出てきています。普段、50分でやる内容をコンパクトに10~15分をめやすに動画化しているので、エッセンスが抽出され、生徒の頭に入りやすいようです。また、生徒自身のペースで、動画を止めながら、あるいは戻りながら視聴できることがよいということでした。ある生徒は、「普段通りに戻っても、先生方が忙しいのでなければ、動画配信は続けてほしい」とも言っていました。

以上のように、オンライン授業の中でもオンデマンド型は意外にメリットがあることに気づきます。これを続けてみた結果、個人的には、従来型の学校に戻らない方がよいのではないかとまで思う部分も出てきました。それについては、別の機会に譲ろうと思います。

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