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【アーカイブ】夜の挿話4(最後のニュース)

闇は濃く、とろりとしていて、振り払っても振り払っても体にまとわりついてくる。
そういえば、風はずいぶん前に止んでしまったようだ。
あたりはただひたすら続く夜の闇。

この闇はどこまで続いているのだろうか。
手を伸ばしたそのすぐ先か、それともずっと先のほうか。
確かめようと踏み出した足に、地面を蹴る感覚はなく、
すべては闇に紛れていく。

それでも。
それでも、もうすぐ朝はやってくる。
闇は青く溶けていき、街は輪郭を取り戻す。
僕は、太陽の光が照らす新しい世界のことを知っている。
そして今、静寂の中からやってくる朝の気配をはっきりと感じている。
まだとても儚く、触れると消えてしまいそうな小さな朝の気配を
手のひらで包み、体全体で包み込むように体を丸めて眠るのだ。

君は今、何を思っている?
朝が来たら伝えたいことがあるんだ。

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