ワンアンドオンリーと書いて宇多田ヒカルと読む

もうタイトルに書いてしまっているが、宇多田ヒカルはワンアンドオンリーである。

宇多田ヒカルの前に宇多田ヒカルの予兆はなかったし、宇多田ヒカルの後もフォロワーはいたとしてもマネをしている人はいない。いや、マネしたくてもできないのだろう。メロディーも、歌詞も、歌い方も、リズム感も、声も唯一無二。そしてなにより、それほどの孤高の存在でありながら、大衆に染み込むポップさを異常なバランスで持ち合わせているという尋常でない存在。
しかもそのパフォーマンスを、弱冠15歳でデビューしてから、少しの休みはあったものの25年間トップランナーで出力し続けている。その間、すべての作品でリスナーに新たな驚きを与えている。短距離走のクオリティーで長距離走を駆け抜けている。

この驚異的なオリジナリティとヒットの再現性、例えるなら、音楽界の荒木飛呂彦か。いうまでもなく、荒木氏のマンガ「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズは強烈なオリジナリティで他の追随をゆるさず、その世界を何十年も突き進み続けている。しかしジョジョと違うのは、聴き手を選ばないということだ。ジョジョは自分も大好きだし商業的にも大成功しているマンガ作品であるが、絵柄が苦手で読めないという人は多い。

さてそんなワンアンドオンリーの宇多田ヒカルが、「EIGHT-JAM(旧関ジャム完全燃SHOW)」というテレビ番組でロングインタビューを受けていた。まだ前編しか見られていないが、すでに神回確定なので内容をまとめておく。多少、筆者の意訳が含まれる点はご容赦を。

◆ベストアルバムを作ったのは、25周年だから。25という数字はきれい。4分の1だし、5の2乗だし。点々で描くと真四角だし。

◆作品はノンフィクションのルポルタージュではないし、完全な創作でもない。じゃあ何かといったら、「SCIENCE FICTION(25周年記念ベストアルバムのタイトル)」だった。科学と文学が好きだし。

◆他人の素材をアレンジするのはほとんどやったことがない。切り貼りするのが楽しかった。

◆気を遣っているよねと言われてしまうと、そう言われないように気を遣ってしまう…

◆曲が先。曲を作っていて、モヤンとした中から「ここは"ーai、ーai"という言葉を載せたい」という子音・母音のイメージが先に出てきて、そこに歌詞をはめこんでいる。メロディーは筆みたいな感じで、止めたりはねたり太くしたり細くしたり。子音が出てくるぐらいで、どんな気持ちを表現したいかがみえてくる。何にも制約がなければなにげなく言葉を置いたかもしれないが、制約の中で探して探してようやくたどり着いた言葉は予想外で特別な言葉が見つかる。達成感がある。短歌みたいなもの。

◆歌詞を作るのがいつも大変。でも楽しい。こんなことを言えるのは、今、歌詞の締め切りを抱えていないからかもしれない。

◆作品づくりは釣りに似ている。プロで長くやってきているから、魚(アイデア)がいそうなところはなんとなくわかるけど、全然魚がいないこともあるし、ふとしたときに釣れることもある。日常生活をしていてもずっと魚を待っている感じ。

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