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Album [ I ]

こんにちは。
すっかり秋めいてきましたね。みなさまいかがお過ごしですか。


2022.10.10 自主制作アルバム「I」を発表しました。



「夏」「生活」「孤独」をキーワードに、アイリッシュハープ(レバーハープ)、打ち込み音源、歌唱、VOCALOID(初音ミクさん) で構成された 全9曲のアルバムです。

すべての曲にハープの生演奏を取り入れています。1曲目「序」と9曲目「跋」は物語のプロローグとエピローグをイメージしたハープソロ、他は(一部 初音ミクさんとデュエットの)歌入り曲になっております。

さまざまなジャンルの曲が詰まっています。アルバムのジャンル設定の時、単語一覧を見ながら悩み、結局”None(なし)”にしました。アルバム楽曲に使った素材や音源の種類を見てみたところ……フォーク、エレクトロニカ、アンビエント、カントリー、ポップ、ラテン、クラシック、民族音楽……
(´・ω・`)落ち着きがないな

……ひとまず「穏やかな」曲たち です。

YouTubeとSoundCloudにて、無料で全曲公開しております。
(以下リンク 再生リストより、順に聴いていただけます)


加えて本アルバムは「有料ダウンロード版」があります。全曲のダウンロード版に加え、楽曲のインスト、「標準時」ハープ伴奏+ボーカルver. 、歌詞カード(PDF,A4サイズ)、ジャケットのイラスト(PNG)が付属します。
こちらは販売サイトBOOTHからご購入いただけます。宜しければ是非。




収録曲紹介・歌詞

各曲を簡単にご紹介します。
アルバム全9曲の順番は、朝から夕、起床から就寝、の流れを意識しました。また、ハープソロ演奏から始まり、コーラス、(人間の)歌声、(VOCALOIDの)音声……という流れもあります。順番に聴いていただくのも、気になった曲から聴いていただくのも、おすすめです。

本人や社会の事情に縛り付けられている人たちの生活と孤独。
特別なことは何も起こらない、けれども大切な ある日の物語。

01 序 Prologue

短いハープソロ。夜明け時のイメージです。
弦に触れて止める音、ハープの(転調用の)レバーを上げる音、その他演奏中のかすかな音が含まれています。楽器そのものの音だけを録音できないのはもどかしくもあり、魅力でもあるなと思います。

02 くらし Life

ハープ・コーラス・打ち込みで構成された、ゆったりしたインスト曲。
朝の風景。刻む、映す、灯す。今日もくらしは続きます。

↓ 「くらし」をテーマに撮影・編集したMusic Videoもあわせてぜひ。
(余談:MVの最初の方に出てきた時計がこの撮影の数日後に動かなくなってしまいました。元々は母の生家にあったたいへん古い時計の、最後の瞬間を撮ることができたようです。今までありがとう)


03 サイダー Soda

サイダーの泡のように儚い別れの歌。
エレクトロポップ……?というのが適切でしょうか、整然としつつもキャッチーな空気をまとった曲です。ハープの音をサンプラーで録音してシンセとして使用しており、生演奏のハープとサンプラー音源が重なる不思議な味わいの曲になっています。他にも色々な音が重なっているのでイヤホン・ヘッドホンで聴くとより発見がある……かもしれません。
以下、歌詞を掲載します(08まで同じ形で掲載します)。

サイダーの泡がはじける音がやむまでは
君を想っていたかった

カセット巻き戻す音みたい、と
知らない時代の話
あれが最後、

毎日新たな話は尽きず
快い声に気が抜けていた

“きみはぼくじゃないし ぼくはきみじゃない”

不意の雷鳴
耳の奥で雨の報せが鳴った


時間は
過ちに気付いても巻き戻せないから
愛の深さを悔やむだけ

君を想うほどに
君にあげるものがなくなる
愛は伝わらないままで


サイダーの泡がはじける音を聞きながら
夜を越えるつもり

追いかけるには頼りない靴

こうして私も一粒の泡になるんだな

Soda (Hirono Ichii)

04 向日葵 Sunflower

「ひまわり」。このアルバムで最もポップで明るい曲。夏、近所に暑さでぐったりしながらもなんとか咲いているひまわりがあるのを発見し、書きました。夏真っ盛りの時期に聴いて頂きたい気持ちも、夏が終わった後に夏を思い出しながら聴いて頂きたい気持ちもあります。イントロの謎の音はハープの音を加工して作りました。

気配がやってくるとき
木々の影は長く伸びて
水面に風がきらめき
羽の音に振り向いたなら

ひなたに咲く
いのちあふれても 足りる ぼくら
いまにはじけては つづく向日葵さ
 
太陽に向き 立つ

夏の陽炎忘れてないだろう

ひらく君を待っている


突然咲くんじゃないよ
きみをつくったものも
きみがかかえたものも
全部詰まってるよ

太陽は痛いほど眩しい
目をそらし そむき しおれても
情熱は涸れない

ひなたに咲く
こころ つぶれても もどるように
なみだあふれても つづく日々なのさ

太陽の下で

夏の陽炎忘れてないだろう

ひらく時を待てばいい

Sunflower (Hirono Ichii)

05 風鈴 Wind Chime

アルバムの中間で ひとやすみ。
ハープと歌のみのシンプルな曲です。夏の真昼、窓に風鈴。
発音(演奏と歌唱)が人間に委ねられている分、ゆらぎの大きい曲です。夏の風が吹く様子を表現するため、多重録音とエフェクト(ディレイやリバーブ)を用いたサビにしました。
過去に「車窓」「主役」など、このタイプの曲を多く書いていました。これからも書きたいです。

眠い朝
子午線を越えて
ひかりは
黄昏に沈む

同じ景色を何度も
君越しに見たはずだった

軽やかでありたいけれど、
軽薄でありたくはない

Tシャツはひやり、肌にふれて
横たわる
夏景色

  ひかっては散る。

微睡んだ先に風鈴

風が止まり
音が残った

ひかる日々に
捧げた熱は冷めた

軽やかでありたいけれど、
軽薄でありたくはない

傷跡はじわり、肌を灼いて
眠り通す
真夏日

  ひかっては散る。

Wind Chime (Hirono Ichii)

06 夕焼 Sunset

打って変わって緊張感のある短調の曲です。「不良」という言葉で定義される様々なものがあるとき、対になる「良」とは果たしてなんでしょう。
アイリッシュハープはこのような曲調も得意としています。夕焼けが街を染めて燃えるように広がっている光景が 空間に広がるハープの残響のようだな、と思いながら作っていました。ちなみにパーカッションはハープの響板を叩いて録音し加工しています。ハープ成分がいろいろなところに隠れています。

煌々とガソリンスタンドの灯が連なり夜の始まりを告げる。
国道は同じ色の風を今日も運び夜の終わりへと消えゆく。

赤い空 遠くなり、 ……

ただこの道をひた走る。
夕焼け追うように。
いつか消えてく夢を見る。
炎に染まる街。

本当のあたしをはなしたあなたは「良」ですか。


遠吠えは誰に気づかれることもなく一日の終わりへと消えゆく。
刺すような怒声、
白く浮かぶ衛星、
あたしの夜の始まりを告げる。

赤い空 遠くなり、 ……

ただこの道をひた走る。
夕焼けから逃げて。
脆く崩れる夢を見る。
命は燃えている。

あたしのこの手をはなしたあなたは「良」ですか。

Sunset (Hirono Ichii)

07 標準時 feat. 初音ミク  Time Signal

Time Signalの日本語訳は「時報」なので日本語タイトルと一致していないのですが、これは「標準時」という言葉も「時報」という言葉も使いたい……とタイトルに悩んだ挙句、こうなりました。ミスではないということをお伝えしたかった

2020年に発表した曲をリメイクしました。ハープを録音し直し、コーラスを書き直し、オーケストラを追加しました。より厚みがでていると良いのですが……
↓リメイク前の「標準時」はこちら

宇宙との交信をイメージした曲です(こう書くとなんだか怪しさも出ますが、合唱曲などによくみられる 壮大なテーマ設定の一種だと思って頂ければ……)。冒頭の変拍子に始まり、「ずれ(タイムラグ)」を詰め込んだ曲になっています。宇宙は謎が多くて面白いですね。

「そのあたりの様子はどうだい、君の声を聴くには遠い」

宇宙からの声はそう問うて
電話口、確かめた

「このあたりは全部海よ、いま潜水艦の中なの」
ビルの間、電話ボックスから見上げた

(公衆電話は操縦桿)

声をください
青い夜、泳ぎ切る 酸素を満たして
生きるほど 不確かで
時間がわからなくなるの

話し足りない十円銅貨ふたりを引き裂かないで
電話口、かけ直す

声をください
青い夜、一滴 喧騒を冷まして
月を透かすグラシンの雲を破いて
星に帰るまでは
標準時のなかで暮らすわ

Time Signal (Hirono Ichii)

08 あわい feat. 初音ミク  “Awai”

「間」であり、「淡い」であり。
1日の終わり。眠るときのゆらぎ。ハープと歌の静かな曲です。

この曲は2つのバージョンがあります

①市井ヒロノ/初音ミク ツインボーカルver. (アルバム収録)


②初音ミクのみボーカルver. (ニコニコ動画「ボカコレ2022秋」参加曲)

同じ曲ですが、やや雰囲気が違います。聴き比べて頂くのも楽しいかもしれません。

清濁のあわいに たゆたう

 ただ在るだけの
 わたしでいいの?

再生をはじめる

明日はもっと声を出したい
寝静まる 遠くに花火の音
産声の無垢を忘れた喉が、空咳ひとつ

あなたになったって
あなたにはきっとなれないでしょう

寝静まる街に身を浸して

明日はもっと声をあげたい
寝静まる 遠くに花火の音
産声の無垢を忘れた喉が、泣く

"Awai" (Hirono Ichii)

09 跋 Epilogue

短いハープソロ。夏を越え、季節は秋へ。


タイトル [ I ] について

タイトルの候補を考えているときに、Identity、Idea、Isolation(このアルバムに出てくる人たちも世間から『隔離』された人だなと思い)、Imagination……などと単語を並べていて、全部「I」から始まるなあと思い、このタイトルになりました。

「私」のことを歌っている、事実ではないけれども嘘もない、そんなアルバムです。

ジャケット


アルバム [ I ] ジャケットイラスト

昔から幾何学模様が好きなので、四角形や円を散りばめたデザインにしました。住む街の川沿いに大きな病院があり 夜に川向こうから見るとぽつぽつと病棟に灯りがともっている その風景をイメージしました。

おわりに

一つの物語のようなアルバムを作ってみたいと思い はや数年、ようやく形にすることができました。

私は夏が好きです。夏の、静かで、鮮やかで、強かなところが好きです。体の弱い人間にとっては厳しい季節でもありますが、だからこそあこがれもあって、夏みたいに夏を生きられたらいいなと思うことがあるのです。

春も秋も冬も好きなので、今後も四季の音楽を作っていきたいなと思います。

お楽しみいただけると幸いです。


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