「ポジティブに変換を!」親の離婚を経験した星さんからのメッセージ
親の離婚を経験して大人になった人たちからの、子どもたちへのメッセージ。 第1回目の今日は、星宏夢さんにインタビュー。星さんは一般社団法人ひとり親支援協会・ひとり親交流サークル「エスクル」( https://skuru.site/ )でも活動されていて、『明朗快活!』という言葉がとっても似合う男性です。
ウィーズ(以下、ウ):まずは、ご両親が離婚されたときの状況を教えていただけますか?
星さん(以下、星):両親と4つ下の弟と4人で暮らしていたんですが、僕が9歳のとき、母親が出ていくかたちで離婚となり、父・弟・僕の3人暮らしになりました。住まいや学校が変わることはなかったです。
ウ:お母さんが家を出られる前は、星さんはご両親の関係をどのように見ていらっしゃいましたか?
星:そうですね……。当時の僕はまだ離婚という言葉をしっかりと理解はしていなかったのですが、喧嘩が多かったので「あ~、もうこの2人ダメなんだろうなぁ~」というふうに思っていましたね(笑)
ウ:実際に「離婚」となったときはどのような気持ちでしたか?
星:喧嘩が多かったことがとにかく嫌だったので、まずは喧嘩がなくなることにホッとしました。ただ、喪失感とあきらめも入った「ホッとした」って言うんですかね……ホッとした、というと良い感じですけれど、母親がいなくなっちゃったという喪失感と、仕方ないよねっていうあきらめの気持ちも同時に持っていましたね。
ウ:星さんは、お母さんとはどのような関係性だったのですか?
星:母との関係はよかったんですよね。子どもの目から見てもちゃんとした人、という印象でした。どちらかというと父の方が荒くれ物だったかもしれません(笑)
ウ:そうだったのですね。お母さんが出ていかれるときに何かお話はされたのでしょうか……?
星:実は「しばらく仕事で出かけるね、1~2か月くらい」って聞かされてたんですよ。でも僕は薄々、「お父さんと別れるんだなぁ」とか「もう帰ってこないんだろうなぁ」と勘づいていました。
でも、仕方ないよねっていう気持ちもあったから、割り切って「そうなんだ、いってらっしゃい」って言いましたね。逆に弟は「いつ帰ってくるの?」ってしきりに聞いていました。その度、父も僕もごまかしてましたね。本当のこと、言えないですよね(笑)
ウ:私も同じような経験があるので共感します。子どもながらに、下のきょうだいへ話すこと・話さないことを選びますよね。
星:そうでしたね。長男だったから、弟を不安にしてはいけないという思いが強かったです。父にも「これからお前がお母さん代わりだから」とも言われていました。自分より不安がっている人がいたら、自分は不安を隠そうとすることってありますよね。お化け屋敷に行って、自分より怖がっている人がいたら怖がれないみたいな(笑)
まぁ、そのおかげか、今も弟に会うと「お兄ちゃんのことを頼りにしていた」と言ってくれます。
ウ:いろいろなことを抱えて、しんどさもあったと思いますが、どんなことに辛さを感じていましたか?
星:大きく3つありましたね。
1つは、経済的に苦しくなったこと。もともと両親が共働きで何とかなっていた家庭でしたから、単純に稼ぎ柱が1人になったのはキツかったと思います。学校で必要なものを失くしたり、集金袋を受け取ったりしても、それを父になかなか言うことができなかったですね。
次に、父が精神的に不安定になることが多かったこと。特にお金が絡むことについてはイライラすることが多かったように思います。それに父子家庭への支援も全然なくて「男なんだから働けばいいじゃん」という捉え方を世間はしていましたからね。父にも味方がいなかったように思います。
最後は、学校行事で母が絡むものがあったときがしんどかったですね。母の日に手紙を書くとか、そういうやつです。弟もそれはしんどかったと話していましたが、彼はたまたま同じ境遇の友達がいたらしくて、その友達と手紙じゃなくて迷路書いてたって言ってました(笑)授業参観も父が仕事で誰も来ないことが当たり前だったので、そのうち学校からの案内も渡さなくなりました。渡して「行けない」って言われるのも嫌だし、父が申し訳なさそうにするのも辛かったので。
中学卒業するくらいまでは、この3つのしんどさを大きく感じていたように思います。
ウ:高校生になると、何か変化があったのですか?
星:高校生になって、バイトをし始めたのは大きかったですね。ある程度自分のことが自分でできるようになって、父にもお金を渡せるようになって、対等に話せるようになってきました。そうすると父のイライラの回数も減ってきたんです。
ウ:経済的な自立の一歩を踏み出すというのは大きなことですよね。バイトは家庭の外に目を向けて視野の広がる経験にもなるように思います。他に、「親の離婚の消化」に役に立ったことってありますか?
星:離婚の直後って結構ダメージが大きかったんですよね。ネガティブなことという印象が強くて、学校の友達に悟られちゃいけない、気をつかわせちゃいけない、って思っていました。母がいないのは世間一般からしてヤバいこととも思っていましたから、基本的に落ち込んでいました。その様子を見て、周りは心配してくれたけど、自分は親の離婚のことを悟られたくないから自ずと距離ができていったんです。
そのときの支えはテレビ。テレビっ子だったんですよ。そしたら、あるとき出演していたお笑い芸人が、辛い家庭環境をネタにしていたんですね。それを参考に「自分の家庭環境の笑えるポイントは?」とポジティブな要素を探すようになりました。
あと、両親が離婚せずに一緒に住んでいたころは、母がしっかりしていた分、結構時間とか厳しかったんです。でも父は男気溢れるタイプと言うか、情に厚いというか、「友達は大事にしろ」というのをよく言って自由にさせてくれました(笑)友達とご飯に行くと言ったら「行ってこい!」と言われましたし、家出少年がいると言ったら「うちに連れてこい!」と。友達に「うちなら遅くまでいられるよ!」と言えるのも、ポジティブポイントの一つでしたね。
ウ:ポジティブを探す……この問題以外でも大事な力かもしれませんね。
星:そうなんですよね。ある程度自由になったがゆえにしばらく考えずに済んでいた家庭環境を考える機会は、社会人になったときに再び増えました。営業の仕事に就いたので、自分のストーリーが営業トークになるんですよ。
ここでの先輩との出会いも大きかったように思います。お酒の場でどういう育ちかを話していたら「その努力の過程はすばらしい!」「他の人があまり経験しないことだし、価値のあること!」と言ってもらえたんです。そう捉えてくれる人もいるんだと思いましたね。そこから、両親の離婚を経験していて良かったなと思うことが増えました。
この話を表に出すようになったら「実は俺も親が離婚していて……」という人も周りに増えてきました。親の離婚はコンプレックスではなかったんだなと今になって思います。
仕事をしたことで、こうやってお金を稼いで家庭のことも仕事のことも考えて、色々親も大変だったんだろうなと親への感謝も芽生えてきましたね。母親代わりを担ったことも今の責任感に繋がっているように思うし、親も人間なんだなと言うのが腹落ちした時に、人間の弱い部分も肯定できるようになった。そして、そのうえでどう生きていくかということを考えられるようになったと思っています。
ウ:「親の離婚はコンプレックスではない」という言葉にとても励まされます。本当にそうですよね。今はご両親とはどのような関係性でいらっしゃるのですか?
星:たまに父とも母とも会っています。両親同士も会ったりしているみたいです。今になって「何であのとき喧嘩してたの!?」と聞くと、父親がやってきたことも無茶苦茶なんですよ(笑)お金も女性関係も(笑)
ウ:親のマイナス部分を聞くことは、今は負担ではないですか?
星:はい。自分は自分の生き方をしているから、別であると思っています。親が離婚したら自分も離婚するとか、DVをする親の子はDVをするとか、どうしても言われますけど、親のマイナス面が自分に引き継がれるのは100%ではありませんから。
でも、あえて意識しようともしているんですよね。なぜ負の連鎖が起こるのかを考えたり調べたりするようにしています。マイナス面を持つ人間が親であることも受け入れてうまく付き合う。親である以上、無視はできないですからね。すべて自分の糧に変えるんです。
両親には以前「こういう経験(親の離婚)をして良かったと思っているよ」と伝えました。そのときは泣いていましたね。
ウ:いろんな意味で「親は親」なんですよね。最後に、今親の離婚を経験し、悩む子どもたちにメッセージをお願いいたします!
星:ポジティブに変換できるようになったらいいなと思います。親の離婚で大変なこともたくさんあると思いますが、実は自分の努力で変えられるところも多分にあります。それを探してみてもらえたらなと思います。この経験をしているがゆえに誰かを救えたり、励ましたりできることも出てきます。そうすれば、より幸せな人生になると僕は思います。
「親の離婚を経験していてよかったかもしれない」みなさんがいち早く、そう思える瞬間や経験に出会えることを祈っています。
■星 宏夢 さん
・一般社団法人ひとり親支援協会エスクル・ひとり親の子ども担当
・外資金融機関業
・Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100015850140979
・一般社団法人ひとり親支援協会・ひとり親交流サークル「エスクル」HP:https://skuru.site/
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