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「すくいあげてくれたのは色々な経験」親の離婚を経験したおざきさんからのメッセージ

親の離婚を経験して大人になった人たちからの、子どもたちへのメッセージ。 第2回目の今日は、おざきゆりかさんにインタビュー。
おざきさんは、本当に優しく、元気な女性で、お話している最中もこちらが元気づけられました!

尾崎さんプロフ画

ウィーズ(以下、ウ):まずは、ご両親が離婚されたときの状況を教えていただけますか?


おざきゆりかさん(以下、おざき):もともと父・母・5歳上の兄・私……の4人家族だったのですが、私が小学校3年生のときに離婚しました。具体的な流れはわからないのですが、父が家を出て父方の母の家で暮らすようになってから、すぐに法的にも手続きしたんじゃないかなと思います。

父が出て行ってから『どっちと住む?』と聞かれたのですが、「う~ん、考える」と言って1年が経過しました。その間も父にはちょくちょく会っていましたが、最終的には「父と住む」と言って、小学4年生の時から兄は母と東京で、私は父と埼玉で暮らすようになりました。


ウ:お父さんと住むことを決断したのはどうしてですか?


おざき:小学3年生のときに聞かれたときは、「どっち」と選ぶと、選ばなかったほうの親と会えなくなると思ったんですよね。同年代で親の離婚を経験した子の話を聞いたり、ニュースも聞いたりしたら、だいたいそういうケースが多いじゃないですか。だから、聞かれてもごまかし続けていたんです。

離婚直後、母は離婚のダメージでうつ病になってしまって、常に負のオーラが出ていました。一方で父はすごく楽になったように自分の人生を生きていました。そういう姿をみて、私は父と暮らしたいと思っても、母が自殺未遂をしたり、心の不安定さを表す言葉を使ったりするのが怖くて、とても言い出せませんでした。それで、1年かかったんですよね。


ウ:なるほど……。離婚前はどういった状況だったのですか?


おざき:ほぼ毎日喧嘩状態でした。両親も気を使ってか、一応私たちが寝てから喧嘩をしていたのですが、怒鳴るから私も兄も起きるんですよ。私が泣きながら間に入って「やめて~!」と言うと、兄がサポートして「あっちに行ってような」と声をかけてくれました。兄にはかなり助けられたと思います。

別れる、というのはわかっていましたが、「離婚」という言葉ははっきりとはわかっていなかったように感じます。ダメかな、というのは感じていましたね。


ウ:実際にお父さんがおうちを出て行ったときには、どんな感情が強くありましたか?


おざき:とにかく寂しい気持ちが大きかったです。2人は確かに毎日喧嘩していたけれど、それでも私の父だし、それまで一緒に暮らしていた家族がいなくなるのは、心にぽっかり穴が開いたような感じでした。

やっぱり父と母って役割があるじゃないですか。うちの場合は、母がお世話をしてくれて、父が遊んでくれる、という感じでしたから、その片方がなくなってしまうという印象でした。

あと、母はしっかりしつけもしてくれていました。「手をあらいなさい」「帰ってきたらおふろにはいりなさい」といったことです。それを父がいつも見守ってくれていました。父がいなくなってからはそれが厳しいだけのように感じたんです。そういうバランスが保てなくなるのは子どもからすると負担でしたね。


ウ:片方の親が叱り、片方の親がフォローというのは理想の形としてよく言われることですよね。親が一緒に暮らさなくなると、そのバランスは確かに崩れがちですね。


おざき:そうなんです。あと、もともと私はアトピーと喘息を持っているんですが、アトピーはストレスと密接しているらしいんですよ。それで、親が離婚してから悪化したんです。父が出て行ったときは、精神的な負担が大きかったかなと思います。1年後に父と暮らすようになってからは、住まいも学校も変わるという環境の変化がありました。それらがストレスになったみたいです。中学生くらいまでアトピーの症状がひどい状況が続いたのも、辛かったことのひとつです。


ウ:心の不安定ももちろんしんどいですが、身体にでてしまうのも辛いですね。少しずつ落ち着いていったのは、時間の経過が大きいのでしょうか……?何か取り組んだことなどありますか?


おざき:そうですね、時間は必要でした。最初の1年間は車で父が家の前まで迎えに来てくれて、父と遊んだり、お泊りをしたりしていました。父と暮らしてからはその逆で、母とは絵を書いたり物を作ったりしました。でも、絶対両親は顔を会わせなかったんですけれどね(笑)そのあたりは工夫してうまくやっていたんだと思います。

私自身が努力したことってあんまりないんですよ。どうしたら解消できるか術を知らないですから。それにロールモデルもないから自分で時が過ぎるのを待つしかなかったです。でも、私は人の話を聞くのが好きなので、転校してからも友達が比較的すぐできたんです。それで、友達とふざけたり、バカ話したりしてやり過ごしたというのはありますね。


ウ:私も親の離婚と同時に転校を経験しているのですが、転校時に新しい学校のクラスメイトから「なんで引っ越してきたの~?」と聞かれませんでしたか?私は素直に「親が離婚して」と答えて、気まずい空気を流してしまった記憶があるのですが……。


おざき:あはは(笑)それ、聞かれますよね。私は最初に聞かれた人から「親の仕事で」と答えていました。というのも、転校する前に、以前の学校で小学校の先生との面談があったんです。小学校の先生が事前に「今のお友達には転校の理由をどのように伝えますか?」と母に聞いてくださり、母が「仕事の都合で、とお伝え願えますか」と言っていたのを聞いていました。小学校の先生は私にも「これからお父さんと暮らすことになったんだね」「新しい学校に行くけれども……」と話をしてくれました。『離婚』という言葉は使わずに向き合ってくれたのがよかったです。


ウ:なるほど……。それで、「親の仕事」という回答が準備された状態で転校先に向かうことができたのですね。他に、親の離婚について相談した人や話をした人っていますか?


おざき:私、相談って苦手なタイプなんですよ。親が離婚したことも言えなくて、ひとりで悩んでました。話せるなら話していいと思うんですけれど、私の場合は言わないからこそ、いつも変わらず友達が接してくれたのかなって思っています。言わないことで変わらない日常が守られた。そのことに本当に救われたんです。だから逆に良かったのかなって。

それでも「相談できないからダメなんだ」「相談できないから解決しないんだ」と思ったこともあります。でも、相談したって両親ふたりは戻らないですよね。結局願ったことはかなわないよねって言うひねくれた気持ちもあったかもしれません(笑)


ウ:「相談すること」の良さがよく言われますが、言葉にすることって難しいですもんね。いろいろとこれまでのことをうかがってきましたが、今振り返って、親が離婚してよかったと思うことはありますか?


おざき:はい。今は、親が離婚してくれてよかったとすごく思ってるんですよ。高校生くらいからそういう気持ちが強くなってきました。

高校生になって、ずっとやりたかった女子サッカーができるようになったのが大きかったです。中学校には女子サッカー部がなかったので。父の仕事もうまくいっていたし、母のうつ病も良くなってきて、母が秘書の仕事に就いたのもこの頃でした。今は母はこの仕事を『天職だ』と言って続けています。

思えば、父と母ってまったくちがうタイプなんですよね。だから、当初は良かったのかもしれないけれど、長く一緒にいてお互いを潰してしまうようになっていました。だから、別れてお互いがやりたいことをやっているのを見ては、良かったなと思います。

別れずずっと一緒にいるのを想像してみたことがあるんですけど、それってきっと「子どもがいるから」っていう理由になるじゃないですか。辛い親を見てるのは辛かったし、ゆくゆく別れるのはだいぶ前から私も分かっていたので、もっと早く「別れていいよ」って言えてたら、とさえ今は思うんです。親が早く元気になってくれた方が、私もすぐに受け入れられていたと思うから。

でも、この経過は家族全員に必要だったのかなと思います。


ウ:家族みんなが「これでよかった」と思えたのは、本当に素敵なことだなと思います。最後に、今親の離婚を経験して悩む子どもたちにメッセージをお願いできますでしょうか。


おざき:親の離婚っていろんなパターンがあると思うんです。だから、それぞれが自分の親の離婚について理解できることが乗り越えるために必要なことかなって思います。

そのために、いろんな経験をしてほしいです。自分が恋愛して初めて付き合った人と別れた時に「好きになった人と別れるってこういう気持ちなんだ」って知ったり、そういうひとつひとつの積み重ねから『親もこうだったのかな』と感じていくことができます。ぜひ、ひとつひとつ機会を生かしてがむしゃらにチャレンジして失敗したりする経験を積んでもらえたらと思います。

それって、気を散らすことにもなるんですよね。両親が別れた時、学校にいても一日中そのことばかり考えていました。遊んでいてもフラッシュバックしていました。でも、転校して友達ができたり、新しい習い事をしたりして、徐々に視野が広がりました。

成功している人にも、親が離婚した人って多いですよね。私もおかげで強くなったと思います。他者に対する感謝の気持ちも芽生えました。友達や兄もそうですが、両親の離婚のことを知っているのにいつもと変わらず接してくれた学童の先生にも感謝しています。そういう人たちがいるって幸せなことだなって。

だから、親が離婚したことを劣等感のようには抱えないでほしいなって思います!


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