見出し画像

増加する高齢者と医療需要 地域一帯在宅ケアで解決を|【特集】あなたの知らない東京問題[PART-3]

東京と言えば、五輪やコロナばかりがクローズアップされるが、問題はそれだけではない。一極集中が今後も加速する中、高齢化と建物の老朽化という危機に直面するだけでなく、格差が広がる東京23区の持続可能性にも黄信号が灯り始めている。「東京問題」は静かに、しかし、確実に深刻化している。打開策はあるのか——。

2108 東京問題ヘッダー

文・編集部(吉田 哲)

東京で増え続ける高齢者への医療対応は確実に増える。対処するには、限られた資源の分配と地域でもって支える体制の確立が必要だ。

 一極集中により東京都内で着実に増える高齢者。そこで高まってくるのが医療への需要だ。適切な医療資源の配分を行わなければ、崩壊への一途を辿る可能性もある。

 すでにその歪みは出ている。東京消防庁が新型コロナウイルス感染拡大前の2019年に救急搬送した65歳以上高齢者は38万3856人と、全体の半数以上を占める(同年救急活動の現況)。5年前からの推移を見ると、64歳以下は横ばいであるのに対し、高齢者は14%増と右肩上がりである。しかもその内容は、軽症および中等症が9割以上を占める。

 こうした状況について、都内を中心に24時間体制の在宅医療ネットワークを展開する医療法人社団悠翔会の佐々木淳理事長は「高齢者の119番通報のほとんどが、咳や足の痛みといったちょっとした体調の変化に関する相談だ。近くに連絡できる家族がいないことなどで不安に思い、通報してしまう。ただ、かかりつけ医がいれば改善する契機にできる」と指摘する。

 ひとたび救急搬送となれば、消防隊の出動や搬送先の病院への連絡、受け入れた病院は問診や治療を施し、必要とあらば数日間入院させることになり、多くの人の手がかかる。そして何より医療費が大きくなり、それは国民が税金によって負担することになる。

 こうした救急搬送の負担は、一端にすぎず、必要以上の通院や入院が医療提供体制を圧迫している。高齢者の絶対的な数が増え続け、医療需要の上がっていく東京だからこそ、急性期医療や長期の入院を前提とする医療から、健康に関するすべてのことを相談できる「かかりつけ医」を中心とした在宅医療を基本とするシステムへと移行することが求められる。

東京都の医療需要は上昇を続ける

2108_sp1_P3_図

(出所)日本医師会「地域医療情報システム」を基にウェッジ作成
(注)2015年の国勢調査に基づく需要量=100として指数化

ここから先は

3,153字 / 1画像
この記事のみ ¥ 200

いただいたサポートは、今後の取材費などに使わせていただきます。