コロナ感染と相似形 生活インフラを脅かすIoT攻撃|【特集】日常から国家まで 今日はあなたが狙われる[Interview1]
いまやすべての人間と国家が、サイバー攻撃の対象となっている。国境のないネット空間で、日々ハッカーたちが蠢き、さまざまな手で忍び寄る。その背後には誰がいるのか。彼らの狙いは何か。その影響はどこまで拡がるのか──。われわれが日々使うデバイスから、企業の情報・技術管理、そして国家の安全保障へ。すべてが繋がる便利な時代に、国を揺るがす脅威もまた、すべてに繋がっている。
あらゆるものがネットにつながる時代。入り口のセキュリティーが弱いとどうなるか。IoT機器への攻撃を研究する第一人者が警告する「無症状患者」の怖さとは。
WEDGE
編集部(以下、──) IoT機器への攻撃動向を調べる実験とはどのようなものか。
吉岡 ルーターやカメラといったIoT機器にパスワードをかけないなど、わざとセキュリティーを脆弱にしておき、これらにどのような攻撃が仕掛けられるかを観測している。この仕組みを「ハニーポット」と呼んでいる。
この実験は世界の研究機関の中でも先駆けで、2015年に開始した。6年間で約17カ国の国・地域に設置し、これまで20万件を超えるマルウェア(悪意ある不正なプログラム)検体を収集した。囮として置いたIoT機器を攻撃者たちが遠隔操作したり、それを踏み台に別の機器への攻撃に使用したりしてくる。
──IoT機器への攻撃の傾向は変わっているのか。
吉岡 大きくは変わっていない。IoT機器類への攻撃として有名なのは、「Mirai」と呼ばれるマルウェアを用いたものだ(編集部注・16年、米国の20代の3人組が作成したマルウェア。遠隔操作できるIoT機器類を60万台も支配下に置き、DDoS攻撃〈大量のデータを送りつけてサーバーに負担を与えて妨害する攻撃〉を行った)。
この件で犯人は逮捕され、以降大きな被害が出ていないので、報道もされないし、話題にもなりにくい。ではIoT機器への攻撃がなくなったのかというと、決してそうではない。新型コロナウイルス同様、「変異種」がたくさん出ている。実際、・・・・・・・
いただいたサポートは、今後の取材費などに使わせていただきます。