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小さなことからコツコツと 自治体に学ぶ「歳出入」改革 |【特集】破裂寸前の国家財政 それでもバラマキ続けるのか[COLUMN2]

日本の借金膨張が止まらない。世界一の「債務大国」であるにもかかわらず、新型コロナ対策を理由にした国債発行、予算増額はとどまるところを知らない。だが、際限なく天から降ってくるお金は、日本企業や国民一人ひとりが本来持つ自立の精神を奪い、思考停止へといざなう。このまま突き進めば、将来どのような危機が起こりうるのか。その未来を避ける方策とは。〝打ち出の小槌〟など、現実の世界には存在しない。

2022年1月号表紙画像(1280×500)

住民のために知恵を絞って汗をかき、ひたむきに「歳出入」改革に取り組む地方自治体の取り組みをリポートする。

文・編集部(友森敏雄)

 財政赤字を減らすには、歳出を減らすか歳入を増やすしかない。「塵も積もれば山となる」のごとく、努力を続ける地方自治体の取り組みを取材した。

見えない水道管を
自前で見える化

 福岡県京都郡苅田町かんだまちは、北が北九州市に面する人口約3.7万人の小さな町だ。この町の水道工務担当職員4人が配水管242㌔メートル、水道メータ約1.4万件など、「水道管路マップ」を紙データ(アナログ)からデジタルデータに約2年かけて置き換えた。

水道管路マップ

現場からでも確認できるようになった苅田町の「水道管路マップ」
(KANDATOWN)

 突発的な漏水事故などが起きて現場に向かった際には、埋設物の状況が確認できないため、いったん役所に戻る必要があったが、デジタル化によってスマートフォンから現場で確認することができるようになった。このような諸々の作業時間の短縮で、直近4年間(2016~19年)の推定人件費7600万円の削減を実現した。

 このデジタル化を外部委託していれば、4000万円もの見積もりが上がってきたことから、費用削減はトータルでは1億円を超す。苅田町の水道事業費用(21年度)は10億円で、10%超の歳出削減効果があったことになる。

 苅田町のような給水人口5万人未満の水道事業者は日本全体では68%を占める。小規模事業体では、技術系の職員は平均して5人以下。水道事業は公共性の高い事業ではあるが、基本的に水道料収入の範囲内で予算を組む必要があるため、必要であっても人材を増やすことは困難だ。

 1951年(昭和26年)から水道の布設が始まった苅田町には、紙データの水道管路マップ24枚(縮尺2万5000分の1)と、管路が布設された際の工事設計書1000冊超があった。「以前からデジタル化の話はあった。しかし、どうしても費用がかかることがネックになっていた」と話すのは、水道工務担当係長の佐村有人氏。「これまでも紙データでやってきたことだし……」と、諦めムードが漂うなか、「それなら自前でやってみよう」と、佐村氏が立ち上がった。

 地図の中に情報を書き込むことができる「地理情報システム」(GIS)に、配水管などの膨大なデータを、わずか4人で、地道に入力していくという、まさに気の遠くなるような作業だ。

 2年の入力期間を経て、マップのデジタル化を完成させた。これにより、町役場の窓口に設置された端末で誰でもアクセスできるようになり、夜間、休日はもちろん、水道関連事業者などは、登録すればスマホを利用して実際の工事現場からでもマップの閲覧が可能になった。

 さらに、…………

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