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トンネルのこっち側 ~雪国雑記1~

                 序

トンネルを抜けるとそこは雪国だった。「雪国」を読んだことのない人でも知ってる有名な書き出し。実際、冬に電車や車でトンネルをくぐって同じことを感じた人も多いだろう。
冬にスキー場に来る人はそれぞれの思いを持って訪れ、そしてまた自分の住む場所へと帰っていく。いわば非日常の空間なのだろう。
でも、トンネルのこっち側の人、訪れる人の非日常が日常の人は存在する。
たまに訪れる人には分からない生活や時の流れがある。

スキー場のそばで生まれ育つた僕は冬に関して、季節のとらえ方が一般的な人と違うかもしれない。スキー場の始まりが冬の始まりでスキー場の終わりが冬の終わり。はっきりした線引きがある。                      もちろん雪が降り始めた時には緩やかな冬への始まりは感じる。そして冬の終わりへの始まりは、スキー場の営業終了の1、2週間前になるナイター営業の終わりだ。                            家から歩いて5分足らずのスキー場ではナイター照明が明るく山を照らす。それは遠くからでもシンボルのように照らし出されて見える。
ナイター営業が終わると、夜、空を見上げても山は元の黒い闇になる。ああ、冬が終わるんだ。という気持ちになり、長くなった夜にそのシーズンの出来事が思い出される。

スキー場を訪れる人は減り、昔の賑わいは無くなってきている。要因はいろいろあると思うが時代の流れなんだろう。
昔のことをこの頃思い出すのは静かに終わっていく予感がそうさせているのかもしれない。それならいっそ思い出したものを少し書き留めておこう。

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