H.W.D【三橋雄斗】
2/14のバレンタインデー、ひかりちゃんはいつもより豪勢な料理を振る舞ってくれます。
僕が、甘いものがあまり好きではないので、その代わり。
今年は煮込みハンバーグでした。
美味しすぎて秒で食べてしまい、『美味しかった』という記憶しか残っていません。
それから1ヶ月。
先日、3/14のホワイトデー。
僕は、何をあげたらいいかと頭脳の中の『ひかりちゃんの発言フォルダ』を探り、答えを導き出しました。
そういえば、商店街にあるケーキ屋さんのケーキが美味しそうだと話していたことがある。
https://note.com/wed2012/n/n861b9c9b1fa6
↑まさにこの話。ケーキの下に敷いてある紙が銀紙なのです。
最近は、なかなか見ないよね。美味しそうに見えるし、実際美味しいのでしょう。
僕はすぐにバイクを走らせ、そのケーキ屋さんへ。
ホワイトデーだけあってか、男性客が数人並んでいました。
皆、シュッとしていてエリートっぽい。
奥さんや彼女を大事にしそうな雰囲気が滲み出ている。
やはり、デキる男はこのケーキ屋さんに集まる。
僕もその一人にカウントしても良いだろう。
そんなことを考えていると、僕の順番に。
並んでいるケーキは全てキラキラしている。銀紙が敷いてあるからだ。
ケーキに見惚れていると、店員さんが「ご注文はいかがなさいましょう」
そこで僕は気付きました。
今までケーキ屋さんでケーキを買ったことがないことを。
誰かが買ってきた物を頂いたことは多々ありますが、自分からすすんでケーキ屋さんへ出向いたことがない。
そして、甘いものにあまり興味が無いため、ケーキに対する知識が乏しいのです。
そのため、何を注文したらいいか分からず、
困った僕は店員さんに、
「オススメはなんですか?」と尋ね、
「オススメですと、○○と○○ですね!」
と優しく答えてくれました。
「じゃあそれください!あとこれとこれも!」
と計4つ注文し、注文でのもたつきを取り返すかのように、お釣りが少なくなるようにスマートに会計しました。
そして帰宅し、バレないように冷蔵庫の奥へ入れました。
夕飯の後、僕は「ひかりちゃんの食器も俺が流しへ持っていくよ」と、
自然な感じで台所へ。
冷蔵庫の奥からケーキの箱を取り出し、テレビを見ているひかりちゃんの前に置いて、
「ハッピーホワイトデー」
と、箱を開封しました。
「銀紙のケーキだ!すごい!」
と喜ぶひかりちゃん。
ホワイトデー大成功。全国ホワイトデートーナメントがあれば、ベスト16には入っていたでしょう。
ひかりちゃんは「4つあるけど、どれ食べたらいい?」と聞いてきたので、
「全てひかりちゃんのだよ、好きなのを食べな。余ったやつは俺が頂くよ。」
ホワイトデーの発言としては完璧だと思う。
何回にも渡るホワイトデーの経験が活かされている。
思えば、失敗もたくさんした。
でも、その失敗があったからこそのこの発言だと思う。
ひかりちゃんは、「迷うなぁ、あ、このケーキ美味しそうだな、何のケーキ?」
と尋ねるので、
得意気に「それはねえ」と答えようとしました。
しかし、僕の完璧なはずのホワイトデーがそこで崩れ始めたのです。
「えーっと…」
ケーキの名前を完全に忘れてしまったのです。
名前どころか、何を使ったケーキなのかさえ忘れてしまいました。
4つのうち2つを店員さんに選ばせ、2つは目についた物を選んだため、
僕の頭脳の中には『ケーキ』のフォルダが保存されていませんでした。
僕は苦し紛れに、「食べてみたらわかるよ」
と意味深に答えてしまいました。
「何がわかるんだ?」
とひかりちゃん。
「とにかく食べてみて!」
と言うしかない。
ひかりちゃんは、不思議そうな顔をしながら、ケーキを一口。
すると、
「美味しすぎる!なにこれ!」
と、とても喜んでくれました。
「ね、美味しいってことが判ったでしょう」
ケーキが美味しかったから誤魔化せた。ありがとうケーキ屋さん!
そう思っていましたが、
「あんた何のケーキを買ったか忘れたんでしょう。お見通しだよ。」
トホホ、ひかりちゃんにはかなわないや。
【相方へ】
かしこまりました。しかし、私も忙しいため、忘れてしまうこともあると思います。
そのときはご容赦くださいませ。
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