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IATAレポート;第1回World Sustainability Symposiumを開催

IATA(国際航空運送協会)はこのほど、スペイン・マドリードで第1回World Sustainability Symposium(WSS)を開催した。

このシンポジウムは、2050年までにCO2排出量をゼロにするという航空業界の公約を達成するために必要な行動に焦点を当てたもので、航空・サステナビリティ・技術・金融の各分野から450名以上の専門家などが参加し、以下の7つの主要分野において議論が進められた。

●持続可能な航空燃料(SAF) を含む、2050 年までに実質ゼロ排出を達成するための全体戦略
●政府と政策支援の重要な役割
●サステナビリティ施策の効果的な実施
●エネルギー転換への資金提供
●排出量の測定、追跡、報告
●CO2以外の排出削減への取り組み
●バリューチェーンの重要性

このうち、航空業界で脱炭素の「切り札」とされるSAFについて、需要は高いが供給が遅れており、必要なレベルまで拡大するには大きな課題が残っているとした。解決策として、①生産にインセンティブを与える政府の政策、②SAFの生産方法と原料の多様化、③再生可能エネルギー生産からのSAF生産量の一貫性を保証するグローバルな枠組み、④生産拡大の投資誘致、などが挙げられた。

このほか気候変動の緩和策として、水素や電気を動力源とする航空機や、機体・エンジン技術の継続的な効率改善なども検討された。

IATAは21年、温室効果ガスの排出量を2050年に実質ゼロとする目標を賛成多数で採択、22年にはICAO(国際民間航空機関)でも同内容の長期目標を採択しているが、この公約は、明確な最終期限を設定した一方で業界レベルでどのように進捗状況を監視・追跡するかについては具体的な計画が策定されていない。WSSでは、公約に向けた進捗状況を正確に追跡するために必要な、一貫した方法論と報告方法についても検討するとしている。

IATAでは「航空業界へのインセンティブと支援を提供する戦略的政策が、航空業界のネットゼロへ移行するための鍵になる」としており、脱炭素化目標を達成するために必要な枠組みを作るには、政府と業界関係者の協力が不可欠との見解を示した。

IATAのマリー・オーウェンズ・トムセン持続可能性担当上級副会長兼チーフエコノミストは、「WSSの目的は、50年までにネットゼロへの移行を加速させるための具体的な行動領域を特定することだ。困難な課題ではあるが、個々の行動だけで解決策を打ち出すことはできない。また、あらゆる面で同時に前進する必要があり、そのためには業界のあらゆる部分を横断する独自の協力が必要となる」とした上で、「航空業界のネットゼロに必要なすべての意思決定者がアイデアを出し合い、解決策を議論することが重要だ」と述べた。

同シンポジウムでは、ネットゼロへの進展を加速させ、最終的にはエネルギー転換を可能にしながら、必要なコストと投資の一部を軽減するために、金融と政策が果たす重要な役割について深く掘り下げていくとした。

2023年10月11日掲載

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