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カタール航空とドロナミクスが世界初の貨物ドローン・インターライン契約

世界屈指のフレイター運航数を誇るカタール航空カーゴ(本社:ドーハ)と、ドローン貨物機専門の航空会社ドロナミクス(本社:ロンドン)の両社は11月29日、世界で初めて一方がドローン貨物機運航による相互接続インターライン契約に調印したと発表しました。

インターライン契約に調印したドロナミクス共同創設者兼CEOのスヴィレン・ランゲロフ氏(左)と、カタール航空カーゴ社のエリザベス・オウドケルク貨物販売・ネットワーク計画担当上級副社長。

2014年にブルガリア出身のコンスタンチン・ランゲロフ氏、スヴィレン・ランゲロフ氏の兄弟によって設立されたドロナミクスは、この23年6月に同社の大型ドローン貨物機である“ブラックスワン”の初飛行を成功させ、世界初のドローン貨物機運航専門の航空会社として名乗りを挙げた新興企業です。
すでに同社はEU関係当局からの域内飛行ライセンスも得ているほか、ほかの国際航空会社と同様にIATAやICAOの指定コードも取得してますし、提携航空会社とのシームレスな貨物予約を可能にするエアウェイビルも発行できるのですから、もうドロナミクスは立派なフレイター・エアラインと言って良いかもしれません。

そのドロナミクスの主力機“ブラックスワン”ですが、これまでアマゾンやUPSほかが開発してきたような小型で小さなカートンを1個だけ運ぶというようなドローンとは次元が異なり、なんと1回の積載量が350kg、飛行距離が2500kmというケタ外れの大型・長距離飛行のドローンなのです。
重量では350kg積みですが、容積のキャパ的には3.5立方mなので、DHLやUPS、フェデックスなどが使っている配送バン1台分とほぼ同じぐらいと考えていいですから、スペース面で見ても結構な利用価値ということになりそう。

大型・長距離飛行が特長のドロナミクス主力機“ブラックスワン”

同機の飛行距離にしても、2500kmと言えばヨーロッパ全域をカバーできる距離ですし、もっと分かりやすく言うと大阪から香港ぐらいの距離を飛べるというのですから、これはもうドローンの範疇を超えているとさえ言えますね。CO2排出量も、通常の貨物機利用と比べると最大60%削減されるということです。

今後、カタール・カーゴとドロナミクスの両社はそれぞれの路線サービスを相互利用する形で、貨物配送ネットワークを拡大していくことになるでしょう。
いま分かっているのは、ドロナミクスのドローンポートがあるギリシアのアテネを基点に同国の北部工業地帯や南部の島々を結び、アテネでカタール・カーゴのネットワークに接続すれば、アジアや中国、米国などの遠隔地にも迅速に輸送でき、その逆も可能というもの。
近い将来、同ドローン基地をもっと世界的な主要空港ハブに近く、かつ多く設置すれば扱い量は飛躍的に伸びることでしょう。

対象貨物としては医薬品、食品、郵便、小包からスペアパーツに至るまで可能性は多いのですが、やはり一番の狙いは電子商取引(EC)貨物でしょうね。いま、世界の貨物航空会社が最も関心を持っているのが、この右肩上がりの成長分野ですから。ドロナミクス機材のキャパと飛行距離、柔軟性がちょうどEC物流に対応しやすい範囲と思われます。

まさに「空飛ぶ配送バン」といった感じの“ブラックスワン”(ドロナミクスHPより)

「空飛ぶ配送バン」としてのドロナミクス機材の利用価値は高いためか、提携企業にDHLやヘルマンなどといった物流会社が多く、つい今秋10月にはドバイ本拠のエミレーツ・ポスト・グループと郵便・小口貨物の配送でドローン導入の検討を始めたことも、そうした分野での将来性を物語っているようです。カタール・カーゴは今回、面白い会社に目をつけてインターライン契約したと言えるでしょう。

2023年12月5日掲載

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