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アメリカン航空;世界最大の名に恥じず23-24年は50本の新規路線を追加

世界最大の航空市場と言えば、みなさんご存じのように圧倒的な規模を誇る米国市場ですよね。近年は航空市場としても台頭する中国が肉薄していますが、まだまだ首位アメリカの座はコロナ禍を経ても揺るぎそうにありません。
 その米国では今夏、ほぼコロナ前に等しいほど高まった国内の航空旅客需要をバネにして、一気に米大手エアラインが活気を取り戻し、航空路線と便数を急回復させています。

中でも意欲的なのが、世界最大の航空会社と言われるアメリカン航空(AAL)でしょう。発表によれば、同社はこの2023年中に新たに42路線を開設済み、あるいは開設予定にしています。さらに来24年にも、「いまある計画だけで」デンマークのコペンハーゲン、伊ナポリ、仏ニース、墨ティファナのほかバハマ、ジャマイカ、さらに国内でも相当数の新規路線を追加する予定なのです。
いまやAALネットワークは世界350都市に広がり、同社機で乗り換えなしで直行できる空港も米国勢ではトップの93拠点空港に及んでいますから、トップの地位を譲りそうにありません。

AALのハブ空港ダラスフォートワースには同社機材が集中している

特にAALが誇る米国の拠点ハブ9空港(ダラスフォートワース/マイアミ/ロサンゼルス/オーランド/ニューヨーク/フィラデルフィア/フェニックス/ワシントン/シャーロット)から、メキシコ、カリブ海諸国や中米・南米諸国を結ぶ便については、この冬季スケジュールにおいても最多の路線・便数を誇っていると、同社では自画自賛しています。

この旺盛な路線開設・増便意欲を支えるためには、当然、かなりの規模の機材整備が必要になりますよね。実際、AALは2013年から本23年までの10年間で、なんと600機以上の新造機を導入しているというのですから驚くじゃありませんか。
いちばん最近では、昨22年にB787-8を9機、A321neoを24機(本23年にもう2機プラス)受領したそうで、今年中と来24年には、もう4機のB787-8と11機の737MAXが入ってくる予定とのこと。

今後の予定でハッキリしているのは、本23年から5年後の28年までに、A320neoシリーズを64機、B737MAXシリーズを80機、787シリーズを30機、エンブラエル-175型機を11機の計185機を受領する計画があることです。
さらにさらに、発注残と今後5年間の就航予定機材とを合わせると150機以上が導入ラインに乗っているというのですから、スゴいとしか言いようがありません。

この新機材の中で狭胴型機やエンブラエル機が目立つのは、旺盛な需要が戻ったどころかコロナ前以上に高まりつつある国内地方路線や近距離国際線の旅客デマンドをすくいあげる狙いがあるためでしょう。事実、AALのロバート・アイソムCEOは最近、米航空専門メディアのインタビューに応えて、「まだAALサービスが行き届いていない米国の小都市に戦略的な重点を置いている」と強調していましたから。

子会社アメリカン・イーグルのエンブラエル機は地方空港を結ぶ路線で活躍中

でも一方で、同CEOは「アジアへの路線拡大は慎重に(選択的に)行っていく」との姿勢も示しています。AALのアジア路線では東京や上海への復活を果たしましたが、まだ限定的な感じは否めません。その理由として同CEOは「アジアでは日本航空やカタール航空、カンタス航空といったワンワールドの素晴らしいパートナーがいるので、そのネットワークを十分に活用できるからです」と述べています。
また、AALは米南部や東岸のハブ拠点は強いのですが、西海岸ハブはロサンゼルスひとつで、それほど大きな規模ではないことも、自社でのアジア展開を難しくしているとのことでした。

大西洋線並みとか、あるいは中南米カリブ海並みにとは言わないまでも、もう少しアジア向け自社路線を拡大してもよさそうなのですが、実は、そうすることがAALにとって簡単ではないもうひとつの理由があったのです。アイソムCEOは、それが「パイロット不足」であることを認めました。
「パイロットの制約のため、機材があるのにいくつかの路線を復旧させるのが困難になりました。当社が19年当時の業績に戻っていない理由のひとつです」とアイソム氏は告白しています。 「パンデミックから抜け出した多くのパイロットを訓練する時間が必要だった」と残念そうな表情を浮かべたのでした。
コロナ禍による航空業界への負の遺産はまだ続いていたのですね。

でも、AALに限らず、第2位のユナイテッド航空も、第3位のデルタ航空、さらには米国内線に限っては最大シェアを誇るサウスウエスト航空も、みな国内外の航空路線について積極的に路線新設・増便へと動き出しています。
その背景には、打ち続くインフレに見舞われても相変わらず衰えることがない米国内景気の良さがあります。そのため秋や冬のシーズンに向かって、米国民の旅行熱はさらにどんどん高まっているそうで、もうひとつ不景気な日本から見ると実にうらやましい限りではありませんか。

2023年11月7日掲載

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