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平野ロジスティクス :成田・羽田にトレーラー置場、車両増強も

航空貨物の空港間OLT 輸送(保税転送)のリーディング・カンパニーである平野ロジスティクス。同社は長引くコロナ禍の中、アフターコロナを見据え、事業基盤の強化をコツコツと進めてきた。昨今、羽田・成田を中心に日本発着の国際便が戻りつつあるどころか今夏には急増する見込みで、それに伴い空港間OLT輸送も増える。ここでは、その需要増に応えるための同社の戦略に迫る。

 平野ロジスティクスは今から38年前の1985年、航空貨物用の96インチULDの空港間輸送サービスに国内でいち早く着手した、航空貨物の空港間OLT輸送(保税転送)のパイオニアだ。航空機に用いられる貨物は、基本的に世界共通規格サイズのコンテナやパレット(ULD)に積み込まれる。パレットには幅88インチ(約2m24cm)、96インチ(約2m44cm)などの規格があるが、国際的に多く用いられているのが96インチULDである。
 しかし、日本の道交法では車両の幅が2m50cmまでと定められているため、当時のトラックの内寸幅は2m30~40cmしか取れなかった。そのため、96インチパレットを輸送する際は、パレットから貨物を降ろし、わざわざバラにしてトラックに積み替えていたという。その改善を図りたい航空会社の依頼を受けた同社は、袈装メーカーと共同で96インチULDをそのまま搭載できる日本初のトラックを開発したのだった。
 車両の側面壁を限界まで薄くし、強度を保つために完全な箱タイプとして、ぎりぎりの幅でも貨物を出し入れできるよう、フロアに搬送用ローラーヘッドを搭載して荷役作業性を高めた通称“96(クンロク)車”を世に送り出したのである。その96車がいまや業界全体に普及し、同社でも現在主力として運用されているわけだ。
 さらに平野ロジスティクスは、次世代の“96車”として、2012年夏に96インチULDを5枚積めるフルトレーラー“+2”を投入、続いて翌2013年初めには同4枚積めるセミトレーラー“+1”を導入したのである。その後も、+1と比べて積載量・容量を拡大した“+1α”、大型トラックよりLD3コンテナで7台多く積めるダブルデッキ・セミトレーラー“+7”、さらに+7に改良を加えて8台多く搭載できる“+8”といった具合に、計5種類のトレーラーを立て続けに開発している。現在は、トレーラー60台、トラック110台を運行中だ。

空港間輸送の一層の効率化図る

 さて、2020年に始まった新型コロナ禍によって、平野ロジスティクスの事業環境も様変わりした。本来、20年春からは羽田空港の国際線発着枠が拡大される予定だったが、新型コロナの影響で航空各社が新規就航を相次ぎ延期せざるを得なくなり、成田~羽田間のOLT増加を見込んでいた同社も、目論みをくじかれてしまったのだ。コロナ禍により航空各社による就航路線が激減する中で、成田~羽田間のOLT輸送はほぼなくなった。しかしその一方で、航空ネットワークがより制限された中部/関空/福岡などから成田への空港間OLTの長距離輸送が急増し、その需要に応えるべく大車輪の活躍を見せる。
 そして現在、最悪期から徐々に日本発着の旅客便が戻りつつあるときを迎えた。国土交通省によると昨2022年10月30日から始まった国際線の冬ダイヤでは、日本を発着する旅客便は、11月5日までの1週間で1920往復と、2021年の同じ時期と比べ3.2倍に増えた。
 入国者数の上限が撤廃され、個人の外国人旅行客の入国も解禁されるなど、水際対策の大幅な緩和を受けて増加した形だ。2023年夏期にはさらに国際線の便数が増えることが予想され、それに伴い成田~羽田間のOLT輸送量も急増する見込みだ。このような状況の中、同社では成田空港の南部貨物地区と羽田空港の国際貨物地区の一角に、それぞれトレーラー(台車)の専用置場を確保し、輸送量アップに対応すべく準備を進めている。

成田空港内のトレーラー専用置場。ヘッドの付け替えを行い、
施設混雑によるドライバーの待機時間の短縮を図っている

 同スペースに置かれたトレーラーに貨物を搭載し、積み込みが完了したトレーラーを適宜、トラクターヘッドがけん引して輸送するのが狙いで、貨物を降ろした空のトレーラーの待機場としても利用される。成田→羽田、羽田→成田は、トレーラーに貨物を積んで行ってもすぐ降ろせない。羽田については東京国際エアカーゴターミナル(TIACT)の施設の混雑で、ドライバーの待機時間が3時間になることもあるという。
 これから東京(羽田・成田)発着の旅客便が順次再開していくことで、当然、貨物量はアップする。両空港間での保税転送の需要は拡大し、さらなる空港混雑や待機時間の増加が見込まれている状況だ。そこで「トレーラー専用置場」の出番となる。例えば、羽田で荷貨物の引き取りに時間がかかる場合、トレーラー置場で貨物を搭載しているトレーラーを切り離し、置いてある空のトレーラーをけん引して成田に引き返す。そして置いていった貨物はピークタイムを過ぎてから降ろす。こうすることで結果的にドライバーは常に何かを積んで走っていることになる。輸送効率がアップすることに加え、空港内でのトラック待機時間を最小限に抑えられるため、効率的な貨物の搬出入が行えるというわけだ。
 同社の益子研一・取締役営業本部長は「今回のトレーラー専用置場の設置につき、成田国際空港会社(NAA)やTIACTをはじめ、ご協力いただいた関係者に感謝しています」と述べた。

3年間で25台のトレーラーを増強

 平野ロジスティクスはこのほか、主力であるオリジナル・トレーラーの増強を継続して進めている。コロナ禍最中の3年間にあっても、+1/+1α/空調仕様の+1 COOLを含む計25台の新型トレーラーを揃えた。成田~羽田間のOLTには主に+1を、東京/名古屋/大阪/神戸/福岡などの長距離路線には、背高貨物への対応にも強みを発揮する+1αを投入する計画だ。

背高・ワイド貨物を輸送できる+1α(プラスワンアルファ)

 また、トレーラーをけん引するトラクターヘッドも順次入れ替えを行っている。ただ、ヘッドについては半導体不足の影響により納入が遅れている。昨年はゴールデンウイーク明けに納車予定だったヘッド2台が11月末に、6月の4台も年内(22年)までと、それぞれ納車が延期された。ことし3月には3台、6月には3台がそれぞれデリバリーされる予定だが、現時点では未確定だという。
 さらに、コロナ禍の厳しい状況だからこそ、良い人材が確保できるチャンスとし、トレーラー増強とともに、優秀なドライバーの確保も進めているところ。
 このように同社では、アフターコロナを見据え、事業基盤の強化を行うことで、危機を脱した後の回復期に、しっかりと需要に応えられるような体制作りを進めてきた。益子取締役は「コロナ禍の3年間は、神様が与えてくれた準備期間だと思っている。2020年時だったらトラックもトレーラーも足りていなかった。この3年間、コツコツ準備してきたことが、今夏に結果として現れる」と期待を込める。
 さらにその先を見据えると“2024年問題”がある。働き方改革関連法によってドライバーの労働時間に上限が設定されることで、ドライバーひとり当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなると懸念されている。ここでも同社のトレーラー増強戦略が生きてくる。
 トレーラーはヘッドに付けたり、外したりできるのがメリット。トレーラーの利点を最大限生かしつつ、多くのトレーラーを揃え、それらを最適なタイミングで投入することで、輸送効率を上げられるというわけだ。「先にも述べましたが、過去3年で25台、年間約8台というこれまでにないハイペースでトレーラーを作ってきましたが、結果的に2024年問題への対応策として有効な投資になる」と確信する。「実はこういう時代がくるだろうと見据えてトレーラーを増やした。と、言いたいところですが、残念ながら後からついてきた“副産物”です(苦笑)」。
 このほかの輸送効率化としては、国内主要空港の中間地点に位置する中部に運行便を集約して展開することで、ドライバーの労働時間の短縮、車両利用の最適化を図る。「トレーラー輸送は効率がすべて。効率を上げることで顧客のコストをセーブできる」(益子取締役)という営業哲学のもと、効率アップを実現する方法について積極的な投資をすることこそ、同社の基幹戦略なのであろう。

2023年1月掲載

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