見出し画像

人手不足ここにも、航空管制官の雇用に大汗かく米連邦航空局

パイロット不足を嘆く米航空業界だが、実は空港近隣の空の交通整理を行う航空管制官の手も足りておらず、米連邦航空局(FAA)ではその新規採用と訓練を急ぐなどで大汗をかいている状況という。

新型コロナウイルスのパンデミックが鈍化し、航空旅行が急激に元に戻り始めて以来、FAAは航空管制官の需要を満たすのに苦労している。コロナ禍で航空管制官アカデミーが一時閉鎖されたほか、ほとんどの実地訓練施設が2年間も閉ざされてしまった。そのため、航空便数が急回復しても空の交通をコントロールする管制官の増員・育成が間に合わなくなってしまったのだ。そのため、現在の航空管制官の人数は10年前と比べて約10%も少ない。

管制官の不足という理由で、欠航が最も多く発生しているのはニューヨークにある3つの空港(JFK、ニューアーク、ラガーディア)だという。なぜなら超混雑ぶりで名高いこの空域では、特に熟練した管制官が必要とされるからだ。ニューヨーク・ターミナルレーダー進入管制(TRACON)における管制官の今夏の配置人員数は、目標の54%にとどまっていたという。FAAは航空各社に対し、ニューヨークの3空港と首都ワシントンのレーガン・ナショナル空港について、今年5月15日~8月15日の発着枠申請数を減らすよう求めるほどのありさまだった。

航空管制官はFAA直属の職員である。管制下にある空域に進入する航空機を受け取って無事に着陸させる、あるいは機長に滑走路上のタキシングや離陸を指示し、管制空港に向かう途中のパイロットに空港の天候や滑走路状況などを知らせて助言したり、飛行中のさまざまな航空機間の間隔について機長にアドバイスを与えたりする責任の重い仕事である。

空の交通整理を行う航空管制官の仕事はきわめて重要で重い責任を背負う

航空機の自動制御機能と同じく、航空管制もAIによる自動化が進んでいて管制の複雑さも減少しているが、しかし業務内容には専門知識や経験を必要とするだけでなく、最高度の緊張とストレスがかかるため、平均年収も1500万円ほどに達するほど高い。

FAAの必死の採用努力の結果、2023年末までに1500人の航空管制官を新規雇用するとの目標は、前倒しで8月24日までに採用目標に達することができ、関係者もホッとひと息ついたとのこと。
パンデミックがまだ発生している最中に、FAAは26年末までに4300人の航空管制官を新規雇用するという目標があると発表していた。
その第1弾の1500人採用目標がまず8月中に達成され、さらにバイデン大統領は次の目標である「来24年中に1800人の新規採用」のための予算を議会に要求しているという。

新たな雇用により、FAAは訓練ネットワークを継続することもできた。航空管制官になるにはその職務が多岐にわたるため、多くの訓練が必要となる。訓練中の管制官はまず、オクラホマシティのFAAアカデミーにおける3〜5ヵ月を要するトレーニングから始め、卒業生はその後、米国全土の特定の空域位置に移動して仕上げの訓練を受けるわけだ。 FAAは現在、全国のさまざまな施設で約2600人の管制官を訓練中で、多くの管制官予備軍はすでに正式な航空管制官としての仕事を開始するための認定を受けている。

航空業界はコロナ禍からの復活に沸いているが、その反動で、パイロットや客室乗務員、空港の貨物ハンドラーだけでなく、FAAの航空管制官や運輸保安庁(TSA)と税関・国境警備局(CBP)の保安要員まで手が足りない事態に至っているのは、うれしい悲鳴のひとつなのだろうか。

2023年9月5日掲載

※ジャパンプレスの発行するメールマガジン登録(無料)をすることで、最新の航空貨物ニュースを受け取ることができます。
ご登録はこちらから


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?