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ルフトハンザがリリウムとの提携模索、欧州でのeVTOL運用で

独ルフトハンザグループはこのほど、同国のベンチャー企業リリウムと、欧州における電動垂直離着陸機(eVTOL)の運用に関する戦略的パートナーシップ形成を模索するための覚書 (MOU)を締結した。

リリウムが開発するeVTOLジェット機「リリウム・ジェット」は全長8.5m、翼幅13.9mで、乗員1人乗客6人の合計7人乗り。巡航高度3000mを時速280kmで飛行し、航続距離は250km以上としている。ことし11月には欧州航空安全庁(EASA)から設計機関承認を取得しており、リリウムによれば12月6日から生産を開始した。

リリウム・ジェットが生産開始。設計・開発から量産段階への転換期に(出典:リリウム)

両社は提携により、航空分野におけるイノベーションの機会を模索していく方針で、地上および飛行の運用、将来的な航空機のメンテナンス、乗務員および飛行訓練などの分野について協議する。

ルフトハンザグループはリリウム・ジェットを発注する確約はないものの、戦略的パートナーシップの可能性の余地はあるとしていて、バーティポート(垂直離着陸用飛行場)空域統合(航空機が自由に飛行できる環境の構築)などのインフラの進歩のほか、空港や地域パートナーなどの第三者との協力の機会も分析していく。

今や世界各国でeVTOLやドローンなどの「空飛ぶクルマ」の開発や関連する要素技術の開発が進められている中、大手航空会社のeVTOL発注・導入の動きが活発化している。

2021年にはユナイテッド航空が、eVTOLの開発・製造を手がける米アーチャー・アヴィエーションと提携し、同社のeVTOLを最大200機の購入を発表したことに続き、アメリカン航空もイギリスのスタートアップ企業であるバーティカル・エアロスペースにおよそ250機のeVTOLを発注、UPSも米ベータ・テクノロジーズのeVTOL航空機の導入を発表している。

日本では日本航空(JAL)が米航空機大手ボーイングが出資する米新興のウィスク・エアロとの提携を発表し、日本における型式認証の取得や航空安全当局との協議、デモフライトの実施などで協業する。また、全日本空輸(ANA)は22年に、米ジョビー・アビエーションと、eVTOLによる日本での新たな運航事業を共同検討する覚書を締結、ことし12月にはANA、ジョビー・アビエーション、野村不動産の3社が、日本におけるVTOLの離着陸場開発に向けた共同検討に関する覚書を交わしている。

eVTOLやドローンなどの「空飛ぶクルマ」の実用化には、安全性の確保、騒音と公害、インフラ整備、法規制、社会的受容性などさまざまな課題もあるが、物流や交通に大きな変化をもたらし、社会課題の解決につながることが期待されている。

2023年12月14日掲載


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