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生鮮のブリ:22年は量・金額ともに過去最高に、最大の輸出先は米国

今、動きのある航空貨物の統計品目を様々な視点から解説する”エアカーゴ専科”。
今回のテーマは、「生鮮のブリ」。

「ブリ」はスズキ目アジ科ブリ属に分類される回遊魚で、日本においては重要な食用魚であり、古くから親しまれてきた。成長するごとに呼び名が変わる出世魚とされ、また、大晦日の年越しの前に餐される「年取り魚(としとりさかな)」に使われる特別な魚でもある。
天然ブリの旬の季節は11月〜2月にかけての冬で、この時期に出回る脂の乗ったブリは「寒ブリ」と呼ばれ高値が付く。また、人工採卵することで夏に最も美味しくなるように調整されている養殖ブリは、1年を通して美味しく楽しむことができる。

近年では、海外での日本食ブームでブリも「刺身」や「寿司」で人気を集めている。海外に輸出されるブリの多くは養殖ブリで、漁獲時期が決まっている天然ブリの輸出量はあまり多くはない。
養殖ブリは時期を問わず供給でき、価格が安定しているため、取り扱いがしやすいのが理由。日本の養殖ブリは鮮度や食感がよく、脂がのっているので海外から高い評価を受けているようだ。

■22年は輸出量・金額ともに最高、おもに福岡空港から

ブリの全国の養殖による収穫量は13万8900トンで主な収穫地は鹿児島県(4万6500トン)、大分県(2万200トン)、愛媛(1万8900トン)と続き、九州の2県で全体の48%を占めている。
生鮮のブリは、鮮度を保つために輸出はほとんどが航空貨物として輸送されていて2022年は1640トン:37億2700万円となった。

2022年における「生鮮ブリ」の輸出実績は、1650トン:37億5600万円で前年比82%増と大幅に増加、過去最大の輸出額に達した。20年、21年は新型コロナウイルスの感染拡大による海外での外食控えによってブリも一時的に減少傾向にあったが、ここ10年ほどは安定して右肩上がりで輸出を伸ばし続けてきた。

主な輸出先としては、1位が米国で989トン:22.5億円、2位台湾で230トン:5億円、3位が香港で197トン:5億円、4位が英国で73トン:1.4億円、5位がカナダで48トン:1.1億円と続く。
1位の米国向けが全体の6割を占めておりダントツとなっている。米国では健康志向の面から高たんぱく・低カロリーの魚が人気を集めていて、特に脂が乗った刺身や寿司などが好んで食されている傾向がある。ブリはその典型的なサカナと言えそう。

■販路の拡大を目指す

日本は、農林水産物・食品輸出額を2030年までに5兆円とする目標を掲げており、なかでも養殖魚は有望な輸出品目に育ちつつある。ブリの養殖が盛んな九州においては追い風になっているようだ。

しかし一方で、東南アジア向けなどではコールドチェーンが十分に整備されていない国も多く、輸送上の保冷とリードタイムが常に課題となっている。さらに、レストランなどで提供されるブリは高価なため、国際競争の中では輸入する側が安くより良いものを選べるので、日本産ブリが将来的に価格競争で負ける可能性もあるとの危機感を持っている輸出業者もある。

業界では、①需要に応じて安定供給ができること、②海外の消費者ニーズに合わせた飼育・加工が必要なこと、③官民一体となって
日本食の販路拡大への取り組みを進めていく・・・などが、ブリの輸出拡大に繋がると考えて努力していくとしている。

2023年12月18日掲載

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