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メキシコ政府がフレイター便専用空港への移転期限を延期

メキシコ運輸省はこのほど、メキシコ・シティ国際空港(MEX)からフェリペ・アンヘレス国際空港(NLU)への貨物専用(フレイター)便の移転期限を、当初予定の7月から9月に延期すると発表した。

メキシコ政府はことし1月、MEXの混雑緩和を図るため、同空港で貨物専用便を運航する航空会社に対し、90日以内に他空港へ移転するよう命じる政令案を発表した。同政府は新空港のNLUを利用することを強く奨励、その期限がこの7月に迫っていた。

NLUは昨22年に開設された新空港で、メキシコ市の中心地から約50kmに位置する(出典:AIFA)

これに対し、IATA(国際航空運送協会)は「MEXはメキシコ市場における貨物オペレーションの最大シェアを誇る。同空港には航空会社も関連する貨物サプライチェーンもあるため、別の空港に移動することはできない。移転プロセスは大きな課題であり、貨物オペレーションの中断を避けるため十分に計画する必要がある」ととした。IATAによればNLUには他の国・地域に貨物を輸出するオペレーターが必要とする第三者認証の遵守/貨物倉庫/税関システム/通関業者/貨物代理店の登録などが欠如しており、貨物オペレーターがスムーズに作業できるような十分な施設やインフラが整っていないと反発した。

また、全国航空輸送会議所(CANAERO)からも「貨物専用便と旅客便ベリーによる貨物サービスの双方を利用している物流関連業者にとっては、今後、MEXとNLUの双方にスタッフを配置する必要が生じてコストアップにつながるほか、両空港間の貨物輸送も必要となり、交通渋滞がより深刻化する懸念がある」との指摘もあったが、メキシコ政府は毅然とした姿勢を崩さなかった。

変更期限が迫る中、ルフトハンザ・カーゴやエールフランス-KLM-マーティンエアーカーゴなどの海外の大手キャリアが、MEX貨物便のNLU発着への変更を発表、他の航空会社も同様にメキシコ政府の法令に従う姿勢を見せていた。

一方で、メキシコでは21年5月に米国連邦航空局(FAA)から航空安全性評価をカテゴリー2に格下げされており、メキシコの航空会社は米国との間で新規路線の設定や増便が認められていない。メキシコの航空会社がメキシコ〜米国間の貨物便をMEXからNLUに移した場合、新たな航路設定と判断され就航が認められないというリスクもあり、メキシコ国内の航空会社からは、利用空港の変更は外国の航空会社にのみメリットがあるとの反発も出ていた。

メキシコの現地報道によると、今回の延期発表は、6月16日にメキシコを訪問していたピート・ブティジェッジ米国運輸長官との会談後に行われたもので、ブティジェッジ氏が、米国の航空会社を代表して、メキシコのロペス・オブラドール大統領に対し、NLUへの変更を行うためのさらなる時間的な余裕を要請したとしている。

メキシコ政府は航空安全評価の格付けをめぐって米国と交渉を行っているが、貨物便の発着地変更も両国間のもうひとつの難題となっている。

2023年7月6日掲載



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