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牡蠣:東南アジアやEU向けに輸出を拡大中

今、動きのある航空貨物の統計品目を様々な視点から解説する”エアカーゴ専科”。
今回のテーマは、「牡蠣」。

海の岩から「かきおとす」ことからその名がついたと言われる牡蠣は、古くから世界各地の沿岸地域で食用、薬品や化粧品、建材(貝殻)として利用されている。牡蠣にはグリコーゲンや必須アミノ酸をはじめ、ビタミンB1・B2・ B12、ミネラルなどの栄養素とタウリンなどの機能性成分が豊富に含まれている。
とくに亜鉛の含有量は食品随一とも言われており、免疫力アップや健康増進に効果的で、疲労回復や美肌効果をはじめ、動脈硬化・肝臓病・心臓病などの生活習慣病の予防効果も期待ができるという。

牛乳のように栄養素が豊富なことや、乳白色の身から「海のミルク」と呼ばれている牡蠣。

牡蠣は「Rのつく月に食べる」「Rのつく月以外は食べるな」といった表現にたどり着くことがある。果たしてどういう意味なのだろうか?
一般に牡蠣として認識されている真牡蠣の場合は、グリコーゲン含量が増える秋から冬にかけてが旬とされており、英名に「R」のつかない月、すなわちMay, June, July, Augustの5、6、7、8月は食用には適さないとされている。

その理由のひとつは、牡蠣の産卵期が夏であり、甘みのもとになるグリコーゲンが消費され味わいが低下するということだが、最も大きな理由は、海水温が上がる時期になると、貝毒・腸炎ビブリオ・ノロウイルスといった細菌やウイルスによる食中毒のリスクが高まるということのようだ。あるいは、古い時代のことわざなので、冷蔵技術が発達していなかったことも関係しているかもしれない。
ただし、春から夏に旬を迎える“岩牡蠣”と呼ばれる種類のカキもあり、それぞれ養殖も盛んであることから真牡蠣に限らないならば通年食べることができる。

日本の牡蠣生産量1位は広島

日本の牡蠣は北は北海道から南は九州まで全国で収穫され、収穫量全国1位の広島をはじめ、宮城の三陸沖、兵庫の播磨灘、北海道の厚岸などが挙げられ、1年を通じて食すことができるが、輸出も同様に年間を通して行われている。

右肩あがりに数量・金額ともに増加している

グラフは牡蠣の輸出量と金額を表したものだが、輸送技術の向上によってここ数年急激に伸び始め、2017年に1000トンを突破したあとコロナ禍であった2021年には2656トン・29.2億円、22年には3960トン・45.5億円と前年比で55%も増加。輸送量・金額ともに過去最高を記録した。

22年の輸出額を仕向地別にみてみると、1位が香港:1182トン・18億7600万円、2位が台湾:1379トン・12億300万円、3位がシンガポール:450トン・4億7100万円、4位がベトナム:293トン・2億4000万円、5位がマレーシア:242トン・2億円で、上位5地域で輸出額全体の87%を占めている。

また、牡蠣の輸出は主に「生鮮」と「冷凍」に分けられ、生鮮はほぼ全量が空輸され冷凍の大半以上が海上輸送される。昨22年の航空による輸送額は、7億600万円で輸出全体におけるシェアが20%となっている。
牡蠣は殻に守られているため1週間程度は生きたまま輸送することができ蓄冷剤を入れた発泡スチロールで輸送され、現地のオイスターバーなどで提供されているという。

今後の展望として

牡蠣は食中毒などの危険があるため生鮮ものの輸出については仕向地側の承認を得なければならない。こういった安全基準のクリアが活牡蠣の輸出先拡大を進める上でのハードルとなっている。
22年に空輸先の3位となったシンガポールは2018年に活牡蠣の輸出が解禁されたばかり。同国の管轄庁が策定した「貝類衛生プログラム基準」を満たした三重県が、日本で初めてシンガポール向け活牡蠣の輸出を開始し、輸出を拡大している。

また、23年2月には広島産の冷凍された殻つき牡蠣が日本で初めて羽田からEUに空輸された。広島県では、2021年に三津湾一帯をEU輸出に必要な「生産海域」として指定し、その後、農林水産省がそれらの牡蠣加工施設等をEUに水産物を輸出するのに必要な衛生管理国際基準の「HACCP」に認定したもの。この牡蠣は解凍後、生のままで食べられ、EUでは欧州産より身が大ぶりで味が濃厚と高評価だったようだ。

アジア圏だけではなく、各国の安全基準をクリアすることで世界に向けて日本の牡蠣の販路拡大が期待されている。牡蠣は輸出の航空貨物として今後も伸びしろがあると言えるだろう。

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2023年5月9日掲載


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