エミレーツ航空グループの23-24上半期利益は驚きの2倍以上
アラブ首長国ドバイに本拠を置くエミレーツ航空グループはこのほど、2023-2024年度上半期(4~9月)の純利益が27億ドル(約4077億円)に達し、前年度同期の12億ドルに比べて138%増加したと発表しました。
同グループの公式リリースによると、グループの収入は世界中で航空輸送に対する強い需要に牽引され、昨年の153億ドルから20%増加して183億ドル(約2兆7630億円)になったとしています。コロナ・パンデミックによる渡航制限が世界的に解除されるようになって以来、増加傾向にある航空旅客需要を同グループはうまく取り込んできたのでしょう。
エミレーツだけでなく、ドーハを拠点とするカタール航空やアブダビ本拠のエティハド航空などの中東キャリアにとって、極東〜欧州線での中継基地として中東の空港経由を使う利用客の増加も好背景となったようです。
ご存じのように、ロシアのウクライナ侵略戦争が始まって以来、ロシアを非難する日本や韓国など極東の国からは欧州へ飛ぶのに最短だったロシアのシベリア上空通過ルートが使えなくなったためなんですね。
一方、貨物面でもエミレーツ航空はことし4~9月の上半期に103万5000トンの貨物を運んでいます。これは前年同期の93万6000トンから11%と、2ケタも増加する結果でした。今春から世界的に貨物の動きが鈍化してきた中で他の大手キャリアの貨物輸送も伸び悩んでいるのに、エミレーツの貨物実績は好調そのものと言えます。
もっとも、同じエミレーツ・グループの世界的なグラハン会社であるディナタ(dnata)は同じ上半期に130万トンの貨物を扱いましたが、こちらは前年同期の140万トンから5パーセント減少する結果となりました。むしろ、こちらの方が世界的な貨物低迷傾向に見合った数字かもしれません。
ただ、世界のあちこちで事業を拡大、多角化してきたディナタなので、同社全体の売上高は27%増加して25億ドル(約3770億円)となり、純利益に至っては前年同期比で3倍の1億9300万ドルとなっています。事業の拡大がツボにはまった結果なんでしょうね。
ドバイ王族のひとりでありエミレーツ航空およびエミレーツ航空グループの会長兼最高経営責任者のシェイク・アーメド・ビン・サイード・アル・マクトゥーム殿下は、「コロナ・パンデミックの暗い日々からより強く、より良く立ち直るという計画が実を結びつつある」と語って、「当グループはこれまでの記録を上回り、過去最高の半期業績を達成しました」と胸を張っています。
そのうえで同会長は、競合他社を尻目にこれだけの好業績を上げた理由について、
「組織内の才能と献身、当社のビジネスモデルの強さ、そして強力で回復力のある進歩的な航空部門の創設を可能にしたドバイのビジョンと政策の力が土台にあるため」と語り、「グループ全体で顧客の需要に応えるために機敏に業務を強化し続けてきました。今後も人材と輸送商品への投資を継続しながら当社の能力を強化していくつもり」と述べています。
さらに2023年から2024年の下半期についても、「燃料価格の上昇や米ドル高、インフレコスト、地政学などのリスクを考えても、エミレーツの事業部門全体では顧客の需要は引き続き健全であると予想しており、このダイナミックな市場でリソースをどのように展開するかについて機敏性を維持していく」ことを念頭に置いていくとの声明を出しています。
異色の中東の翼・エミレーツ航空グループの快進撃はどこまで続くのでしょうか。
2023年11月20日掲載