韓国報道(京郷新聞)「[時論]民主主義の根幹を揺るがす日本の汚染水(ママ)放流」仮訳

入力 2023年09月12日 午後 8:16

牧内昇平 元朝日新聞記者

日本政府と東京電力が先月24日、東京電力福島第1原発にたまっている汚染水の海洋放流を強行した。 「科学的に安全なのかどうか」論争に先立ち、汚染水の放流が「非道徳的行為」という点を指摘しなければならない。 2011年3月の原発事故以来、福島第1原発では膨大な量の放射性物質が海や土壌などに放出されてきた。 セシウム137という一つの放射性物質だけを見ても、正常稼動時に上限線の約7万年分が漏れた。 事故直後の汚染は防げなかったかもしれないが、現在の海洋放流は意図的な投機だ。 すでに7万年分の放射能で汚染した海をさらに汚染することは容認できるのか。 海はごみ箱ではない。

さらに大きな問題は原発事故が世界的な問題になったという点だ。 汚染水を陸地に保管すれば、日本国内の問題に限定することができた。 しかし、海に流して世界的な問題になってしまった。 私は日本国民の一人として韓国人をはじめ世界中の人々に謝罪したい。

このような状況でも福島で大規模な反対運動が起こらないことを疑問に思う人もいるだろう。 その理由の一つは、政府とマスメディアの宣伝だ。 2021年4月に海洋放流方針を決めた以後、日本政府がこの2年4ヶ月間注力したのは「安全広報」と水産業界の営業被害対策だった。 政府はマスコミと国民に汚染水の代わりに「アルプス(ALPS·多核種除去設備)処理水」と呼ぶようにした。 そしてテレビ·新聞広告を通じて「ALPS処理水は安全だ」と広めた。 政府関係者は全国の高校で安全性を広報する授業を行った。 福島産水産物の販促キャンペーンも繰り返した。 このような宣伝と漁業者支援のために、日本政府は800億円の税金を投入する予定だ。

しかし、日本政府は最も重要なことを疎かにした。 2021年汚染水放流決定以後、市民が自由に参加できる政府主催の公聴会は開かれなかった。 今夏に入って福島県の数カ所で市民と政府·東電の意見交換会が開かれた。 しかし、これは市民ボランティアが要請して開催したものだ。 政府主催ではない。

汚染水放流直前の先月20日、岸田文雄首相は福島第1原発を視察し、東京電力幹部らと会った。 往復の途中で福島県を通ったが、福島住民たちと話し合う時間は作らなかった。 政府が市民に対する責任を果たしているとは言い難い。 結局「対話」を軽視し「金」と「宣伝」で合意を操作した。 汚染水の海洋放流に関しては、民主主義の根幹が揺れている。

もう一つの理由は福島に住む人々が疲れてしまったということだ。 福島県には今も原子力非常事態宣言が出されている。 放射能数値が高くて人が住めない地域が残っているためだ。 この12年間、被爆の心配は福島県の住民たちだけの役目だった。 政府は住民の被害訴えに耳を傾けなかった。

今回は汚染水の海洋放流だ。 福島住民にはもはや「怒り」より「放棄」の感情が支配的だ。 福島で子育てをしているある女性は、「この12年間の気持ちは言葉では言い表せない。 海洋放流が始まったという知らせを聞いて尊厳性を踏みにじられたような気がした。 絶望した。とても悔しかった」と話した。 日本の民主主義を守るためにも、福島に住む人々を絶望から救うためにも合意のない海洋放流は中断、見直さなければならない。

すでにその動きは始まっている。 8日、市民たちは国家と東京電力に海洋放流中断を要求する訴訟を提起した。 原告数は100人を超え、今後さらに増えるものとみられる。 政治の暴走を防ぐのは司法府の役割だ。 裁判所の判断に注目する理由だ。

日本では原発事故以前から原発政策に疑問を提起する声があった。 しかし政府はマスメディアと一体化した宣伝で「原発安全神話」を作り反対の声を抑えた。 日本は「地震大国」であるにもかかわらず原発を建設し続けた。 事故が起きた今は「海洋放流安全神話」を作り、再び反対の声を抑えようとしている。 韓国でもどうかこの問題に引き続き関心を持って、日本政府がこれ以上ミスを繰り返さないよう圧迫してほしい。

牧内昇平 元朝日新聞記者

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