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始発から終点まで

諸事情あり長距離移動をすることになったが
我が最寄り駅を始発にして直通運転終点まで
ざっと二時間近く鈍行での移動を強いられた。

何度も乗り換えをする経路もあるにはあるが
異動時間は大差ないのに料金が高くなるので
小旅行と言い聞かせて鈍行での移動を選んだ。

徐々に乗客が薄れていき閑散とした車内では
パソコンや書類を広げて仕事する人が目立つ。

悪びれる風もなく慣れた手付きで仕事をする。

新幹線では見慣れた風景なのに違和感がある。
思わずジロリと視線を送ってもお構いなしだ。
他の人たちも当然と言わんばかりに見ぬふり。
都心とは少しだけ文化が違うのかもしれない。

迷惑の掛からない範囲で自分の時間を過ごす。

早朝の電車と見間違うほどスカスカの車内は
二人分の席を陣取った程度では迷惑ではない。
律儀に自席で小さく仕事している人なんかは
同行者とお喋りする人より正しいとさえ思う。

それにしても長い。腰痛が悲鳴を上げている。

片道二時間ということは往復四時間もかかる。
その時間を仮眠や娯楽で潰すのは無駄である。

例え長距離移動でなくともこの閑散具合なら
簡易作業場所と思ってもいいのかもしれない。

たった一時間の用事のために消耗する人生が
あまりにも膨大なので多少足掻きたくもなる。

せめて帰りに美味しいものでも食べよう、と
それだけを心待ちにしていたにもかかわらず
用事を終えた今、徒歩圏に飲食店が何もなく
悲しみに暮れながら帰りの電車を待っている。

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