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【詩】春風(原作)

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春がきて
やっと芽が出て
しあわせに

春のかぜ吹き
心やすらぐ

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この詩は私が小学5年生の時に
書いたものです。

それより遡ること3年
小学2年生の時に
生まれた時から住んでいた神戸で
阪神淡路大震災が起きました。

火災で町の大半が燃えてしまった
最も被害が大きい地域に祖父母の家があり、なんとか火は近くまでで消し止められましたが家屋は全壊だったため、震災当日に祖父母を迎えに行き、しばらく私たち家族が5人で暮らしていた4LDKのマンションで一緒に生活することになりました。

さらにそこに、もう片方の祖父母+高齢の親戚も家の修復のため一時的に我が家に身を寄せることになり、11人という大人数で生活していました。

まだ小学生、幼稚園生だった
私含む子供たち3人は
廊下に布団を敷いて縦並びで寝たり…

おじいちゃんおばあちゃんが6人もいるので
みんな自分の入れ歯を洗面所のコップに
それぞれ入れているのですが
間違えて他の人のをつけてしまって
涙が出るほど大笑いしたり…

見えないところで大人たちが
苦労していたことは今なら想像できますが

子供の私にとったら
大好きなおじいちゃんおばあちゃんたちと
一緒に暮らせて
みんなでワイワイ過ごしている時間が
とっても幸せでした。

その後、何年かかけ
祖父母の家があった辺りも
仮設住宅ができたり急ピッチで修復が進み
なんとか暮らせる状態になったころから

自分の家もまだ完成していないタイミングなのに、と幼いながらにびっくりしたのですが

祖母が、地域の仮設住宅にボランティアに行くと言い出したのです。

おばあちゃん、すごいなぁ。と思いながら
毎日のようにボランティアに行くおばあちゃんの様子を父母から聞いたりしていました。

その祖母が通っていたボランティアのグループの名前が「春風」でした。

それからしばらく時が過ぎ
私が4年生になった頃。

祖母の家に泊まりに行った際に
「明日ボランティアに行くけど一緒にくる?」と聞かれ、私はすぐに「行く!」と返事しました。

翌日実際に連れて行ってもらい
他のボランティアスタッフさんたちに
「孫です」と紹介してもらい
洗い物をしたり、仮設に暮らしている方と
お話したりしました。

みなさんとても暖かくて
感謝の心や笑顔で溢れていて
震災で亡くしたものへの悲しみはなくならないけれど、一人一人が希望を持って生きているんだ。と感じ取った感覚がありました。

私自身もボランティアをすることで
普段学校に行ったり、習い事をしたり、遊んだりしている時にはなかなか味わえない
「誰かの役に立てることの喜び」
を体感でき、それが嬉しかったのです。

その様子を見て祖母もとても喜んでくれ
その後も私を何度もボランティアに連れて行ってくれました。

「春風」のメンバーさんたちの名前や顔も一致するようになり、みなさんも私のことを覚えてくれるようになったのは6年生になる手前くらいだったかな。

みなさんから学んだ助け合おうとするあたたかい気持ちや、この冬のような寒くて辛い状況もいつかは終わり、施設で暮らす人たちやボランティアに来ている人たちにも、あたたかい春風が感じられる季節がくる。ということを何かで表現したい。と思い

メンバーさん一人一人の似顔絵を描き
さらに学校で習った短歌のリズムにのせて
つたないながらに詩を作り、祖母に届けました。

(ちなみに祖母も詩人だったので、詩を詠む過程はよく見せてもらっていたな。と今思い出しました☺️)

祖母は早速春風のみなさんに見せてくれたようで、それぞれの似顔絵をとってもみなさん喜んでくださり、詩には深く感動してくださったよ。と教えてくれました。

そしてそれからすぐに、毎月発行されている春風の会報誌に載せてくださったのです。

そのおかげでよりたくさんの人に届いたようで、その後施設に行った時には、みなさんが駆け寄ってきて色んな感想を聞かせてくださり
感じたことのないほどの幸福感を味わいました。

その当時のことを祖母は今でもよく覚えてくれており、ずっとずっと誇りに思ってくれているようで、今でも会うたびに「あんなことができるなんて、本当にあなたを尊敬するわぁ」と言ってくれます。

私が中学生になってからは部活や遊びばかりになり、もうボランティアにも行く機会はなくなっていったのですが、祖母は20年以上も春風に通っていました。

その行動から、震災が人々の心に与える影響がいかに大きいか、ということにも気づかされますし

何かが起きても、自分の安全な暮らしの確保はもちろん大切ですが、自分以外の人はどうだろう?困っている人はいないかな。と周りを見回して、苦しい状況の人がいたらあたたかい心で寄り添える人でありたい。と感じられるのは春風での経験のおかげだと思います。

この詩を久々に思い出してみて
10歳の私が書いたんだなぁ。
と思うと、なんだか不思議というか、、
感慨深いです。

「人に心を動かされ生じた想いが
詩にのって また人の心に届く」

という感動体験は今でも私の中に
色濃く残っています。

またそんな詩が作れたら
最高に幸せだな。




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