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クララとお日さまの感想文

人工知能を搭載したロボットのクララは、病弱な少女ジョジーと出会い、やがて二人は友情を育んでゆく。愛とは、知性とは、家族とは? 生きることの意味を問う感動作。
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014785/

書誌と帯から思ってた内容と実際に読み終えた感想にはだいぶギャップがありました。ロボットと少女の間の友情物語の面がなかったわけではないければ、そこだけが主軸ではなく、あくまでそんな側面もある程度でした。

人とロボットの友情と信頼

ロボットはプログラミングされたように動くのみで、常に主人とその家族を優先して考え、行動する。どんな状況でも、そこはブレない。
人間はその時の状況や感情によって、ロボットに対する対応が変化する。信頼し友と思う時もあれば、軽蔑しあくまで物として扱ったり。
人のタイミング次第で信頼したり、しなかったり、どうとでも変化する。
人のエゴだなと思った。

格差社会


裕福な家庭で能力を向上される処置を受けた子。
能力を向上させる処置を受けて病気になった子。
貧しい家庭で能力向上の処置を受けられなかった子。
が登場する。
能力が向上した子は大学へ行けるし、
向上してない子は大学へ行きにくい環境だったりする。
貧困の格差が教育の格差になっている現代っぽい。

環境破壊

道路工事の場面でクーティングズマシンという工事用の機会が登場する。煙突から黒い煙を出してお日さまの光を遮ったりする。クララにとっては、自分の目の前にそびえ立つ、大きな問題であるが、俯瞰して見れば全体のごくごく一部でしかなく、それが解決しようとしまいと全体として大きな変化は見込めない。一人ができることの限界と、みんなで本気で取り組まなければ解決しない問題を示唆してるのかなと思った。

AIと信仰

クララはロボットであり、お日さまの光をエネルギーに変える。
そのためお日さまは、クララにとって必要不可欠な存在であり、自分に元気を与えてくれる絶対的な存在でもあります。
そのため、ロボットなのに太陽に対して、敬意と尊敬の念を感じた。これは信仰にも近い感じがした。
太陽はただの太陽なので、クララに対してなにか特別なことは一切しないのだが、クララが良いように受け取り、解釈してさらに信仰を深める。
ロボットなのにちょっと面白い。そして少し怖くもある。
また、ロボットなのに誰にも言わず自分の中だけの秘密を持つところが面白い。たしかにロボット三原則に秘密を持つことは言及されてない。関係ないかもだけど。

まとめ

他にも社会問題や、人の心情を示唆してる部分はあるのかもしれないけど、全体的に1つ1つの物事に対して多くは語られない。余白を持たせて読者に考えてもらう感じ。
また、ある意味でとてもリアルでもあった気がした。

人が必要な時に必要なロボットを購入して、利用する。時には信頼し頼りにもするし、状況が変わったり、成長すればまた違った触れ合い方に変化していく。人間の都合でいいように使われる。
ただ、クララの健気さや素直さに心打たれ、決して蔑ろな扱いはしない。
ただし、さらに踏み込んで関係を深めようともしない。

人の都合のいいように利用してるなと思うが、そもそもそれを目的に作られたロボットなのだからそういう扱いで、間違ってないと思う。クララの健気さもただのプログラミングだと思うとなんとも言えないお気持ちになる。

登場人物はみんな、大小さまざまな問題や悩みを抱えつつ、頑張って生きている。そんな、日々の生活の中で、大小さまざまな問題を示唆してくれる、そんなお話でした。

そして読み終わったあと、考えさせる感じ。

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