天国→地獄
雲が綿飴のようにしゅわりと消えて、体の物理的な拠り所を失った私はそこから真っ逆さまに落ちていく。
天国から堕ちていく事の本能的な怖さ、又現世に戻る予兆であることを期待する希望的観測が入り交じる手汗が、空気抵抗の風流で上へ飛び上がり頬を刺激する。
しかし虚しく現世を透明のまま気付かれぬまま気付かぬまますり抜けて、空気と地面の境目が無くなった体で地底に勢いよく潜り込み、落ちていき、落ちていき、マントルとマグマの間の、ちょうど暗くてねちっこくてひんやりした空洞を通って、地獄まで向かうだろう。
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