ファウンドフッテージ
世界砂塗れ。
「寝転んだ私の頭から溢れ出た脳しょうが、枕に染み込んで、床に届いて、土を抉って、その内に段々固体化していって、最後には内核まで到達するよ」
彼の淡々としてかつ叙情的な発言に私は曖昧な頷きをした。彼と私の間には時たまそういうことがあった。
大抵の場合、彼は喉を乾かしたいだけで、私は呆然と広がる音の狭間に挟まるだけだ。
ああしかし事切れてしまえば起こりえぬ春。
形相の無い事柄はそれだけでアリストテレスを激怒させるか。
私にとって彼とは存在意義であっても、世界は特にそう考えていないようだ。
ぶつぶつと呟く彼にある感情ともすれば。私は微笑を浮かべる。
何をしたいのかなど分からないままこの薄黄色の世界でファウンドフッテージのように記録された私達の人生を誰にも消費されることなく賞賛されること批判されること性愛浴びること無くいわば林檎食べること無く。
生きたい。
耽美。
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