米金利は低すぎる??

個人的に8月は難しい1か月でした。

季節性もありUSTの5s30sは大きくフラットニング。中でもFEDタカ派メンバーのタカ派コメントで5年主導のベアフラットはなかなかのものでした。7月のFOMC Minutesにも、Taperingを示唆する内容がしっかり載っていて、ひょっとしたらパウエルが梯子はずしてくるかも?!って思った人が多かった事でしょう。それもあって、S&Pは一時MTDでマイナスの時も。さらに中国がTech系への規制を厳しくするかも等のヘッドラインでアジア株はアンダーパフォーム。

そんな中で、待ちに待った8月27日のJackson HoleでのPowellのOpening Statement。マーケットの心配とは裏腹にいつも通りのコンサバなPowell。決してハト派とも思わなかったけど、タカ派ではなかった。年内のTaperingスタートという言葉はあったが、Tapering終了=利上げではないという事を最後明確化した。このTaperingと利上げの結びつきを崩そうとしてきたのは、Powellのみならず、タカ派のメンバーたちも同様だったので、ここの点は前提が大きく変わったなと思いましたね。現在のFEDのFAITフレイムワークにおいては、インフレをオーバーシュートさせて平均インフレ値を2%に持っていくという物です。つまり実際にある一定の期間インフレが2%を超えた状態がつづかないと平均値は2%にならない。言い換えると、Outcomeが出てからFEDがアクションを起こすということです。よくOutcome basedと言われている由来です。従来のFEDはPreemptive Inflation Strikeという事を行っていてインフレが2%に行く目途が付いた時に利上げをするというものだったので、インフレの予想と目途を見る事である程度利上げが行われるタイミングが推測できましたし、FEDも市場に対してcalendar guidanceを与えることができていたのです。そんな中、市場ではTaperingのスタートとそのペースが、implied calendar guidanceになると思っていたと思います。Fedの出しているDot Plotと照らし合わせ、2023年Q1又は2020年Q4に最初の利上げを織り込んでいたのはこれが理由だと考えています。しかしJackson Holeでimplied calendar guidanceを失ってしまいました。結果その日のマーケットの反応はブルスティープとなったわけです。

さて、今後市場はどのように考えるのでしょうか。。個人的、このJHを経て、今後重要になってくると思うのは、「終わり」だと思いした。利上げの始まりを探るのではなく、利上げの「終わり」、つまりターミナルレートの水準を考えて逆算していく方法の方がリスクは取りやすくなると思いました。

ではターミナルレートがどこにいるべきか、そして今市場はターミナルレートがどのあたりにあると思っているかについて見てみましょう。

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上のチャートは過去の1m OIS rate と2s10sスワップカーブをプロットしたものです、過去2回の利上げサイクルにおいて、regressionのcoefficientがかなり近いのが目視できます。2015年‐2019サイクルに焦点を置きましょう。2018年12月に最後の利上げをしたと、FF金利は2.25-25%レンジにありました。このプロットでも確認できます。回帰分析上では、2.22%となっています。当時FedのLong term dotは3%にありました。現在のLong Term Dotは2.5%です。FAITフレイムワークをやっているという事は、現状FEDは2%のインフレを起こしにいってる事に等しいので、PCEの値の平均フロアは2%と仮定しましょう。過去を見る限り、過去にイエレンも発言をしていますが、Fedはr*が0辺りを意識しています。なので、PCEが2%ある状態が続く前提ならば、Terminal Rateを2%に置くことはリーズナブルな家庭だと思います。では、2015―2019のRegression lineをx-interceptが2%の所へパラレルシフトさせてみましょう(プロット上の点線)。8月27日引け値を使ったspot 2s10s vs spot 1m ois, 1y fwd 2s10s vs 1 fwd 1m ois, ...を黄色の点で表してみました。これらの点を回帰分析してx interceptを見ると、現在カーブでは1.56%辺りのターミナルレートをimplyしていることがわかります。では、今年このImplied terminal rateはどのように動いてきたかを簡単にみてましょう。同じプロット上に(見難いですが)6/16、3/18、2/15を同じようにプラットしてみました。これらはどれも、先ほどシフトした点線の周りにいることが確認できます。つまり、やく2%のTerminal Rateを織り込んでいたという事になります。

では、なぜ6月時点よりもより多くの利上げを手前に織り込んでいるにも関わらずターミナルレートが下がっているでしょうか?

一言で言うと、デルタ株による将来への不安感だと思います。10年金利を回帰分析を使ったマクロモデルでみると、現在の金利水準はマイナス成長を織り込んでいる水準です。ここから米国経済がマイナス成長に行く主な要因はデルタ株、またはそのほかの変異株によるものだと思います。ただこれ以外にも、マーケットが利上げにフォーカスしすぎて債券の買いがなるべき長い所へ集中してしまった事も原因の一つだと思っています。冷静に考えてリアルイールドがマイナスの10年を買ってどうするんだ?って思いますよね。ただ株とCT10のデイリーリターンの相関を見ると、いまだ若干の逆相関を保っていて、一応債券を買うというのは株ロングのヘッジになってしまっていることも事実で、これが理由でRMまたはリスクパリティの債券買いが止まらないという事も上げられます。ただこの逆相関の関係性は日に日に弱まって来ていて、その証拠にS&PのPUTの価格が上昇しています。

今後利上げのスタートから、利上げの終わりへとマーケットの意識が移るにつれて、Implied Terminal Rateの上昇、そしてTerm Premium上昇。最終的には10年金利上昇となると思っています。

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