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2021 Paris-Roubaix プレビュー

どうもこんにちは、自転車雑貨専門店 Wednesday Bicycle Happy!! です。
今年は秋の地獄です。

今週末、10月3日(日)はモニュメントの一戦、第118回パリ~ルーベが開催されます。
COVID-19の感染拡大の影響で延期されていましたが、今年は開催にこぎつけました。
昨年は延期の上、中止されてしまっていたので、実に2年半ぶりのパリ~ルーベです。

しかも、なんと今年は雨予報!
雨のパリ~ルーベは久しぶりです。
どう考えても地獄な今年のパリ~ルーベをプレビューしていきます。


パリ~ルーベ ってなに?

今回で118回目の開催となるパリ~ルーベは、パリ北東の町コンピエーニュをスタートし、フランス北東部に点在するパヴェ(石畳)の道を繋いで、ベルギー国境に隣接するルーベまで走るサイクルロードレースです。

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このパヴェ、パリの町中にあるような綺麗に整備された石畳ではありません。
それは未舗装路にサイコロ状の石の塊を並べただけというようなもので、長い時間の中で風化し、削れ、ガタガタに荒れた石畳です。


しかもわざわざパリ~ルーベのために「直さないでおいた」石畳です。
パリ~ルーベが近づくと友の会の人たちが、土の中に埋まりかけた石畳を掘り返して並べ直します。


その上を走る選手はひどい振動に痛めつけられるのですが、選手はこんなパヴェを今年は30カ所、総延長で55kmも走ります。

荒れた石畳でただでさえバイクコントロールが難しいのに加え、パヴェの段差や鋭利な角のためにパンクが続発し、レースをパンクせずに終えられる選手は2割ほどとも言われています。
雨の日はよりパンクが多くなります。


特殊性はそれだけではありません。
このパヴェ区間、未舗装路に石を並べただけと言いましたが、つまり石畳の下は土です。
雨の日には巻き上げられた泥に包まれます。


まだあります。
土煙や泥を浴びるとその土が自転車のメカ部分に詰まり、様々なメカトラブルを引き起こします。
当然メカトラブルはバイクの交換が必要で大きなタイムロスになります。

パンクやメカトラブルが起きた時、選手は集団後方にいるチームカーからサポートを受け、ホイールやバイクを交換してもらいます。
しかしパヴェ区間では少しでも走りやすい路肩を走るために集団は一列棒状で走行しており、また選手の脇をサポートカーが通ることもできないので、選手はサポートカーの到着を長い時間待つ羽目になります。
サポートカーを待てない選手はニュートラルのオートバイからサポートを受けホイールを交換したり、
また他のレースでは最近はほとんどあり得ないのですが、自前のホイールを持った地元のサイクリストからホイールを借りたりなどしてレースに復帰します。


パンクやメカトラはまだいいのですが、一番怖いのは落車です。
ガタガタの石畳にはプロの選手でもバイクコントロールを失います。
コントロールを失い落車すると、選手は鋭利な石畳にたたきつけられ打撲やひどい時には骨折、それがなくてもひどい擦過傷を負い、レースを棄権する羽目になります。


不確定要素はパヴェだけではありません。

パリ~ルーベのレース中には踏切を通過する箇所がいくつかあるのですが、UCI(国際自転車競技連合)の規則に「遮断機が降りている時,閉じている時,警報が鳴っている,点滅している時,に平面交差の踏切を 通過することは禁止する.」と明記されています。
逃げの選手が通過した後に踏切が閉まり集団が停められたとしても、単なるインシデント(事故に至らない事件)として処理され集団に救済はないので、それによって逃げ切りが決まったりということもあります。
また、規則を破って遮断機が降りかけている踏切を通過した時、その選手は失格になります。
2006年の大会では3人の選手が失格になりましたし、2015年にも集団が踏み切りで分裂され、あわや列車事故という事態も発生しました。


このように他にはないとても特殊なレースなのですが、それがこれほどまでに愛されるのは、やはりその特殊性故なのでしょう。

またベルギーにほど近いこの地域は、Flandre française(フランス領フランドル)と呼ばれる伝統的にフラマン語圏の地域です。
パリ~ルーベ自体も優勝者で一番多いのはベルギー人です。
フラマンは自転車競技の人気が高く、沿道の観客は黄色地に黒く獅子の描かれた旗を譜って選手を応援します。

そんな光景も非常に美しく、パリ~ルーベが愛される理由の一つと言えるでしょう。


他にもパリ~ルーベの見どころはたくさんあります。

例えばそのトラブルの多さのために、一般的なアシストがエースを守りながら勝利を目指すというやり方が通用しません
エースは自らリスクを取り、トラブルを避けるために風の抵抗の強い先頭を引き、アタックに反応するために荒れたパヴェを追います。
結局、このレースに勝つためにはつねに前方に位置し、積極果敢に走り続けるしかないのです。
それでもパンクやメカトラでレースから脱落してしまうのは完全に運。

つまり最強の運と並外れた強さを兼ね備えた選手だけが勝つことができるレースなのです。

そしてこの特殊なレースで注目すべきは機材です。
振動の影響を最小限にするなどのために、毎年スペシャルな機材がいろいろと投入されます。
また各チームの試走の様子を見ると、どのチームもディスクブレーキを選択していますね。
パンクのリスクを考えるとリムブレーキのほうが良さそうですが、パンクのリスクが低いチューブレスをつかっているのでしょう。


2年半ぶりのパリ~ルーベで機材の進化も感じられそうです。


どんなコース?

さて今年のパリ~ルーベは30の石畳セクションが用意されています。
セクター番号はカウントダウン形式で、フィニッシュに近づくにつれ数字が小さくなります。

30 : トロワヴィル~アンシー (km 96,3 – 2,2 km) ***
29 : ヴィースリー~キエヴィ (km 102,8 – 1,8 km) ***
28 : キエヴィ~サンピトン (km 105,4 – 3,7 km) ****
27 : サンピトン (km 110,1 - 1,5 km) **
26 : オジー~サン=マルタン=シュル=エカイヨン (km 116,6 - 0,8 km) **
25 : サン=マルタン=シュル=エカイヨン~ヴェルテン (km 120,9 - 2,3 km) ***
24 : カペル~ルーズネ (km 127,3 - 1,7 km) ***
23 : アルトレ~ケレネン (km 136,3 - 1,3 km) **
22 : ケレネン~マン (km 138,1 - 2,5 km) ***
21 : マン~モンショー=シュル=エカイヨン (km 141,2 - 1,6 km) ***
20 : アヴルイ~ワレー (km 154,2 - 2,5 km) ****
19 : トルエー=ド=アランベール (km 162,4 - 2,3 km) *****
18 : ワレー~エレーム (km 168,4 - 1,6 km) ***
17 : オルネン~ヴァンディニー (km 175,2 - 3,7 km) ****
16 : ヴァルレン~ブリヨン (km 182,7 - 2,4 km) ***
15 : ティヨワ~サール=エ=ロジエール (km 186,2 - 2,4 km) ****
14 : バーヴリー=ラ=フォレ~オルシー (km 192,5 - 1,4 km) ***
13 : オルシー (km 197,5 - 1,7 km) ***
12 : オシー~ベルシー (km 203,6 - 2,7 km) ****
11 : モン=サン=ペヴェル (km 209,1 - 3 km) *****
10 : メリニー~アヴリン (km 215,1 - 0,7 km) **
9 : ポン=チボー~エンヌヴラン (km 218,5 - 1,4 km) ***
8 : タンプルーヴ~レピネット (km 223,9 - 0,2 km) *
8 : タンプルーヴ~ムーラン=ド=ヴェルテン (km 224,4 - 0,5 km) **
7 : シソワン~ブルゲル (km 230,8 - 1,3 km) ***
6 : ブルゲル~ワヌアン (km 233,3 - 1,1 km) ***
5 : カンファナン=ペヴェル (km 237,8 - 1,8 km) ****
4 : カルフール=ド=ラルブル (km 240,5 - 2,1 km) *****
3 : グルソン (km 242,8 - 1,1 km) **
2 : ヴィレム~エム (km 249,5 - 1,4 km) ***
1 : ルーベ (km 256,3 - 0,3 km) *

中盤以降は例年同様のパヴェをつないでいきます。

勝負所になるのはいくつかの難易度の高いパヴェ。

中盤のアランベール(☆☆☆☆☆)は最初の大きなセレクションがかかるパヴェ
ここで前方の集団に残らないことには勝負に参加できません。


そこからセクター11モン=サン=ペヴェル(☆☆☆☆☆)までの区間は三ツ星以上のパヴェが連続し、選手をどんどんふるい落とします。
精鋭集団の逃げが発生しがちなのもこのあたりの区間です。


そしてセクター7シソワン~ブルゲル(☆☆☆)、セクター6ブルゲル~ワヌアン(☆☆☆)、セクター5カンファナン=ペヴェル(☆☆☆☆)、セクター4カルフール=ド=ラルブル(☆☆☆☆☆)の終盤のセットは、勝負につながる最後のパヴェ区間


ここでのアタックは勝利への最終便になるでしょう。
最後まで大きなトラブルなく精鋭集団に残れた、強さと運を持った選手にのみその権利が与えられます。


注目選手は誰?

さて、今年のパリ~ルーベの優勝候補は誰でしょう。

クラシックレースで毎回優勝候補の筆頭に上がるのがワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)です。
しかし二人とも世界選手権を見るに調子がいいとは言えなそうです。

ワウトはベルギーチームの完璧ともいえるお膳立てにもかかわらず、最後は足を失くして逃げを追うことができませんでした。
レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)の牽引がハイペースすぎたのかもしれませんが、要するに調子がイマイチということでしょう。
春先から大きなレースを連戦してきたことで、さすがに疲れが溜まってきたのかもしれません。


マチューは東京オリンピック・マウンテンバイクでの大怪我からまだコンディションが戻っていない印象。
本来の力ならいい結果が望めそうですが、今の調子だとちょっと難しそうです。


世界選手権の上位では、2位のディラン・ファンバーレ(イネオス・グレアディアーズ)と3位ミケル・ヴァルグレン(EFエデュケーションNIPPO)が出場予定。
ファンバーレはオランダ出身の大型選手で北のクラシックが得意な選手
このレースでのイネオスの中ではエース格の選手で、ここでも好成績を期待したいですね。


ヴァルグレンは2018年にアムステルゴールドレースも勝っているクラシックレーサー
あんなきつい世界選手権の3日後にレースに出る(ユーロメトロポール・ツアー、28位)などとても元気そうです。
チャンスがあれば可能性を感じる選手の一人です。


調子が良さそうなのがペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)
世界選手権では早々にアシストを失いながら精鋭集団に残り続け、虎視眈々と優勝を狙っていました。
結果的に最後の逃げには乗れなかったものの26位でフィニッシュ。
雨で滑りやすい石畳では、サガンのテクニックが特に活きそうです。
来年からトタルエネルジーに移籍するサガンが最後の置き土産を残していけるのか楽しみです。


ソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス)も今年非常に強さを見せている選手です。
これまでのスプリントだけではなく、上りでの強さも見せ始め、オールラウンダーな選手になってきました。
北のクラシックに強いイメージの無いコルブレッリですが、充実の今なら石畳を克服してくれるかもしれません。


北のクラシックを得意とするアレクサンドル・クリストフ(UAEチームエミレーツ)ですが、パリ~ルーベでは9位が最高。
8月末のドイツツアーで2勝を挙げるなど調子も良さそうです。
精鋭集団に残り続けることができれば、抜群のスプリントを見せてくれるでしょう。


先日の世界選手権で4位に終わったヤスパー・ストゥイーヴェン(トレック・セガフレード)もパリ~ルーベでの活躍を期待したい一人。
世界選手権では残念ながらスプリントでファンバーレとヴァルグレンの後塵を拝してしまいましたが、今年は春先のミラノ~サンレモを優勝するなど強さを見せています。
石畳のレースは得意なので、モニュメント2勝目の可能性も十分にあります。


ウルフパックことドゥクーニンク・クイックステップは誰が勝ってもおかしくない陣容です。
中でも近年充実のフローリアン・セネシャルがおもしろそう
セネシャルは出身がパリ~ルーベのコースに近いカンブレということで、地元のレースでの活躍が見たいなと思います。


その他にも前回優勝のフィリップ・ジルベール(ロットスーダル)オリバー・ナーセン(AG2R)ミカル・クフィアトコフスキー(イネオス・グレナディアーズ)アルノー・デマール(グルパマFDJ)などが出場します。

近年まれにみる厳しいパリ~ルーベになりそうな今年、いったい誰が優勝するでしょうか。

第118回パリ~ルーベはJSPORTS4とJSPORTSオンデマンドにて、10月3日18時から生中継されます!
北の地獄をぜひお見逃しなく!


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