マガジンのカバー画像

文化人類学がおもしろい

186
わたくしコミュニケーションを専門とする博士(学術)の筆者が”複数の他者のあいだのコミュニケーションを記述すること”という切り口から文化人類学の文献を読んで行きます。 わたしは文…
運営しているクリエイター

2021年12月の記事一覧

意味分節理論とは(5) 「記述すること」と意味分節。量子力学、神話論理。 -レヴィ=ストロース著『大山猫の物語』からの意味分節理論入門

物理学者のカルロ・ロヴェッリ氏による『世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論』について、しばらく前に下記の記事でご紹介した。 その後何の気なしにレヴィ=ストロース氏の『大山猫の物語』をパラパラと眺めていたところ、「まさに共時性」という感じで次の一節を発見したのである。 その一節は、量子力学によって「人間にとって超自然的世界が改めて存在することになった」という言葉から始まる。 超自然的世界、というのは深く考え始めるとなかなか大変なことになる言葉だけれども、この場

「意味」を仮設しつつ、未完成のままに -意味分節を生きる

奥野克己氏と清水高志氏の共著、『今日のアニミズム』を読んでいる。 『今日のアニミズム』は「アニミズム」の本であり、「人類学」の本であるけれども、その表向きの「分野」や「テーマ」の向こう側に、人類×言語の動的で開放的なハイブリッド・システムに残された可能性の種子を植えるような、凄みのある一冊である。 例えば、次の一節を読んでみよう。 ここで問われていることは「端的に生死でも去来でもあるもの」である。 人が生きることは、あれこれの「情念」に「煩悩」に「妄念」たちに追いかけ

言語の起源は100万年も前の「シンボル」にあり?! -ダニエル・エヴェレット氏の『言語の起源』×C.S.パースのインデックス、イコン、シンボル

しばらく前に下記の記事で日本語のルーツについて書いた。 言語というのはミクロに見れば、ある人から他の人へと伝えられる都度、その単位となる要素(記号と言ってもいいし、シンボルといってもいい)の組み合わせの階層構造がいつも少しづつ変化していく変換のプロセスの中に息づいており、この変換が次から次へと、人から人へ、世代から世代へ連鎖する。そうした連鎖はいくつもあり、複数の連鎖がそれぞれ変化しつつ絡まり合うところに「日本語」もその一つであるような、さまざまな「国語」や「方言」のような

¥530