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文化人類学がおもしろい

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わたくしコミュニケーションを専門とする博士(学術)の筆者が”複数の他者のあいだのコミュニケーションを記述すること”という切り口から文化人類学の文献を読んで行きます。 わたしは文… もっと読む
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2020年6月の記事一覧

知識と知恵、他者の沈黙を「未知」のまま聞き続けるために(ティム・インゴルド『人類学とは何か』を読む)

ティム・インゴルド著『人類学とは何か』がおもしろい。 人類学はとてもおもしろい学問だと思う。 人類学の研究対象は、その名の通り「人類」である。 ところで、一言で「人類」と言ってもいろいろな人が居る。人類は多様なのである。 素朴に「なんとなく良いこと」として語られがちな「多様性」であるが、一体何が多様なのかというと、簡単には答えられない。というか出来合いの答えが決まっていないということこそが、多様ということなのである。 言語や習俗の違い、信仰の違い、文化的な違い、歴史