逆噴射小説大賞2024のライナーノーツ
今年もやってきた逆噴射小説大賞。
毎回1次選考落ちして、そのたびに落ち込んでるけど、それでも書きたい欲求は抑えられないので投稿した。
1作目:赤い白無垢
夏あたりから今年の投稿作はどうしようかとぼんやり考えていたときに、今まで手を出してなかった世界観に挑戦しようと思っていた。
私はだいたいファンタジーかSF、あるいは両方ごちゃ混ぜのサイエンス・ファンタジーばかり書いていたので、時代劇風の世界観を選んだ。
真っ先に思いついたのが、返り血を浴びて白無垢が赤く染まった女性が笑う場面。そこから逆算する形で書いていった。
ようは最後の「鬼が、微笑んでいた」の部分を書くためのものだったが、反面、主人公である刀太郎の魅力は全然書けてなかったかもしれない。
刀太郎の感情の起伏も、鬼と戦えた男が羨ましいと思うくらいだったので、他の描写を削ってでも朱鷺姫という最高のライバルと出会えたことに喜ぶ描写はいれるべきだったかも。
朱鷺姫のキャラ造形は必ず刺さる人がいると信じて書いたので、実際に刺さった人からの感想をもらえたのはとても嬉しかった。
2作目:夫婦円満の秘訣
前々からぼんやりとでもアイデアを練っていた1作目と違って、こっちは2作目を投稿できるならとりあえず書くべきだという気持ちからスタートした。
そのせいで何度も書き直して四苦八苦する羽目になる。
最初のバージョンでは主人公が見るカードの内容は「あなたの名前は?」というもので、それを呼んだ主人公が、自分が実は記憶喪失だったと気づくという展開で書いていた。
でも「こういう記憶喪失系は去年やって一次選考落ちしただろが!」となって書き換えることにした。
訂正:記憶喪失系は一昨年にやったやつでした。
で、次のバージョンではカードに「凶器を隠した場所はどこ?」という内容にした。それを見た夫が凶器の隠し場所を確認すると、今度は「本当の殺害現場はどこ?」と書かれたカードがあって、徐々に夫が行った殺人の全貌が明らかになっていくとした。
これを書いてるときは、他の人の投稿作も読んでいて、そのレベルの高さに自分の作品が「こんなもん面白いか?」と感じてしまったので、また大きく書き換えることになる。
それから普通のホームドラマ風と見せかけて実はファンタジーだったというバージョンになる。
そのバージョンになった直後は、主人公が妻のいる場所に行くためのマジックアイテムを用意して出発するという内容だったが、これは逆噴射小説大賞では避けるべきとされる、依頼メソッドの類型になってると気づいたので修正。ここでようやく、投稿時点のバージョンになる。
それでもいざ投稿する時は「これ、面白い……面白いか? 他の人のハイレベルな作品が溢れている中で、これを出すの? けど、もうこれ以上のは書けないし、覚悟して出すしかねえ!」という気持ちで投稿したので、あんまり自信はなかったのだけれど、予想以上に良い評判を得て驚いている。
本作に寄せられた感想では、捻りの加え方ほ褒めてくださる人が何人書いた。この感想はすごく嬉しいと同時に、気付きでもあった。
それは「捻りを加えるのなら、捻らなくても面白そうなものを書く」というもの。それが毎回できたら苦労はしないのは理解してるが、しかし今後の創作では覚えるべきだと思っている。
ちなみに本作は今まで逆噴射小説大賞で投稿した作品の中で、最も「スキ」を獲得している。
「夫婦円満の秘訣」が1次選考を突破できるかはわからないが、それでも個人的には成果を獲得したと実感できる1作となった。